「ネオウエスタン映画」ウインド・リバー Editing Tell Usさんの映画レビュー(感想・評価)
ネオウエスタン映画
ネオウェスタン映画。
”ファーゴ” (1996)を思い起こさせるような、雪山での殺人事件。テイラー・シェリダーと言えばといえるであろう銃を用いたサスペンスアクション。そして、ネイティブアメリカンの社会の闇という触れることが難しいテーマ。深いところまで見ていくと、とてもユニークかつ、ディープな映画であることは間違いない。カンヌ国際映画祭で「ある視点」部門を受賞したのはまぎれもない証拠。
ストーリーだけを見てみると、いわゆるcliché(使い古されたもの)。いろいろなことがミステリーテイストで起きるのだが、ほとんど全てが予想のできるもの。銃撃戦の展開も、FBI捜査官の若い女性とハンターの関係性も、誰が死ぬかということも。だから、この多くのサスペンス映画が上映されている時代には、視聴者を満足させることは難しいだろう。自分もワクワクすることはできなかった。10年前だったら少し違ったかもしれない。
唯一予想できなかったのは、殺されたナタリーの両親の感情の行方。最初にFBI捜査官ジェーンがナタリーの両親家に行くシーンは一番のシーンだったと思う。現地の警察官と、ナタリーの両親そして現地のハンター、コリーの関係性の強さが見られ、ジェーンがようやくこの事件を単なる文書上の事件ではなく、人の命、家族の命が関わっている殺人事件だということを理解したという瞬間。
そして、エンディングでのコリーが家族を訪れるシーン。全くどうなるか予想できなかった。それを上回る、いいエンディングだったと思う。
ギル・バーミンガムは個人的にハウスオブカードで顔を知ってるかもしれないが、かなりいい役だなと思った。
この映画を観終わった後、思ったことは、この映画は、エリザベス・オルセン演じる若い女性FBI捜査官の話ではなく、ネイティブアメリカンが住むウィオミング州の小さな町の1つの家族の物語であるということ。おそらく、テイラーシェリンダーが描きたかったことは、そこにあるのだろう。
エリザベスオルセンのキャラクターとジェレミー・レナーの家族の歴史なんかは、付け加えられただけのようなものであった。プロデューサーの意見などが入ってしまうスタジオ製作の作品なだけに、しょうがないという部分でもあるが。こういう監督ほど、NETFLIX製作で作ったら面白い作品ができるんじゃないかと思った。
“ファーゴ”(1996)、”スリー・ビルボード”(2017)なんかは、もっと狭い部分に狭った作品です。もっと多くの人にこのような作品を見て欲しい。社会の現状を知れるとともに、自分の住む小さな世界に照らし合わせれるような、小さなかつ、強い芸術が必ず見つかります。