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ドミトリー・メスヒエフ監督による2015年製作のロシア映画。
原題:Batalon、配給:アットエンタテインメント。
戦闘シーンはかなり迫力があった。また、女性兵士達が敵兵に殺されていくさまは、血の量も多く、むごたらしくもあり、なかなかに残虐で哀れ。また見終わってから、史実に基づく映画であることを知って、かなり驚いた。
背景を整理。1917年3月民衆蜂起によってロマノフ朝が倒れブルジョワ権力の臨時政府が樹立(三月革命)。民主的な政権で下士官兵による「兵士委員会」の同意が戦闘に必要。臨時政府は第一次世界大戦に対して連合国との関係を重視し参戦を継続。「ロマノフ朝が崩壊すれば戦争は終わる」と考えていた兵士たちは脱走するようになり兵力は大きく減少。
1917年5月戦争相であったケレンスキーの命により、マリア・ボチカリョーワ少尉は全成員が女性である部隊を創設。厳しい訓練を一ヶ月行い、マリア・ボチカリョーワとその隊は1917年6月の攻勢に加わるためにロシア西部戦線へと送られた。
貴族の娘がフィアンセが戦争で死んだことを知り、復讐のために女性部隊への参加を決める。彼女の母親から連れ戻しを依頼された家政婦も何故か部隊に参加。ただ、多くの女性兵士がなぜ部隊に参画したのか、その理由は判然としなかった。
ドイツ軍と対峙する前線の男性兵士達が、あいつらも庶民、どうせ俺たちはこの後内戦を戦うと言って、酒を貰って仲良くやっているという描写は、全く目新しくて驚かされた。また、ドイツ軍と死闘している女性隊に応援を要請されても、誰も全く動かない。将校に説得されても、戦おうとしない。
映画としては、この描写が最後、階級章を剥ぎ取って戦いに向かう将校達の行動に触発されて、皆が戦いに走るというドラマチックな逆転展開への布石となっていた訳であるが、下っ端兵士が主張する動かない理由づけに、大きな説得力も感じてしまった。
映画では、マリア・ボチカリョーワは、夫にユダヤ男と駆け落ちした女(事実らしい)と罵られ、殴り合うが結局は袋叩きにされてしまい、ヒーロー扱いにされていない。加えて、赤軍により処刑されたことも最後に付け加えられる。
深読みしすぎかもしれないが、女性兵士の死に方があまりに無惨(特に少女の様な兵士が捕虜ドイツ兵に膝で首を捻られ絶命するのが哀れ)で、外向きには国威発揚映画でありながら、実は政治権力に翻弄され無駄に命を落としてしまった女性兵士や下っ端兵士たちを描いた反戦映画ではないかと思った。
製作フョードル・ボンダルチュク、ドミトリー・ルドフスキー、ポール・ヘス マイケル・シュリクト、製作総指揮イゴール・ウゴルニコフ。
脚本イリア・アブラメンコ、エフゲニー・アイジコビッチ、ドミトリー・メスヒエフ イゴール・ウゴルニコフ(1941 モスクワ攻防戦80年目の真実等)、撮影イリア・アベルバク、編集アレクセイ・マクラコフ マリア・セルギエンコバ、音楽ユーリ・ポテイェンコ。
出演マリア・アロノーバ、マリア・コジェーブニコワ。