「創作や想像力の在り方について」アランフエスの麗しき日々 SungHoさんの映画レビュー(感想・評価)
創作や想像力の在り方について
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今日の2本目は巨匠 ヴィム・ヴェンダース による『アランフエスの麗しき日々』。朗読調の男女の会話を主として織りなされる会話劇。
タイプライターに向かって創作をする作家(この作品世界の中ではメタな存在)は、目の前の窓の外に広がる、ラベンダーやバラが花盛りの庭のテーブルの左右に座る男女を夢想し、性愛や官能について語らせる。
学生の頃の自分だったら、背伸びしてこういう映画をおしゃれで好きになってたと思うけど、男女の語る内容は詩的に過ぎて、するすると空疎に頭から抜けていってしまう。映画という映像メディアを用いながら、まるであえてその視覚を用いずに表現しようとしているかのようだ。
この夢想の花園は作家の頭の中に広がっている。しかし、時折その外界に現実が姿を覗かせる。この庭は現代世界から隔絶されているかのようだが、双眼鏡で遠くを眺めると高層ビルが見えるし、飛行機の音も聞こえる。
結果的には、この映画では会話劇の会話が重要なわけではないのかもしれない。原作には登場しないという「作家」が今作の主人公のように登場するのは、この作品世界と現実世界とのギャップに苦しむ、懐古的な作家の姿を描き出したかったのかもしれない。
そう考えると、本作のテーマは、創作の在り方や想像力とは、ある様式がずっと続くわけではなく、常に移ろいゆくものだということのようにも思う。
2017年 通算51本目(目標まで2本)
感想:★★★☆☆
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