「ものの見方って難しい。だから面白い。」月子 ぱんぷさんの映画レビュー(感想・評価)
ものの見方って難しい。だから面白い。
K'sシネマで『月子』を観ました。
Twitterの映画クラスタで評判が良かったので、急遽観に行きました。が… 😨😨😨
観て、ノッケで苦手だと思いました。
カメラ、ブレてるし、話の流れや繋ぎが不自然だし、タイチの思考や行動が私には信じられませんでした。
・あの流れで、月子に出会うって偶然が過ぎる。
で、月子のこと気にする?
・月子を施設の人や警官から連れ去るって、警官なにしてんの⁉
タイチと警官の格闘もグダグダだし…
・終電無くなっても駅の灯って点いてるの?
普通そのまま駅で寝るでしょ。
・タイチが月子に普通に話し続けるってある?
言ったって分からないと諦めない?
話が進んでも、月ちゃんみたいな人って、ああいう行動とるのかナ~? とか、カメラが硝子に写り込んでるとか、ガクってなってるとか…
・時たま会話になるの、そんな事ってあるのかなぁ?
・ラブホのシーン。自ら促すかなぁ~?
月子もマンザラじゃなかったって事?
・いわきに着いて月子が駐車場で走り出した時、道を渡る
のに左右を確認した?
私が思っていた(既に過去形)映画の方法論からは外れていました。
この日は越川監督の舞台挨拶があり(と言っても、他に用がない限り映画館に顔を出すとの事でした。)、監督のお話しを伺って見方が変わりました。
そもそも本作を撮る切っ掛けになったのは、2016年に相模原で起きたアノ事件だそうです。とてもショックを受けられたそうです。
お話しの中で私に響いたのが、私達が普段何気なく会話が成立しているのは、共通のコードがあるから。でも、私が「リンゴ」と言った時に、私が思うリンゴと皆さんが思うリンゴには違いがあるかも。と言うお話しでした。私も前から似た様な事を考える時があって、ハッとしました。ましてや、共通のコードを持たない月子とタイチは…
あと何より驚いたのが、監督の撮影方法。脚本はあるそうですが、役者とカメラマンに指示をしたら、後は流れに任せるのだそうです。現場にはモニターも無い。そして撮れたものによっては、その後の脚本を削除してしまう事もあるそうです。撮りたいカットは考えられるそうですが、画コンテは殆ど描かれないそうです。
その場の空気や流れを大事にされるのだそうです。監督が仰るには音楽でのセッションの様な感覚との事。
私がとても好きなシーンで、駅の陸橋で月子がタイチに指輪をはめるくだりがあります。線路が延びる風景を背にした結婚式みたいで、未来への希望を感じてとても良かった。ですが、撮影時に見ていた監督達も、「結婚式みたいだナ~」と思ったそうです。エッ⁉ そう言う狙いじゃ無かったんですネ… 😬
話しは最初に戻りますが、本作を観て苦手と思いましたが、それは私の見方(コード)に当てはめた結果であって、違う(正しいの)見方(コード)を当てはめれば、当然違う結果(正解)にたどり着くのです。
と思った時、月ちゃんとタイチの関係もコレだったのではないかと、私の中では二重の驚きとなりました。😅
知的障害の事、私は良く分かっていませんが、我々のコード(ルール)に沿ったアウトプットが出来ないだけで、月ちゃんは頭や精神がおかしい訳ではありません。
我々が月ちゃんのソレが分からない様に月ちゃんも我々のソレが分からない。所謂障害を持つ方達とそうでない人との関係、差の大小はあるにせよ人間の関係、映画に対するものの見方・感じ方。
今、自分が考えられる事が全てではない事を、改めて気付かされました。
それから、本作での音響(環境音)が素晴らしいです。
知らなかったのですが、通常、映画の音源は、モノラルで録ってミキシングで位置を決めるのだそうです。本作では音源をステレオ録音しているそうで、臨場感がメチャクチャ凄いです。
なので、可能であれば劇場で観る事をお勧めします。
正直、まだ慣れてはいませんが、面白い作品でした。👍👍😅