栞
劇場公開日:2018年10月26日
解説
大分県を舞台に、理学療法士の青年が様々な境遇の患者たちや周囲の人々と向き合いながら成長していく姿を描いた人間ドラマ。理学療法士として献身的に患者のサポートに取り組んでいる真面目な青年・高野雅哉。ある日、彼が働く病院に、疎遠になっていた父・稔が入院してくる。徐々に弱っていく父の姿を目の当たりにする一方で、担当している患者の病状が悪化するなど、理学療法士として出来ることに限界を感じ無力感に苛まれる雅哉。そんな折、ラグビーの試合中に怪我をした患者を新たに担当することになった雅哉は、その患者の懸命な姿に心を動かされ、仕事への情熱を取り戻していく。主人公・雅哉役に三浦貴大。自身も理学療法士の経歴を持つ榊原有佑監督がオリジナルストーリーで描く。
2018年製作/118分/G/日本
配給:NexTone
スタッフ・キャスト
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2021年11月8日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
Eテレ特集などのドキュメンタリーを見ているような映画でした。
撮り方もハンドカメラが多くて、少々目が疲れると感じることがありましたが、リアルで自然な演出を願ってそうしたのかなと。
口数は少ない真面目な性格の高野が、真剣に目の前の人に向き合い、サポートする様子。
そんな中でも報われない辛い出来事が立て続けに起こり、助ける事ができない自分の無力さ、喪失感に襲われる辛さ。
プライベートでも、、と。
一度は辞表を提出して一線から退こうかと悩み、色々向き合いながらも前に進んでいく様子が良かったです。
子役の男の子も可愛い笑顔が印象的だった。
ラストエンディングのLiam Pitcherの「Winter」という曲も静かなピアノ演奏で、そっと寄り添う感じで良かった。
2019年12月6日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
理学療法士の苦悩はよく分かる。
患者の希望と現実的な回復が折り合わず、希望を失わせないよう結論を暈しながら日々の訓練を経て患者本人が折り合いをつけていく…のが理想ではあるが、プロスポーツ選手となるとそうはいかないんだろうな。
やらなければ取り戻せないが、やっても出来なかった時の心が折れる事は恐ろしい。
三浦貴大は地味な雰囲気がよく似合っている感じ。
ラグビー選手に入れ込んで奇跡を期待する青臭さはわかりやすい。
患者の表面的な思いは見易く、ともすれば寄り添う医療スタッフも表面的な付き合いになりがちで忘れてしまう初心を思い出せるのではないだろうか?
ただ作品内でも忙しく大勢の患者への対応を行っていくと、業務をこなす事に重点を置くようになり、心のふり幅を小さくして悲しい出来事をストレスにならないようにするのもプロの対応ではある。
そう言う意味では医療従事者向けとも言える。
全てに寄り添うのはムリなのだ。
回復しない自分に絶望し自殺したラガーマン、まだまだ生きたかった幼い少年、保険金を遺そうとする父親…そんな彼らと寄り添うのは大変なのがよく分かる。
2019年12月1日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
理学療法士(PT)の苦悩と葛藤を描いた作品。
PTさんには日々お世話になっているので気になっていました。
けど、こんなに重く、しかも衝撃的な内容だったとは。。。
PTは患者にリハビリ行なうけどそれは医師の診断ありきで、だから無力感に苛まれることもあるんだなぁとか。
PTは患者にあまり感情移入することなく、必要なのは「技術」だと主人公が同僚に言われるシーンがあるんだけど、それはちょっとわかるというか。
患者からすると、どうすれば身体の痛みがとれるのか、どうすれば日常生活が楽に送れるのかを知りたいわけで。
でも、やはりそこに寄り添う気持ちが感じられないとPTさんへの信頼は深まらないわけで。
そんなことを思いながら観ていました。
内容はかなり重いし、主人公の絶望も計り知れないけど、最後に少し前に進もうとするする姿が見れたので救いがあってよかったです。
生きていくなかで、岐路に立った時、壁にぶち当たった時に思い出しては観る映画がいくつかあります。
栞はその中の一つになりました。
描かれているのは躓きであり、後悔であり、絶望であり、衝突なのだけど、なぜこの映画からは希望の匂いがするのでしょう。
それはきっと物語の中の人々が、たとえそれが失意の中であっても持っているバトンを誰かに必死の思いで渡そうとしているからだと思いました。
脊髄を損傷したラガーマンから理学療法士へ。父から子へ。同僚が共に働く人々へ。兄が妹へ。同じ病気を診ようとする名も知らぬ若者へ。
それは人が生きて行く過程や歴史の中で、ただひとつ尊い行為なのではないかと思うのです。
僕は理学療法士ではなく、周囲の親しい人間にその職に就いている人はまだいないのですが、どんな仕事や生き方を選んでいるかにかかわらず、その点においてこの映画はすべての人々に、息を吸ってまた歩き出すための力を思い出させてくれる作品だと思います。