「モーパッサンによるフランス自然主義文学の古典」女の一生 mittyさんの映画レビュー(感想・評価)
モーパッサンによるフランス自然主義文学の古典
フランスの文豪モーパッサンが1833年に書いた長編小説が原作。
ノルマンディの自然にあふれた映像の中で、ヒロインが不幸と不運に見舞われていく姿は痛々しくも切なくて、重苦しい雨、風の音、厳しい冬の寒さやらが、不幸の連鎖を強調しているように思えました。ただ、内容的のわりにはドロドロした愛欲はさほど感じられず、ジャンヌは神に答えを求め、過去の回想にひたり、ひたすら不幸に「耐える」姿は、ある意味純粋すぎて危うい感じ。
日常の生活がしばらく映し出されたかと思うと、いきなり、場面が変わったり、回想シーンが挟まれたりで、それなりの想像力が要求されるかも。
原作は読んでいないのですが、フールヴィル伯爵が夫人の不貞に怒って、夫人とジュリアンを死に追いやってしまうところは、映画ではわずかのカットで知らされるのみ。原作はもっと衝撃的らしいです。結局、ジャンヌは伯爵に真実を告げる手紙を送ったのか、神父が真実を告げたのか。
当時、神父がこれだけ、人の人生に首を突っ込んでいたのかと思うとぞっとします。ジャンヌが「フールヴィル伯爵が苦しむので(夫と夫人の不貞を)伝えられない」と言っているのに、神父は「真実を嘘で隠すのは神の名誉を傷つけること」「黙っていることは同罪」などといって、ひたすら、伯爵に真実を伝えることをなかば強要していました。「真実なくして神の慈悲はない」などと言われると、当時はそれに従わざるを得なかったのかもしれませんが、人間の幅もない神父にそんなことを言われてもねえ……。
ハッピーエンドではないけれど、最後の赤ちゃんを抱くシーンが希望の光だったかも。自分は子供好きではないけれど、玉のような赤ちゃんの顔を見ると涙が出そうになりました。
また、過去に夫と不義を働いたとはいえ、乳姉妹のロザリの存在が心強かったです。息子が手紙で何度も無心し、その度にお金を送り続けるジャンヌに、冷静な態度で「困った時だけお金を送れと頼んでくるのはおかしい」と指摘して、ジャンヌを諭すところなどもロザリの強さと優しさを感じました。
(余談)
てっきり、邦画だと思って録画して見てみたら、なんとフランス映画だった……。(苦笑)
過去に何度も映画になっていて、日本でも何本か映画化されているので、間違えてしまったのかも。
邦画の『女の一生』(1967)、岩下志麻主演で「すごい」と某サイトのレビューで読んでしまったのですが、このフランス映画の美しさを壊してしまいそうなので(あくまでも想像)、しばらくは邦画は見ないでおこう。