リズと青い鳥のレビュー・感想・評価
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あまりにも女々しい
詳細忘れましたが…
鑑賞直後はあまりの女々しさに辟易しましたが、鑑賞後しばらく寝かせた今はこう思うのです。
こんなにみっともない映画だから、未だに私の胸に刺さっているのだと。
見てすぐに書くレビューが正解とは限らないよね?
数年後も俺の心に残ってなきゃ、名作の資格はないぜ。
学校という閉鎖環境の中で、共依存とも思えるみぞれと希美。思春期の歪...
学校という閉鎖環境の中で、共依存とも思えるみぞれと希美。思春期の歪な友人関係は誰しも覚えがあるのでは。二人が成長し、自分の生き方をすこし見いだす最後にホッとする。
少女たちの羽ばたき。大好きという気持ちを込めて
吹奏楽に打ち込む女子高生たちの青春を描いた京都アニメーション作品『響け!ユーフォニアム』の完全オリジナル劇場版。
TVシリーズは未見。鑑賞の一番の理由は、『けいおん!』『たまこラブストーリー』『聲の形』の山田尚子監督の新作だから。
なので、話もキャラクターも全く知らず。
しかしちょいと調べてみると、TVシリーズの続きの劇場版というより、これはこれで独立した一本の作品だそうな。
メインとなる登場人物も、TVシリーズではサブキャラ。
言わば、スピンオフ。
うむ、これならTVシリーズを見てなくとも何とか見れそうだ。
北宇治高校吹奏楽部の3年生。
オーボエ担当のみぞれと、フルート担当の希美。
迎える高校最後のコンクールと、親友である二人の関係…。
ベースであるTVシリーズは全国大会を目指す王道の青春ストーリーのようだが、本作はコンセプトを一新。
二人の少女の心情にフォーカス。
となると、少女たちの心の機微を描く事に長ける山田監督の本領発揮。
まるでキャラに寄り添うかのようにアップを多用し、何気ない表情、眼差し、仕草、息遣い、呼吸、間などで彼女たちの心情や距離感をすくい上げる手腕はいつもながら見事。
親友の二人だが、性格は真逆。
希美は明るく活発で、後輩からもとても慕われている。
一方のみぞれは、いつも独りで居て、無口で掴み所が無い。後輩に言わせると、「先輩、つれないですぅ~」。
そんな二人が親友ってのも意外な気もするが、希美はみぞれに気軽に話し掛け、みぞれにとっても希美は唯一親友と言える存在。
確かに仲良しなのだが…、この二人、微妙な距離感を感じるのも事実。仲はいいが、何か隔てた壁があると言うか、一歩懐に踏み込んでないと言うか、本当に本音や心の中全てを開けてない気もする。
また、みぞれは希美に親友以上の“好き”の感情を持っている。別に同性愛って訳じゃないが、この年代の少女たち特有の色んな感情を込めての“好き”の気持ち。
希美の方はどう思ってるか分からないが、みぞれの眼差しは常に希美に注がれている。追い掛けている。合わせている。
が、引っ込み思案な性格故、それがなかなか伝わらない、届かない。もどかしさ、歯痒さ。
それは演奏にも表れてしまう。
コンクールの自由曲で、みぞれのオーボエと希美のフルートの二人だけのソロがある。
これが上手く噛み合わない。
本当に二人は親友なのか…? 仲良く、上手くやっているのか…?
お互いを感じ合い、思い合っているのか…?
加えて、二人の過去のある出来事も。みぞれを吹奏楽に誘ったのは希美だが、一年の時、希美はみぞれに黙って一度辞めた事がある。それが未だに引っ掛かっている。
噛み合わない演奏、微妙な距離感の“仲良し”、相手に合わせただけの進路…。
何処かよそよそしく、二人の関係に非常に大きな陰が…。
みぞれが演奏に心を込められない理由がもう一つ。
自由曲を理解出来ない。
自由曲は童話で、本作のタイトルにもなっている『リズと青い鳥』。
孤独な少女リズの前に、人間の少女の姿に変えた青い鳥が現れ、二人で一緒に暮らす。
いつまでも一緒。
大好き。
しかし、リズはある日、青い鳥の少女を自分の元から放す…。
希美はこの童話は自分たちに似てるという。
即ち、孤独なリズ=みぞれ、活発な青い鳥の少女=希美。
みぞれもこの童話に自分や希美との関係を重ね合わせていた。
だから、理解出来ないのだ。
何故、リズは最後、青い鳥の少女を放すのか…?
大好きなら、ずっと一緒に居ればいいのに…。
自分も希美が大好きで、ずっと一緒に居たい。
でも、今…。
好きという気持ちだけじゃダメなのか…?
ある時みぞれは、童話の真意を知る。
好きだから、大好きだから、放したのだ。
ずっと“私”という鳥籠の中に居ちゃダメ。
あなたはこの広い、自由な世界へ羽ばたいて、あなたの幸せを見つけて。
それが私の幸せでもあるんだから。
離れても、大好きな気持ちは変わらない。
みぞれのオーボエのソロは誰が聴いても変わった。
圧巻で、聴く人を感動させるほどに。
それはまるで、希美に語り掛けてるようだ。
私は希美が大好きだよ。ずっと一緒に居たいよ。
でも、私はもう羽ばたくよ。
希美の事が大好きって気持ちのまま。
みぞれの心からの演奏を聴いて、希美は動揺を隠せない。
そして気付く。
みぞれを鳥籠に入れたままだったのは、羽ばたけなかったのは、自由で無かったのは、寧ろ自分の方だったのでは…?
ずっと自分を追い掛け、自分を慕ってくれていたみぞれが自分から羽ばたこうとしている。
自分は本当は何の才能も無い。置いてきぼり。ちょっとした嫉妬と、もの悲しい寂しさ…。
希美こそがリズで、みぞれが青い鳥の少女だったのだ。
二人はお互いの気持ちを打ち明け合う。
大好きな気持ち。
本音。
お互い、その気持ちを知って…。
アニメーションの枠に留まらない繊細な心理描写は、感情だけではなく思想までにも訴えかけてくるかのよう。
吹奏楽の音にまでも拘った現実パートが瑞々しく情感たっぷりならば、童話パートはカラフルでファンタスティック。
全体的にふわっとした作風で、人によっては好みが分かれたり、共感出来たり出来なかったりの山田ワールド。
かく言う自分もTVシリーズを見てないからかちと他の山田作品ほどではなかったが、それでもそのクオリティーの高さには感嘆させられ、心満たされるほど魅了される。
終わり方も個人的には良かった。
劇的な終わり方ではない。
コンクールや進路など、やるべき事がいっぱい。
その一つ一つを、頑張る。
少女は、羽ばたこうとしている。
もう一人の少女も、羽ばたこうとしている。
笑顔で、大好きな気持ちと共に、この広い空へーーー。
少女たちの切なくも美しい友情を描いた傑作
『リズと青い鳥』★4.5
(東京近郊の方は10月26日まで立川シネマシティで極上音響上映やっているので観に行こう!金は出す!)
傑作『聲の形』の山田尚子監督×吉田玲子脚本の最新作。京都アニメーションの人気アニメ「響け!ユーフォニアム」シリーズのスピンオフながら、前作の知識がなくても本作だけで楽しめる独立した1本の作品になっている。
物語は高校の吹奏楽部に所属する2人の少女の友情を美しい映像で描いた青春劇。
本作で描かれる少女たちの友情はガラス細工のように繊細だ。ほんの少しバランスが崩れるだけで壊れてしまいそうな儚さがある。しかし、そうであるがゆえに美しい。思春期の少女たちの間でしか成立しえないであろう、奇跡のような瞬間のきらめきを切り取っている。しかし、青春時代にはいつか終わりが来る。少女たちは高校卒業後の進路という現実に向き合うことで、それまでの関係の見直しを余儀なくされる。
タイトルの「リズと青い鳥」とは物語内に登場するオリジナルの童話と同名の楽曲からとったもの。孤独な少女リズと彼女のもとにやってきた青い鳥との出会いと別れの物語を少女たちは自分たちに重ね合わせる。内気な少女・のぞみは自らをリズ、活発な親友・希美を青い鳥だと思っていた。孤独なリズが青い鳥との別れを選択することが理解できず悩むみぞれ。しかし、とあるきっかけで自分こそが青い鳥だったのではないかと彼女は気づく。自分が翼を持つ自由な鳥だと気付いたのぞみは自らの思いを演奏にのせる。
愛しているがゆえに、相手の幸せを願うがゆえにリズは青い鳥との別れを選択する。鳥は大空を自由に羽ばたいている姿こそが最も美しく輝いているから。
そばにいることだけが愛情の形なのではない。相手が最もその人らしくいられるような距離をとることも必要なのだ。
友情とも愛情ともつかない共依存的な関係から抜け出した少女たちは異なる進路を選択する。この先に待っているのは別れである。しかし、別れを選択することで、むしろ彼女たちの関係は以前よりより強固で明るく力強いものになった。
少女たちは2人ともが相手の幸せを願い、自らの小さな幸せを手放せるリズであり、同時に幸せに向かって羽ばたける翼を持った青い鳥なのだ。
青春映画、アニメ映画、百合映画?(個人的には百合とは思わない)の金字塔であり、2018年暫定ベスト映画。12月に発売するBlu-rayはもちろん購入します。
『聲の形』『リズと青い鳥』と傑作を2本連続で送り出した山田尚子監督と脚本の吉田玲子さん(最近話題の『若女将は小学生』もこの方!)の実力は本物。一生着いていきます!
https://youtu.be/lQxwNaoFdQQ
time to fly
観るのが辛い重苦しい展開。心理的従属関係。絵に描いたように快活な希美と内気なみぞれ。極端な構図。しかし、だからこそ倒錯が際立ち、本作のテーマが浮き彫りになる。その倒錯表現の見事さ。絵の表情だけではなく、演奏で魅せる。それまでの重さが見事に吹き飛ぶ。
ディテールを時間をかけてしっかりと描きこむ。みぞれの一方的な心理だけではなく、希美の苦悩もしっかりと呼応する。周囲の描き方も秀逸。続いて傑作を放つ山田尚子と京都アニメーション。最も注目されるべき日本の作家かもしれない。
二人の歩調、希美の表情、鳥の羽ばたき
よくレビューで「映像が美しい」という表現を目にしますが、ほとんどの場合、それだけでは映画は面白くなりません。5分程度のPVならまだしも、2時間近くもある映画(本作の上映時間は1時間半ですが)では、ただきれいなだけの映像を見せられ続けてもすぐに飽きてしまいます。
しかし、この『リズと青い鳥』は映画としてちゃんと面白いです。大きな事件が起こるわけでもなく、物語の舞台が学校の外へと出ていくことのない、小さな物語であるにもかかわらず、なぜ面白いのでしょうか。
それは端的に言うと、映像に多くの情報が含まれているからです。情報には、言葉で代わりに表現することができるものもありますが、登場人物の心情や物語の主題など、簡単に言葉で置き換えることのできない、あるいは、言葉にすると陳腐になってしまうものがあります。
本作では、それを徹底的に映像(そこには音も含まれる)で語りきるという挑戦がなされています。登場人物の表情や仕草。セリフの言葉自体よりも、その言い方や声のトーン。歩き方やその足音、そして楽器を演奏する音。さらには、メタファーとしての鳥の影、鳥が羽ばたく表現……などなど。あらゆる映像表現を駆使して、主に希美とみぞれの心情、二人の関係性を描いているのです。
私は二度劇場に足を運びましたが、二回目の鑑賞時には以下の三つの点に注目しました。
➀希美とみぞれがいっしょに歩く場面
➁中盤から終盤にかけての希美の表情
➂鳥の影、鳥が羽ばたく表現
本作では徹底して学校の中だけで物語が進んでいきます。それぞれの家庭の描写や、休日の場面は一切ありません(プールに遊びに行く話は出てきても、その場面は描かれない)。象徴的なのが、希美とみぞれが登校する場面から物語が始まり、下校する場面で物語が終わることです。
この冒頭の場面と最後の場面とを比較すると、二人の変化を見て取ることができます。初めみぞれは、希美の後ろについて足並みを揃えるように歩いていますが、最後では、みぞれが希美の前を歩いて学校を出ています。二人の歩調も微妙にずれていて、それぞれ自分のペースで歩いているように見えます。みぞれと希美それぞれの変化、あるいは二人の関係性の変化を、二人の歩き方や足音だけで表現しているのです。
物語終盤で、これまで「みぞれ=リズ、希美=青い鳥」だと思っていた構図が反転し、実は「みぞれ=青い鳥、希美=リズ」であることが分かりますが、映像を注意深く見ていくと、それを仄めかす表現が散りばめられていることに気が付きます。
分かりやすいのは、物語中盤から終盤にかけての希美の表情です。希美はみぞれと比べて表情が豊かですが、内心何を思っているか、何を考えているかはよく分かりません。感情表現がストレートな分、よっぽどみぞれの方が分かりやすいぐらいです。しかし、「希美=リズ」という前提で彼女の表情を見ると、不安を押し隠したようなその表情が、自分の元から青い鳥が飛び立っていくことをおそれるリズそのものだということが分かります。
初見時には、希美がなぜ「私も音大に行く」と言い出したのかがよく分かりませんでしたが、これも、自分の元からみぞれが離れていくことをおそれる気持ちから出た発言だと考えれば腑に落ちます。
「みぞれ=青い鳥」であることを仄めかす表現も実はちゃんとあります。それは、鳥の影や、鳥が羽ばたく表現です。初見時はただなんとなく「この映画、鳥が羽ばたくカットがやたらと多いな」と思っていたのですが、どんな時に鳥が羽ばたくカットが差し挟まれているかを見ていくと、あることに気が付きました。鳥が羽ばたく表現の前後には、みぞれが同じパートの下級生と交流を深める場面が必ずと言っていいほど来ているのです。
つまり、鳥が羽ばたく表現は、みぞれ(=青い鳥)が希美(=リズ)の元を離れて自立しようとしている姿を象徴しています。その最たるものが、クライマックスの演奏シーンです。このシーンの直前には無数の鳥が羽ばたくカットがあり、演奏シーンの合間にもインクで表現された青い鳥が羽ばたくカットがくり返し挿入されています。これは、青い鳥であるみぞれが希美の元を飛び立つ決定的瞬間であることを象徴しているのです。
本作では童話『リズと青い鳥』が作中作として出てきますが、ただ童話の中のリズと青い鳥の関係性が希美とみぞれの関係性に重なるだけでなく、途中でその構図が反転するところや、童話の結末を自分たちなりに解釈し、青い鳥がリズの元から羽ばたいていくことを、ハッピーエンドとして捉え直そうとしているところが面白いなと思いました。
映画のラストに“disjoint”という言葉が出てきます。これは数学用語での「互いに素」という意味の他、「離れる」「バラバラになる」といった意味を表す言葉です。この“disjoint”の“dis”が消されて“joint”となる表現は、手を離すこと=別離ではなく、かえってつながりが強くなる、ということを象徴しているのではないでしょうか(私は、愛着理論における「安全基地」の概念を思い起こしました)。「飛び立った青い鳥は、リズに会いたくなったらまた会いに来ればいい」のです。
90分が短く感じた
TVアニメは1期のみ観ています。
ターゲット層がちょっとわかりにくいけど、ジャンルは百合で男性向けってことでいいんだろうか。
一般向けだとすると、一部ちょっとばかし過剰な描写があるように思います。(女目線です)
劇場では、わたし以外が男性のお客さんで、正直なところ、やや居心地はわるかったです。
主人公たちの思春期ならではの感情に、共感する部分もありましたが、やや置いてけぼり感はありました。
自分の感覚では、中学3年生くらいの設定だと、よりリアルだった感じがします。
見終わって真っ先に思ったのが、90分短い!夏祭りもプールも見たかった!でした。
原作読めよ!って感じなのでしょうか…
悪いことばかり書いてますが、美しい映画でした。
わたしもこんな感情を、自分にとって特別な友だちに対して抱いたことがあるなぁと振り返りました。
女子にはあるあるかもしれません。
暖かな別れへ向けて
吹奏楽部に所属する人見知りなみぞれと明るく朗らかな希美。みぞれに取って希美は全てだったが、進路を考える時期に差し掛かり…。
評判が良かったので鑑賞。スピンオフと知らずに観たが束縛と共依存、大切な人を思うが故の想いが嫌な登場人物ゼロで描かれる暖かい作品でした。
素晴らしい映像作品だが面白いとは言えない
シナリオ、作画、演技の全てが繊細に組み立てられた素晴らしい映像作品。これほどの繊細な感情表現に成功した映画というのはそうはないのではないか。
だが序盤からゆったりした展開で、ほぼ音楽室の中だけで物語が進んでいく舞台劇のような映画である。アニメらしく動きで楽しませるということもない(ただしアニメでしか出来ない演出はふんだんに用いられており、見る価値はある)。
感情表現の素晴らしさには息を呑みつつも、話の退屈さに耐えるのはかなり辛かった(笑)。こういう映画は批評家受けはするのだろうが面白いとは言えない。
音が印象的な映画でした
音が美しい映画でした。
日常の生活音ですら一つのメロディーのように折り重なり、やさしい青春劇に色を添える。
さわやかな一見と、その奥に秘められた情熱的な劣等や独占や友愛、大人になりかけの少女たちが織り成す物語は美しく切なくて可憐で、静かに凶暴。
吹奏楽が奏でる音楽と日常と心情を映す音が映像をあいまってとても情熱的で美しい映画でした。
独特の空気感に酔いしれる
みぞれと希み、2人の少女が織りなす儚く美しい瞬間が心に染みました。
タイトル名「リズと青い鳥」の意味合いも深く美しく、第三楽章の音色にも聴き惚れました。味のある独特の空気感に酔いしれる素晴らしい作品。
2018-111
うつくしい別離と希望のお話
本編未視聴です(スピンオフ作品という事すら直前に知った)
評判を見て「これは凄く好きなやつなんじゃないか」と思ったのですが案の定でした。羨望と絶望と別離と希望のお話。
冒頭の希美がリズと青い鳥の関係を私たちみたいと言うシーン、こいつ当然のように自分が青い鳥側だと認識しているな…!いいぞ…!と思っていたのですが、中盤でみぞれが「ずっと私がリズで希美が青い鳥なんだと思ってた、でも本当は逆だったら?」と気づく場面を見て、希美は本当はずっと前から薄々分かっていたんだろうなと感じました。(そしてあの場面で希美も確信したのだろうな、と)
終盤みぞれが希美に「希美の話し方が好き、足音が好き、すべてが好き」と言うのに対して希美が返せる言葉が「みぞれのオーボエが好き」なの、目茶苦茶残酷で好きですね…。
みぞれの希美に対する感情が「わたしを音楽に出会わせてくれた人、わたしに人生をくれた人」なのに対して希美が一番愛し焦がれているのはみぞれの才能という…
みぞれは「希美のフルートが好き」とは言わなかったんですよね。凄く好きなシーンです。
最後二人は別々の道を選びますが、希美がみぞれと同じ音大に進んだら希美はずっとみぞれと比較する人生を送る事になってしまうのであの結末は希望を感じさせ良かったと思います。必ずしも同じ人生を歩む必要は無いので。
希美とみぞれがそれぞれの人生を手に入れる迄の物語だと感じました。
あと感想を読んで初めて気づいたのですが、モノローグが一切カットされてるんですね。キャラクターの細かな表情の変化や瞳の揺らぎ等読み取れるように描写されていたので鑑賞中は特に気にしていませんでした。
濃密に感じられる校舎の匂い
王道熱血ストーリーで人気を博したユーフォシリーズのスピンオフ作。本編とはキャラデも雰囲気も打って変わって、静かで抒情的な物語が織り上げられています。
●ストーリー
この映画は青春の一風景を切り取っただけの映画であり、いわゆる物語に求められるようなスリリングな展開はありません。本当に学生生活の一幕を切り取り、余計な味付けをせず、そのままに投影した映画です。その上描写されている範囲は非常に狭く、基本的にはみぞれと希美の2人にしかスポットは当たりません。
にもかかわらず、この映画はまさに名作。
本作はコンクールで演奏する童話原作の楽曲『リズと青い鳥』を軸として、進路選択が迫る高3の夏を舞台にみぞれと希美の関係性を描いた作品です。童話に登場するリズと青い鳥の関係性をみぞれと希美に絡ませつつ、二人の交錯しそうでしないもどかしい距離感の変化を辿る。それ以上のスペクタクルはありません。しかし、この悪くいってしまえば起伏の無い話を丁寧に描き、映画として成立させたスタッフに万雷の拍手を送りたい出来栄え。
●演出
この映画は暗喩的なシーン抜きには語れないものです。まだまだ全然拾い切れていないうえ、解釈が分かれる箇所も多そうですが、例えば冒頭、みぞれが希美の足音を認識した瞬間、雑草の中に咲く花が映されるシーン。希美を花に例え、みぞれにとって彼女以外はすべて「雑草」のようなものであるという認識を提示しています。
希美=花という構図は中盤でも登場し、例えば音大いくのやめよっかなーと希美が吐露するシーンでは、背景にウロボロスのように絡まった花が描かれています。
みぞれに対し含むところがあれど、自分からはアクションを取れない希美の自家撞着的な心情を示しているとも取れます。
1回といわず2回、3回とみて、こういったシーンから心情を読み取ってゆくのも楽しい映画です。
また何かを暗示したシーンでなくとも、台詞がなく、BGMに合わせて場面がリズミカル展開してゆく箇所がいくつもあり、独特の綴り方に冒頭から一気に引き込まれます。
●音楽
音楽が題材なだけあり、音楽抜きではやっぱり語れないこの映画。
冒頭からいきなりリズと青い鳥の一部が流れますが、このメロディーはいわば映画の主題として繰り返し提示されます。
その他にもBGMが動きとマッチしながら展開するミュージカルめいたい部分もあり、音なしでは成立しない映画といえるでしょう。
細かな環境音も含めて全体に静かなので、できれば人がいない静かな映画館で観たいものです。
あとEDのSongbirdsが名曲。ちょっと日本語英語なのが気になるけど、いやそんなことはいいんだ。映画の雰囲気によく合った爽やかな旋律で最後を綺麗に締めくくっています。
●絵
童話『リズと青い鳥』はパステル調で描かれ、本編(?)もやや淡めの色彩で色づけられている感じです。瞬きする間に通り過ぎてしまう青春の儚さを感じさせる秀逸な色使い。
あと個人的にキャラデはアニメ!という感じの色を抑えた(特に目元)本作の方が好きです。
●総評
全体を通じて雰囲気の描写が素晴らしく秀逸。スクリーン越しに学校という場所の気配が濃密に迫ってくるような感覚。
放課後の廊下、人がいない冷めた音楽室、そういった記憶が自然に呼び起こされ、自分が送ってきた高校時代の記憶までも掘り起こされ、何とも表現できない感慨が残る作品でした。
言葉では言い表しきれない、名前を付ければ大事な物がこぼれてしまいそうな、そんな淡い感情をこそ大事にしてみたい。
2回目鑑賞以降で評価が変わりました
現時点で8回鑑賞しております。
1回目は殆ど意味が分からずに終了。
気分を悪くされたら申し訳ありません、百合アニメか?と思った位でした。
前回のユーフォ劇場版が久美子が思いを
言葉や行動でストレートに表現するタイプ
対象が先輩への憧憬で有った事から伝わり易かったのかも知れません。
リズは同性の同級生への好意、みぞれも感情を表に出すタイプではなく、希美は逆にはぐらかす・風に流す様なタイプで伝わり難いのかも知れません。
2回目鑑賞時に第三楽章タイトルの「愛ゆえの決断」、新山先生の言葉でどちらがリズでどちらが青い鳥かに二人が気付き口の動きだけがインサートされ青い鳥が羽ばたくシーン
私はここでこの映画の伝えたいものがわかった様な気がします。山田監督は、この手の表現が本当に素晴らしい。
この後はエンドロール迄涙が止まりませんでした。
最初はみぞれが主人公なの?と思っていたのですが鑑賞を重ねるに連れ希美の物語なのかな?と思ったりもしています。
希美と同じ音大を受けるというみぞれ、この時点で希美は自分が「リズ」なのかなと思い始めこのままでは行けないと思いつつも
後輩をプールに誘ったり新山先生からアドバイスを受けるみぞれが自分から離れて行ってしまうのでは無いかと葛藤しつつ…
最後の大好きのハグの後の「みぞれのオーボエが好き」もみぞれの激情に対し冷たい様に感じますが「音楽を続けてね」なのでしょうね。みぞれを吹奏楽部に誘った時の事をハッキリと覚えていないと言いつつも一人で廊下を歩くシーンではキチンと回想していますしね。藤棚のシーンで「神様、どうして私に籠の開け方を教えたのですか」と言うのも希美ですしね。
観る度に何か新しい発見の有る映画です。
他の方のレビューにも有ります様に息吹とか
些細な音にもこだわって観ると良いと思います。劇場では真ん中の席に拘らず今回は右寄、次回は左寄と位置を変えて観ると聞こえなかった音が聞こえたりすると思います。
一度自分には合わないと思った方も見方を変えて再度鑑賞して頂きたいと思います。
長々と拙いレビューで失礼致しました。
TVシリーズとは毛色が違う
続編という体をとっていて、矛盾もないけれど話のテイストがだいぶ違う。あくまでこれは主役の2人にのみ焦点を当て、その心情を描写することに注力している。
流石の京都アニメーションだけあってきれいな画面作りは言わずもがな。
また、吹奏楽をテーマにしたからか、音にもこだわりが見える。靴音が心地よく感じるというのはなかなかないのではなかろうか。
90分かけてじっくり2人を描いたからか感情移入しやすい。
終盤で思わず涙ぐんでしまった。
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