三里塚のイカロスのレビュー・感想・評価
全6件を表示
イカロスたちの苦悩・逡巡
この映画を見て良かったと思う。というのも、成田空港闘争に関してはTV・新聞・ネット記事等で得ただけの知識であったが、それだけでは感じ取ることのできない泥臭さ・生々しさ・人間の体温を感じ取ることができたからだ。反体制側は一枚岩ではなかったこと、また、体制側にも複雑な感情が宿っていたことなども、複数の人物へのインタビューから浮き彫りにされていく。
「後悔はない」と言う反体制側の女性が、諦めに似た笑みを浮かべている場面は強く印象に残る。あの闘争は何であったか、assertiveに語ることのできる人物は一人も登場しない。国家と資本に翻弄され、50年近く経過した現在においても確信が持てないままでいる人物の苦悩・逡巡が即物的に描き出される。
フリー・ジャズはやめて貰いたい。魂がない。
1978年 3月26日 成田空港管制塔占拠事件が起きた。成田空港は開港間近で、反対する者達にとっては起死回生の出来事であった。
さて、暫くの間、この抗議行動(テロ行為)に友人が参加していると思っていた。今回この映画を見てそれは見当違いと確認出来た。良かったと思う。
兎も角、この映画に付いては、権力に抵抗してきた運動を、細かくドキュメントしたのだろうが、見る者にとっては理解なんて出来る訳が無い。アナクロ、エキセントリックな事で埋め尽くし、ディストピア映画にしてしまっている。この映画に協力して、出演した人達が、完全な事実を語っているとは限らない。従って、フランクな言葉で昔話をされると、だから、狂う日本と思われる。権力に反抗する行為が全てこんなのエキセントリックでアナクロではないと思って貰いたい。
アルジェリア独立闘争、ベトナム解放戦線、IRA、公民権運動、その他の独立運動はここまで他人事ではいられなかったと感じる。
終始この映画の出演者が自分達を
『支援者』と言っている。
つまり、脱亜入欧のナショナリズムが欠けた行為と言う事だ。
従って、現在起きている新たな権力側の暴挙に対して、何一つ力になっていない。
空港に着陸する飛行機の爆音をこまめに挿入しているが、耐えられないのは、成田空港の爆音だけなのだろうか?
三里塚を振り返るために
大変に良い作品であった。農民の素朴な怒りに端を発したその抵抗運動は、セクトの様々な参入を経て、やがて泥沼化し、延々と続くことで全体像が見えなくなってきた。その答えを提示するわけではないが、運動に携わった多様な人々に振り返ってもらうことで、社会運動や、それに携わることとは一体なんなのか、ということを投げかける作品になっている。
現在の映像だけでなく、過去の(小川プロ作品等の)映像も引用しつつ、三里塚闘争の歴史を概観し、多様な当事者へインタビューを行うことで、視点に厚みが出ている。
また、運動では、それを続ける人だけでなく、離脱する人や、方向転換する人も当然出てくる。そこに伴う苦みを丁寧に取り上げていた印象。
意外におもしろい作品
初めのほうでは活動家が昔の思い出に浸るだけの作品なのかという疑いを持ったが、だんだん進むにつれ引き込まれ、やや長時間の上映もあっという間であった。心情を素直に吐露する者、いまだに立場にこだわり常に目が泳いでいる者など、巻き込まれた人間それぞれの姿を浮き彫りにしておりたいへん興味深いものであった。欲を言うならば、このような状況を作り出した「真犯人」である当時の政府の決定権を持った者のコメントを何らかの形で引き出せれば、と感じたが、それを言うのは酷というものだろうか。
丁寧に作られた作品
死者を出し人生を棒に振るほどの怪我を負わせた歴史の総括がそれか?というレベルの発言しか出来ない出演者もいたが、映画としては、関係者の発言をきちんと引き出し丁寧に作られていると思う。
全6件を表示