「どうせオタク向けの映画だろうと思って劇場鑑賞をスルーしてしまったが・・・」さよならの朝に約束の花をかざろう kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
どうせオタク向けの映画だろうと思って劇場鑑賞をスルーしてしまったが・・・
序盤からハープ中心の美しい音楽と、透き通るようなイオルフの民の映像。わざとらしい説明もなく、長老ラシーヌがマキアに伝える一言一言が彼らの住む世界を教えてくれる。特に布を織るという民族性が幻想的な世界観を醸し出しているかのよう。
そんな平和な時間もレナトと呼ばれるドラゴンのような獣にまたがってやってきた軍に壊滅状態にされるのだ。生き残った少女マキア。森の中をさまよい、親を亡くしたばかりの赤ん坊を見つけ、エリアルと名づけて母親になろうとするのだった。この一方的な侵略戦争以外にも後半に戦争の描写がある。こちらはレナトが徐々に死に絶えていき、国も衰退していく様子を描き出していたが、長い年月を経験するイオルフの民にとっては一瞬の出来事だったのかもしれない。レイリアとクリムの悲劇も織り交ぜてはあるが、レイリアの母性も生まれてきた子が長寿ではないことで別れは必然であったのかもしれない。
戦争をはさんで描写される母マキアと息子エリアルの生活。努力するも、ラシーヌの言葉通り、人を愛してはならないことを痛感させられるのだ。歳をとらないマキア、人間の寿命を全うするエリアル。大切な人を看取ることは人間の社会ならば“順番”と諦めもつくが、異寿命の者同士ではわかっているだけに辛い。なんで息子が先に死ぬんだよ!と。序盤で犬が死ぬ場面が結末を予想させてはいたのだが、戦争が運命を変えるのでは?と忘れてしまっていた。レナトの絶滅も予測不可能だったし、かなり奥が深い物語になっていました。
思わず涙が溢れてしまったのは、エリアルに自分が老いさらばえて死んでいく姿をダブらせてしまったからかもしれないが、その老いを姿の変わらない母親が自分を看ていてくれるだけで幸せなのかもしれない。と、自分の過去や未来を想像してしまったからなのだろう。もしかすると、かなり大人向けのアニメ作品だったのかもしれない。