「予告編のようなミステリーでは無い」婚約者の友人 猫シャチさんの映画レビュー(感想・評価)
予告編のようなミステリーでは無い
本作のミステリー要素は導入部くらいなので、その方面を期待して見ると拍子抜けすると思います。予告動画を見ると「謎が謎を呼ぶ」とか言ってて、ちょっとミスリード予告かなと。
この映画はエルンスト・ルビッチ監督の「私の殺した男」(1932年/アメリカ)と原案を同一にする作品です。従って、「戦争の残した傷痕」「国民間の感情的なわだかまり」「戦死者に対し、誰が責を問われるべきか、その償いとは」といった主題は原作において、更には「私の殺した男」という優れた映画において充分に語られています。なので今更そういう視座でこの映画を評価してもなーという感じで、私自身は専ら映像表現と改変部分について期待して見ました。まあ結論から言うと、いまいちピンと来なかったですね。
モノクロとカラーの使い分けについても、例えば、一方を希望、一方を絶望にするとか、回想と現在、虚構と現実、戦中と戦後で分けるなど意図があるのかと思いつつ見ていましたが、特にそういった使い分けもなく、その演出意図が判然としません。もちろん綺麗は綺麗なのですが、単なるファッションでやっているなら、拍子抜けです。ストーリーの改変部分についても、どうしてこうなった・・という感じ。冷静に考えたら身勝手な男だなーって。でもまあピエール・ニネが美しいから、その辺を中心に見て、興味が湧いたなら「私の殺した男」と見比べてみるのもいいかも知れませんね。
そうそう、ピエール・ニネがヴァイオリンを弾くシーンは巧かったです。弦を押さえる左指の動かし方、ヴィブラートのかけ方がそれっぽかった。お芝居でヴァイオリンを弾くと弦を押さえる左指や、弓を持つ右手の動かし方が全然なってなくて嘘くさい感じになりがちですが、本作では割と様になってました。