「13年前のハイライトの味は苦くて しかもカビ臭いに決まってる それでも・・・」blank13 カールⅢ世さんの映画レビュー(感想・評価)
13年前のハイライトの味は苦くて しかもカビ臭いに決まってる それでも・・・
ハナレグミの「家族の風景」がエンドロールにかけてかかる。
歌声はハナレグミではないけど、それがまたいい。私のお気に入りの「家族の風景」も一人のアマチュア歌手が弾き語りで歌うものだ。人それぞれの「家族の風景」を想うことができる自由度がこの歌にはある。しかし、あまり幸せそうな雰囲気はない。
最後、喪服を着て公園のベンチに座っている神野三鈴が好きだ。13年前に雅人が残して行ったハイライトを一本咥えて、百円ライターで火を点ける。ちょっとむせて、何も言わない。「家族の風景」が流れる。伴奏はピアノのみ。そのまま曲の世界に持っていかれる。
🎵キッチンには ハイライトとウイスキーグラス 🎵どこにでもあるような 家族の風景
この曲にインスパイアされて出来た脚本だったらスゴい。と、思う。
葬式に出たくない理由を考える。女がいたらと思うとやなんだるうな。タバコを買いに行くと言って、5、6本残っているハイライトとライターを置いて出ていった亭主とそれを13年棄てずにとっておいた妻のことを考える。
亭主の代わりに、子どものキャッチボールの相手をする。ごめんね、ごめんねと言いながら。
なんで、ごめんねなのかを考える。
八重樫、梨田、川藤・・・懐かしい。いずれも個性的な打撃ポーズ。父親でなければ駄目ななにかがある。どんなにダメな父親でも。
病院に見舞いに行ったあとに、なんであんなにバッティングセンターに行くのかを考える。
コージにとっての野球を考える。
雅人が死んでからでは遅い儀式のようなものなのか? コージにとって、取り戻すことのできない時間に対する「弔い」がバッティングセンターに行くことなのか。
葬式は普通の葬式でないほうがいい。
寺と言いながらも、公民館や団地の集会室みたいだった。
金歯をペンチで抜くのは死体損壊罪にあたる気がする。気持ちはわかるけどね。金属が溶けるほどの高温のわけはない。
あぁ、すっかり、自分の葬式を考えてしまうお年頃になってしまった。ちなみに奥歯に金歯が上下で計5本あります。いまから心配です。