「「人は見た目より中身」とは本当か」累 かさね とえさんの映画レビュー(感想・評価)
「人は見た目より中身」とは本当か
これは面白かった〜
最後の方は、どうなるのかと、ドキドキしながら観てた
顔は美しくても大根女優のニナ(土屋太鳳)と、顔に大きな傷があるけど演技の天才の累(かさね)(芳根京子)
累は「キスをすると顔が入れ替わる」という、不思議な口紅を持っていて…
人の劣等感や嫉妬は、醜い感情だとよく言われるけれど、本当にそうだろうか
もしも、自分よりも優れていて、なんでも持っている人が目の前にいたら、誰もが劣等感を持ち、嫉妬するのではないだろうか
そして「人間は見た目よりも中身だ」とよく言うけれど、それは本当だろうか
そんなものは、みんな気休めのためのキレイゴトなんじゃないのか
という、これは、人間の感情の最もドロドロしたところにスポットライトを当てて描いた作品だった
ニナは、顔が美しいけれど演技ができず、それでもチヤホヤされて生きてきたせいか、優越感の塊で、人を見下して生きている
一方、顔に大きな傷がある累は、その見た目のせいで、劣等感がひどく、下を向いて生きてきた
しかし、演技をさせると、たちまち天才的な能力を発揮する
そんな二人を見ていて思ったのは、
生きていく上で、自信を持つことは大切だけど、持ち過ぎると、それは優越感となって、人格を破壊してしまう
また、劣等感というのは、共感力を強くし、心を豊かにする一面があるけれど、自分を卑下しすぎると、劣等感となって、これまた人格を破壊してしまう
その中で恐ろしいのは、人の優越感というものは天井知らずで、
一度、その「旨み」を知ってしまうと、二度とそこから離れたくなくなり
その位置をキープするために、どんなことでもしてしまうのだ
一度大きな権力を握った人間は、その位置にしがみつくために、どんなことでもしてしまうという、浅ましい姿を見たことはないだろうか
それが、とても分かりやすい「天井知らずの優越感」の一例である
そんな優越感を持った人の心の移り変わりを、この映画ではチェーホフの「カモメ」と、オスカー・ワイルドの「サロメ」をモチーフに描いていて(劇中に説明があるので、予備知識は不要)、そこがまたお見事だった
ということは、優越感も、劣等感も、嫉妬も、自信も、何事も適度なのが良いのだろう
しかし、適度っていうのがどの程度なのか、自分では分からないから、この映画を恐ろしく感じるのだ
もしも、自分が劣等感の塊だと思う人がいたら、この映画を観ると良いと思う
きっと、累の気持ちがわかるはずだ