「心を揺さぶられました」友罪 haginoさんの映画レビュー(感想・評価)
心を揺さぶられました
原作は見ていませんが、キャストで良さそうかと思って見に行きました。
さすが演技派俳優達ばかり、この難しい役を見事に演じ切って、抑えた演技の中にも凄まじい迫力を感じました。
ジャーナリストの夢を諦めた益田と、他人を避ける鈴木は、町工場の試用期間として雇われる。最初はほとんど口もきかないが、だんだん打ち解けていく。
そんな折鈴木は、ふとしたことから、鈴木がある連続児童殺害事件を起こした犯人だと知る。
瑛太の演じる鈴木は、無口で人と触れ合うのを恐れて、危うさだけでなく不気味さも感じるが、どことなく寂しさも感じた。急にキレて物を壊したりはするものの、人にどれだけ殴られても殴り返さない。それどころか殴られても笑ってるところとか、自虐行為にまで走る。かとおもえば、酔っ払った先輩を介抱したり、怪我した益田を冷静に助けようとしたりという優しさも垣間見れる。
どことなくほっとけない感じではある。鈴木も本当は誰かに助けてもらいたかったんだと思う。きっとそれが間違った方向にいってしまったのだろう。
一方、益田の囚われている過去は、最後の方までわからないが、何となく予想はついた。鈴木と出会って、無口な無愛想なところしか見たことがなかった鈴木が、笑っているのを見て、嬉しくなって動画を撮る。その動画を後で見返しているときに見せる、なんとも言えない表情にズキンとした。
鈴木が出会う夏帆が演じる女の子も、過去に傷を負いながらも懸命に生きている。鈴木と出会って救われるものの、過去を知って怖くなるのもわかる。その体当たりの演技もすごかった。
また、佐藤浩市の役も、息子が事故を起こして、3人の子供を死なせてしまう、その償いを親として行い続けている。それなのに、その息子が結婚するといい子供もでき、家庭を作ろうとする、なんとも言えない気持ちを見事に演じていた。
人は何の罪も犯していない人なんていないと思う。知らないところで誰かを傷つけていることもあるだろうし、過去の罪に囚われて前に進めない人たちもいる。
心に闇を抱えた人たち、同じように罪を持っている人ならこの気持ちをわかってもらえるかもしれない、そう思うのもわからなくもない。
そして、親しくなった友達が、恐ろしい罪を犯していたら…? 元ジャーナリストとしての血が騒いだのか、それとも本当に友達を理解したいと思って調べようとしたのか、そのあたりはよくわからない。
結局、なぜ鈴木が殺人を犯してしまうことになったのか、それはよくわからなかった。自虐行為が他人へと向かったのだろうか、殺すことで何かが変わるのだろうか? 多分その答えはわからないと思う。
罪を犯した人は幸せになってはいけないのか?
私は、罪は一生償えないと思う。いくら刑務所で罪を償ったとしても、それは法的なものであって、過去は消えるわけでもやり直せるわけでもない。その罪を認めて、背負って生きなければいけないと思う。
久しぶりにいろんなことを考えさせてくれた映画でした。原作は即買いに行きました。これから読みます。