ウインド・リバーのレビュー・感想・評価
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後半のシリアスの展開
自分にとってのテーマ感として、思ったより重かった。
自分の理解には少し及ばなかった点が多く、
自分は黒人文化等は好きなのだが、
こちらのネイティブアメリカン由来の内容は、勉強不足だと思った。
羊たちの沈黙の再来
なんとなく軽い気持ちで見始めたら途中で止められなくなっていた。事実に基づくことを盾にしている映画は無数にあるが、ここではそれが見終わった後にずっしりと響いてくるようで、そのバランスが秀逸。人の感情と脚色、ロケーションの美しさと寂しさがマッチして映画の色になっている。
アメリカの社会問題
雪と氷に閉ざされた局地に強制移住させられたいネイティブアメリカンに焦点を当てた社会派サスペンス。娯楽も楽しみもないこの地でドラッグに溺れていく。事件が起きても警察はだだっ広い土地にほんの数人のみ。つまり犯罪が起こってもまともな捜査はできない。性のはけ口にされ、捨てられて死体も見つからない女性たち。彼女らの数を数えられることも捜査されることもない。アメリカの人知れない闇をサスペンス仕立てで啓発している映画を見終わったらぜひこの現実を調べてみてほしい。
貧しい者たちを「独立」の名のもとに放置する罪。
アメリカのインディアンが、住んでいた肥沃な大地を追われ、もとの土地とはまったく無関係で、極寒で痩せた土地をあてがわれ、居住地として押し込まれたことは、ご存じと思います。
ただし、その土地がなかば独立国のように扱われていること。
それは本来は良い意味であったはずなのに、実は居留地自治体が、教育や警察を含めて、あらゆる行政サービスを自分たちだけのお金で賄う必要があることに思い至ると、ここに基本的人権すら無視された人々が捨てられるように住んでいるのだという重大さに慄然とさせられます。
この映画の舞台ウインド・リバー居留地も、居留地が極貧であることから、部族警察には警察官がたったの6人しかいない、これでどうやって治安が守れるの?という背景から、映画が作られています。
国民としてのサービスをほとんど満足に受けられない極貧の者たち。
凶悪犯罪が起きても、中央政府は、たった一人の若いFBI係官を派遣して、それでおしまいなのです。
しかし、自らの娘も失った失意のハンターが、FBIと二人で悪に立ち向かう、そういうストーリーです。
内容的には、アメリカ映画伝統の、勧善懲悪ストーリーなのですが、上記のような舞台背景があり、その問題点を訴えるという目的意識が明確に据えられているので、登場人物たちの心を表現する芸達者な役者たちの名演技もあり、一味も二味も違った佳作に仕上がっていました。
ヒーロー物とも言えるかも知れませんが、スパイダーマンのような話とは異なり、もしかすると明日、自分にでもなれそうな、まさに等身大のヒーローの活躍話なので、たいへん共感し、感動しました。
狂気と良心と
アベンジャーズのエイジオブウルトロンで、ホークアイのジェレミーレナーが、スカーレットウィッチのエリザベスオルセンを叱咤する場面がある。
ソコヴィアが宙に浮いている時で「わたしのせいで」と良心の呵責にさいなまれ、弱気になっている彼女に、
「誰のせいでもいい、なにしろ街は浮いてるし、ロボットたちがおそってきてる、おれなんか弓と矢でやってんだ、でもしごとだし、やるしかない、あんたの子守はできないし、過去なんて関係ない、とにかく戦え」と言って励ます。
印象的なシーンでよく覚えている。
脚本家Taylor Sheridanは(Sicarioの前に1本監督作があるが)三作で躍り出た時の人。
一作目がボーダーライン(Sicario)、二作目はNetflixで最後の追跡(Hell or High Water)、三作目がこの映画で、監督もつとめ、カンヌで(監督賞を)とってしまった。
三作とも重い主題、共通するものがあった。
ボーダーラインの衝撃は大きかった。
麻薬カルテルの巣窟へ入っていくFBI捜査官ケイトは、まるでカーツ大佐のいるジャングルへ入っていくマーティンシーンのようだった。
続く最後の追跡も、復讐劇に陥らず、といって社会派にも落とさない、絶妙な筋書きだった。
そしてWind River。
エイジオブウルトロンのあの場面から着想したとしか思えないキャスティング。
主従でも、師弟でもない、ホークアイとスカーレットウィッチに酷似した二人の関係性が、Wind Riverにも描かれていた。──それが、言いたかった。
人の狂気があらわれたとき、亡くなった者、生き残った者。
なにかの巡り合わせで、地獄のような運命のおちいってしまった人々。
それぞれの複雑な心象と、どうにもならない立場と、人の持つ残虐性。
それらが緊迫したドラマになっているのだが、復讐や執念を描きながらTaylor Sheridanが最終的に言いたいのは、地獄を見ても失われなかった人の良心だ──と思う。
狂気のこちら側には、かならず良心がある。
それが三作に一貫している。と思う。
裁く立場とは何か、真実を知った後の正義。
隔離されたも同然の極寒の山岳地帯で起こる、非日常的な日常。本来は法で裁かれるべき犯罪に、隔離されてしまっているが故に正義が揺れる。真相、復讐、後悔、仲間と家族、そして亡き娘達への変わらぬ愛。
前情報無しで観たので衝撃的だった。ジェレミー・レナー演じるコリー、エリザベス・オルセン演じるジェーン。アベンジャーズコンビの素晴らしい演技が、ラストまで一気に魅せてくれる。
特にジェレミー・レナーの、時間が解決するはずの心の痛みと、時間が解決し切れない心の内面を、表情と口数少ない言葉の絶妙な演技は必見。
復讐という重く難しいテーマを、自分ならどう行動するか考えさせられる。それにもかかわらず観終わった後の、何とも言えないスッとした気持ちは、結果として自分が求めていた通りだったからか。マーティンへの友としてのコリーの優しさ、ラストのゆっくりな一言一言が心に染みたからか。
重い内容だが、ゆっくり観て欲しい作品。
このクソみたいな世界で生きるということ
作中、胸糞悪いシーンもあるけれど、そんな事はまるで関係ないように世界はただそこにあって、その捉え方は美しい。
静かで強かなコリーをジェレミー・レナーが熱演。
もはや対等な立場に上がる事すらままならぬよう、土地と金を与えられ、"殺された"人々がいた事も事実なのだろう。
ネイティブアメリカンの権利は弱く、文化も淘汰されていく。
その流れが抗いようのない事だと感じつつも、1日1日を確かに生きることで今は失われゆく種や文化も、確かにそこに存在している証明になる。
未来のことは誰にもわからない。
ただ来たる未来で過去を恥じぬよう、今日という1日を重ねていく。
ラスト3行に込められた告発
事件自体は唾棄すべき集団レイプ事件を扱っていますが、
最も伝えたかったことはそこではなく、ネイティブ・アメリカンの人たちのこと。
ハリウッドが能天気な西部劇を作れなくなったのは
'70年に公開された「ソルジャー・ブルー」から。
これはその時代から何一つ変わってないアメリカの現状を訴えています。
あるサイトではそれはアメリカの「原罪」という言い方をしていて、
隠されたままのイマをえぐっています。
女性のFB I捜査官というと真っ先にジョディー・フォスターが浮かびますが、
この映画のエリザベス・オルセンもいいですね。
自然体で、変に大変がったりしないところが良かったです。
やっと女優に求める演技が変化してきたことを感じます。
無法地帯ってあるよね。
実話に基づくお話となっています。
今でもアメリカではネイティブアメリカの失踪事件があるものの、
正確にその数がどの位あるのか、分かっていません。
おそらく出生届も出さない地域もあると思われるので、居なくなっても分からないと思う。
私自身もネイティブが経営するレストランへ行ったことがあるのですが、
その周りには電気がまだ来ていない住宅もありました。
ガイドさんの話ではその地域の若者が都会に行き、
自分達のコミュニティに絶望し自殺するものが多いとか話していました。
自分も同じだったら、浦島太郎みたいで恐怖とか絶望とか恐ろしいものを感じると思う。
そんな地域で起こった事件、色々と考える。
正義
ネイティブアメリカンの悲しい歴史を立ち向かう事で昇華させている素晴らしい作品。
銃弾戦のアプローチの仕方は、鳥肌物。
敢えて「インディアン」と白人女性に言わせている所なんかは
ほんと上手いなぁと思います。
歴史など知らなくてもこの雰囲気で教えてくれる感じは
なかなかないのではないでしょうか。
雪深い地方でのネイティブアメリカンの悲哀
僻地に蔓延る偏見、差別。アメリカの闇を描く映画は次から次へと出てくるがワイオミング州のウインドリバーが舞台の映画は聞いたことがない。この地もアメリカ先住民の保有地とされていて治安も守れていない無法地帯のようで病死より殺人が多い地のようだ。雪深く農業すら儘ならぬこの地が抱える闇を描いたクライムサスペンス。なかなかの見応えでした。
静かな怒りと哀しみ
某ラジオでお勧めのインディアン関連映画として紹介されていたことで視聴。タイトルのウインド・リバーとはインディアン居留地のこと。レイプされ逃亡する最中に凍死した若いインディアン女性の遺体が発見されるところから物語は始まる。全体のトーンは静か。しかし物語が佳境に入るにつれ、いつの間に両手を握り締めている自分に気がついた。アメリカ社会の抱える歪みを描いた佳作だと思う。主演のジェレミー・レナーとエリザベス・オールセンのアベンジャーズ組が好演。
アメリカの深い闇
監督、脚本はボーダーラインなどで脚本をつとめたテイラーシェリダン。
ネイティブ・アメリカンの保留地で少々の死体が発見され、第一発見者のハンターと新人FBI捜査官が調査を開始する。
ハンターのコリー役にはジェレミーレナー。
新人FBIのジェーン役にエリザベスオルセン。
どちらもアベンジャーズで有名なお2人ですね。
舞台はかつて白人によって追いやられた辺境の地ワイオミング州のウィンドリバー。
ネイティブ・アメリカン保留地は白人に対する強い嫌悪感もあり、星条旗を逆さまになっていたり、白人の新人FBI捜査官にも敵意を隠すこともなくあらわしています。
それもそのはずで、事件として成立しなければ死亡者数や行方不明者数もカウントされず、FBIものこのこ引き返さなければなりません。
その為、保留地では無法地帯と化しているところも多々ありガン患者が亡くなってしまうより殺人事件の死亡率の方が高いそうです。
しっかりとメッセージを残してくれている映画ですが、エンターテイメント性も高くハンターのジェレミーレナーがホークアイのような超人的な活躍を見せる場面あり、FBI捜査官のエリザベスオルセンの魅力もたっぷりです。
また、ストーリーもただのサスペンススリラーではなく娘を亡くした父2人のドラマにも焦点をあてられ見応えたっぷりです。
しかし、ナタリーもいつかはウィンドリバーを後にして白人が作り上げた都会に行く事を夢みていたのでしょうね。
恐らくコリーの娘さんも。
オススメです。
久しぶりに良い映画に出会えた!
まずミステリー映画ではない。
ジャンルとしてはスリラーサスペンスかな。
インディアン保留地で雪という閉鎖的な空間のお陰で、何気ないシーンもなぜかハラハラした。
ホークアイとスカーレットウィッチの共演が見られるけど全然違う感じで引き込まれる演技だった。
久しぶりに考えさせられる映画に出会って良かった!
白い大地
白い大地は、不毛で何もない。
そんな場所に、インディアン居留地が作られ、彼らはそこに押し込められたのだ。
これは、紛れもないアメリカ合衆国の歴史だ。
そして、そんな場所に資源が見つかれば、我が物顔で、所有権を主張する。
シェール石油やガスのブームに乗って、あちこちを掘り起こそうとしている現代アメリカ社会の様子も伺える。
この事件の背景は、ここまでがセットだ。
生まれた人種や民族、国や地域、場所によって行われる苛烈な差別や偏見。
これは、何もアメリカに限った話ではないだろう。
中国のウイグル人に対する苛烈な差別や、自治区でレアアースなど貴重な資源が見つかると漢民族が大挙してやってきて、大地を掘り起こしていくのもそうだ。
日本でも、北海道の開拓では、アイヌを迫害し、狭い地域に追いやったし、すこし前に、アイヌ女性に対して、開拓者がレイプをしていたというようなことを伝えるドラマを見た覚えがある。
この映画を観て、したり顔で、アメリカの暗部・闇の歴史、法の及ばない場所がある、など言うのは簡単だ。
レイプしたり、人を簡単に殺してしまうような連中には憤りを感じるし、そんな奴らが、猟銃の弾丸で撃たれ、吹き飛ぶ様を見ると、ざまみろみたいな感覚にも囚われる。
この映画は実際にあった事件をベースに作られたものだが、彼らインディアンは、復讐に囚われて生きているのだろうか。
暴力には暴力しか手立てはないと思っているのだろうか。
白人が持ち込んだ薬物の中毒になってしまった息子を一時は見放したものの、迎えに行くつもりだと話すインディアンの父親の気持ちを考えると、そんなことはないのだと改めて感じる。
そう、ここまでが、この映画のストーリーなのだ。
悲しみは時が癒すというが実際は違う。 痛みには慣れる。 良い知らせ...
悲しみは時が癒すというが実際は違う。
痛みには慣れる。
良い知らせと悪い知らせがある。
悪い知らせは決して元には戻れないこと。
良い知らせは事実を受け入れ苦しめば故人と
心の中で会えること。
痛みから逃げてしまっては駄目なんだ。
逃げると失う、思い出の全てを。
とことん苦しんで、事実に向き合え。
やりきれない
マイノリティというか見捨てられた土地というか、
あの広大な地域に警官が6人しかいないっていうのもアレだけど、
そんなんなら自警主義が強くても納得だよねって説得力にもなってる。
今回のコロナ騒動で銃弾が品薄になってるなんて話があるくらい
アメリカ人は自警意識が強いらしいけど、
それってどうなのかと思う部分は正直あったんですよ。
だってそれって憎悪犯罪につながりやすいじゃん、と。
だけどこの作品を見ると、法の裁きじゃ生ぬるいってこともあるよなと。
法治国家に住む現代人として、かなり野蛮な思想だとは思うけど
やっぱり人間とは呼べない、駆除すべき犯罪者ってのが存在するよねと。
西洋人なら宗教を拠り所にしがちな、神の裁きとか言いがちなこういうところを
しっかり個人に焦点を当てた本作は、それだけでも傑作というか
そうとう深い思慮のうえでつくられたんだろうと感動した。
けっきょくは、人。どう生きて、どんな人間と関係を築くか。
古くは自然の脅威が生死に直結したように、
現代では他人との関係が最大のリスクなのかもしれない。
一人の親として、大きな問題提起をされた気分。
公開時に渋谷の劇場で観てから2年半
たまたまテレビ放映されていたので、観てみた。
ストーリーどうこうよりも、この映画が事実に基づいていること、そして、いまだにそのこのような性差別や人種差別、地域差別が横行していることに驚く。
ま、差別が現存するからこそ、「差別はいけない」と叫ばなければいけない。皮肉だが。
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