婚約者の友人のレビュー・感想・評価
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【第一次世界大戦時、ドイツ兵を殺したフランス兵だった男の贖罪の気持ちと、殺された男の婚約者が男を赦し、彼の人間性に惹かれていく様を、気品高く且つ哀しみを漂わせて描いた逸品。】
■婚約者のフランツが戦死し、悲しみに暮れるアンナ(パウラ・ベーア)。
ある日、フランツの墓に花を手向けて泣いている男と出会う。
男の名はアドリアン(ピエール・ニネ)。彼は、フランツの”友人”だと名乗る。
やがてアンナがアドリアンに“婚約者の友人”以上の感情を抱いた時、彼は自らの秘密を明かす。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・今作は、気品のある映画であるし、もしかしたらフランソワ・オゾン流の反戦映画であるのかもしれない。
・第一次世界大戦後の衣装、意匠も美しいが、矢張りアドリアンを演じたピエール・ニネの深い憂愁を湛えた表情に魅入られる。
ー あの表情を見れば、婚約者フランツを殺された事が分かっていても、アンナが心惹かれるのも無理は無いであろう。-
・アンナは、戦後フランスから反フランスの空気が残るドイツに来て、フランツの墓に涙を流しながら花を手向けるアドリアンの贖罪の心を受け入れ、フランツの両親には彼がアンナに告白した”真実”を告げない。
ー アンナは当初はフランス人という理由で、アドリアンに冷たかったフランツの両親が彼が亡き息子の友人だったという嘘を信じて、アドリアンを赦す心になった事を壊したくはなかったのであろう。
更に言えば、アンナはアドリアンの真摯な姿に心惹かれて行くのである。-
・そして、今度はアンナがアドリアンに会いにフランスに赴く。だが、彼は巴里の楽団を辞めていた。不安になるアンナだが、無事再会するが、アドリアンには婚約者のファニーが居た・・。
ー アンナは、傷つきアドリアンの家を辞そうとするが、アドリアンに引き留められ、一夜を過ごしてドイツに戻るのである。
ここで、安易なハッピーエンドにしない所が、フランソワ・オゾン監督らしさが出ていて、巧いのである。-
<今作は、第一次世界大戦中に戦ったフランス兵とドイツ兵の両親や婚約者の姿を気品高く描くことで、人間性を保つ大切さと戦争の愚かさをミステリー風味を纏わせながら描いた作品である。
モノトーンとカラーの使い訳も上手く、フランソワ・オゾン監督の才能の高さを感じる作品でもある。
フランツの父が、パブでフランス人であるアドリアンと一緒に居た事で、飲み仲間に冷たくされた時に言い放った”息子達を殺したのは、戦地に送った私達父親だ!”と言う言葉は沁みたなあ。>
時々カラー。昔うちにあった壊れたカラーテレビみたい・・・
フランソワ・オゾン監督が初めてモノクロに挑戦し、1919年のドイツを舞台に、アンナ(パウラ・ベーア)の戦死した婚約者の友人アドリアン(ピエール・ニネ)との交流をミステリアスに描いた人間ドラマ。時々カラー映像に変わるという手法で、カラーになった時はアンナの精神状態を投影しているかのように感じるが、ハッキリとはわからない。
ヒロインであるアンナが婚約者フランツの墓前で、泣いている男を目撃する。アドリアンは墓参以外に、直接フランツの父親であるハンス・ホフマイスター(エルンスト・シュトッツナー)のもとを訪れていた。ドイツは戦争でフランスに敗れていたため、当然ドイツ人はフランス人嫌い。ハンスも例外なく嫌っていたため、アドリアンがフランス人であるとわかると追い返してしまうのだ。ホフマイスター家に身を寄せていたアンナはアドリアンがフランツの友人だと思い、彼を招待し、やがて彼の思い出話でハンスも妻マグダも気を許していくのだった。
そんな単純な構図の作品をオゾンが手掛けるわけがない!予想通り、フランツの戦死はアドリアンが関わっていて、彼は赦しを乞うためにわざわざパリからドイツまでやってきたのだ。戦争による人殺しだから罰することもできない。しかもフランツもアドリアンも戦争には反対する平和主義者だったのだ。アンナはその事実を告白されても、ホフマイスター夫妻には打ち明けることが出来ず、アドリアンが罪を抱え込むのと同様に、彼らに嘘をつき通すことで悩みや罪を抱え込み苦しむことになっていく。
反戦映画と一言で片付けるのも簡単だが、アンナが教会で告解するシーンに集約されているように、「赦し」と「隣人を愛せよ」というキリスト教的なメッセージが見て取れる。息子を失った父親たちがバーで飲んでいるときにも、罪がどこにあるのか問うていたように、憎しみの連鎖をどこかで断ち切らねばならない。アンナは入水自殺を試みるほど落ち込んでいたのだが、事実を隠し通すことで連鎖を断ち切ろうと決心したのだ。
終盤には赦しを経て、愛へと変化するアンナの心情が手に取るようにわかるのですが、マネの絵画「自殺」を何度も見るうちに、アドリアンの本意や、これからの自分の生き方を与えてもらったような気がします。
タイトルなし
悲しみを乗り越え・・・
1919年のドイツ、婚約者フランツを戦争で失ったアンナは毎日、お墓参りをしていた、ある日、見知らぬ男が墓の前で泣いているのを目撃する。
話を聞くと、パリでの友人でアドリアンといい、墓参りに来たという。
フランツの両親とアンナは生前の様子が聞けて喜ぶ。
アンナは次第にアドリアンにひかれていくが、アドリアンには隠していることがあった。
善人が戦争でたどる道のようで、とても切ない。
悲しみや喪失の物語
悲しみや喪失の物語。巧みなストーリーテリングで、一度失われたものはなかなか他のもので埋めることはできないということを描いている。
1919年、第一次大戦終結直後のドイツとフランスが舞台。婚約者が戦死して悲しみの日々を送るドイツ女性のもとに、生前パリで知り合ったというフランス人の青年が訪れる。
ストーリーを離れたところで、戦争が終結したばかりの隣国同士の憎しみ合いという舞台背景は、とてもアクチュアルで、そしてそう感じさせるほどに普遍的な問題なのだろうと感じた。
私たちも日々感じているように、隣国同士というものは、利害が対立したり、しばしばその結果として勝/敗、支配/非支配といった立場の違いが両者の隔たりをさらに広くしたり、また憎しみを強めたりする。
それらは、集団としては仕方のないことなのだけれど、個人の間はまた違う関係があるはずだと思っている。だからこそ、利害対立の部分以外の、文化や生活習慣の面を取り上げて見下したり、面白がるような態度は最もよくない。
息子の命を奪ったフランスを毛嫌いする父 ハンスが次第にフランス人の青年に心を開いていく姿はとても印象的だ。彼は、個人の悲しみが集団の犠牲であって、ドイツの父親たちが息子たちを失ったのと同様に、フランスの父親たちも息子を失ったことに気づいたのである。
そして、懸隔を縮める理解を促すのは文化の尊重であり、言語だ。ひさびさに中国語や韓国語を復習したいと思った。
サスペンスより、戦争によって巻き起こされる人の感情について、その結果
この世界観大好きです
男が弱々しい。
思い遣りの嘘
隣国を遠く隔てる戦争の影
オゾン監督作品の中でベストかも
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