RAW 少女のめざめのレビュー・感想・評価
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ダークなホラーテイストに仕込まれたユーモアが秀逸
青春時代とは誰もがとっちらかったことをしでかすし、それが大学寮のような若者の共同生活の場になると、もはや集団発狂の様相を呈する。そんな「青春」が持つ一側面が、残忍なユーモアをもって描かれている。
ヒロインは飛び級で年上ばかりの大学に入り、まだ心の準備もできていないままに大学のワイルドライフに放り込まれる。彼女にとっては、その悪ふざけの度が過ぎているからこそ、その反動でよりおかしな方向へとひた走ってしまう。それが本作ではカニバリズムであり、あからさまに性のめざめと呼応している。
とはいえ、それは誰もが通る道で、決して特別なことではない。そのありふれた性と青春の戸惑いを、よくもまあこんなにもブッ飛んだ映画に仕上げたものである。優れた青春映画であり、繊細な少女映画であり、イカレたコメディであり、戦慄のホラーでもある。ひとつのモチーフからこれだけ多面的なジャンル映画を造り上げた監督にひれ伏したい。
そこらへんのホラーよりグロい
ベジタリアンの女の子が、人肉に目覚める話。自分だけじゃなくて、お姉ちゃんもとは驚いた。後半になれば、あなたも?!って人も目覚めてたのが分かる。
グリーン・インフェルノとかで人肉は大丈夫と思ってたけど、この映画はダメだったー。お姉ちゃんの指のシーンとか、あかんってあかんって!って思いながら観てた。代わりに安楽死させられた犬が不憫すぎる。
「チタン」よりいい。
同監督の「チタン」が支離滅裂すぎて、でもハリウッド映画や邦画にはない印象が後を引き、今作も鑑賞。
少女の成長とともに見る側の驚きもエスカレートしていく。終盤ではマイノリティや〇〇当事者の葛藤や悲哀も染み入ってきた。
ラストにもサプライズがあり、作品の完成度はこちらのほうが上で大満足。欧州映画、漁ってみようかな。
カニバリズムに取り憑かれただけで無い
カニバリズムを主とし、家族愛やその運命を描いた作品。
とは思えないような、青春映画のような幕開け。
入学した獣医学生の伝統的なノリが独特すぎて、変なしきたりも何だか酷い。
それにゲイだからって、男女同室とかおかしいでしょ。
そんな学生生活の中で、中で段々と滲み出る肉への欲求。
そして遂にカニバに目覚めた瞬間。その描い方は音楽も相まって凄まじいシーンでした。
一度始まった衝動は止まる事なく、ルームメイトさえも食の対象に見てしまう。
そんなルームメイトとの初体験は完全に食事の様相。
エキセントリックな姉がすごいけど、何だかんだ一番の理解者であったようにも見えました。喧嘩も絶えないけどすぐ仲直りする、二人の距離感が良いんですよね。
が、それもまた目覚めの一環で、姉が示した現実が衝撃的。
それは受け継がれていた、強烈な幕引きでした。
ただ家族や姉妹愛、そして少女の成長物語がしっかりと詰まっていた作品でもあったと思います。
特に姉のアレックスは欲望に負けてしまったのではなく、その身をもって妹ジュスティーヌに成長を促しているように見えました。
自身の指を食べられ「目覚めてしまったのか」と流す涙。
どうしても衝動を抑えられない時は、事故を起こす事で得る捕食の仕方。冒頭の映像と繋がるのもうまいですね。
自分をしっかりと維持しないと、獣そのものの姿になってしまう事を教えた映像。
そして最後は、衝動をコントロールできないと悲しい事になると身をもって教えていたようでした。
実際アレックスが殺した事にしたのかも知れません。
そして娘に託す父の言葉。
決してカニバリズムに取り憑かれた少女というだけで無い、実に面白い作品でした。
どうやったらこんなものを作れる? これを生み出したフランスの文化は...
どうやったらこんなものを作れる?
これを生み出したフランスの文化はどんなものなの?
人を齧る描写、指から滴り落ちる血を舐めるところ、肉が少なそうな指を歯を当てているところ、ぜんぶが新鮮だった。人を虎のような目で舌舐めずりをしフォーカスを合わせているところ、ゲイ文化、完全寮、姉妹のありかた、ムダ毛、新入生の扱い方全てが触れたことのない世界でドキドキした。ハラハラした。
主人公の少女は美しかった、最初から最後まで
少女の目覚め、人を食べることに快感(セックス)?を覚える?空腹を満たすために食べているのではないよね。すごい体験をした。
すげぇ話だ
開いた口が塞がらないとはこのことか
緻密に"リアル"でホラーなのにファンタジー
自分で書いていてもよく分からないがショッキングだったことは確か
芸術的だが決して観づらくなく
美しさは保ったまま流れるようにストーリーにも浸ることができる
青春というある種、暴力的で繊細な心の変化の表現がゾクゾクと感じてとれた
『チタン』を今年初めに観て良かったので過去作を、と鑑賞したかチタンを超える出来だった
これからも追い続けたい監督
少女の初めてと成長を描いた 何事にも初めてはつきもので人肉を食うや...
少女の初めてと成長を描いた
何事にも初めてはつきもので人肉を食うや恋愛、姉妹愛をヴァイオレンスで刺激的に描いている
結末で全部納得できた何故親と同じ大学なのかとか
血は血で洗うしかないみたいな
チタンでこの監督さんのことを知ってRAWを見たけど今後もっと刺激的な作品出てくると思うと楽しみでしかたがない
痒さからはじまる痛みの総合エンターテイメント
TITANEを観終え、ジュリア・デュクルノー監督が三部作と語る道程を遡ろうと決めた。結果、やっぱり痛かった…。
兎の腎臓を食べた後のアレルギーな掻きむしり、ブラジリアンワックスで皮膚が伸びる。そんな既知の痛みを描写するからこそ、カニバリズムな痛みもリアルに痛い。痛みの輪郭がはっきり見えるからこそ、姉妹の苦悩もしっかり伝わる。
ヴィーガンによるカニバリズム。ゲイとのノーマルなセックス。先輩らからの理不尽な圧力と、音楽による解放。観ていて脳が不安定になる要素は、TITANEの車とのセックス(そして妊娠)にも薄ら繋がるのだろう。カニバリズムの目覚めと性の目覚め。そしてカニバリズムを知って、家族を知る。
多少その描写は歪んではいるが、テーマは家族。王道です(痛いけど)。
解決策
最終的には娘を突き放すような父親のセリフと傷だらけの上半身、母親は見て見ぬ振りか、現代を生きるのが辛い吸血鬼を描いたジャームッシュの「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」の人肉バージョンみたいな??
陰鬱なホラー映画にでもなりそうな題材から、過激で刺激的にスタイリッシュな映像とグロい描写は直視出来ない悍ましさ、姉妹のタイプが違いながらも二人の存在感がギリギリに美しさ?を保っているようにも???
無秩序で無法地帯に思える大学内部、嘔吐の方法を助言するポッチャリな女の娘は鏡越しでの笑み、入れ歯を剥き出しにする老人、物語と関係の無い演出が良い意味でイチイチ気になってしまう。
ベジタリアン
お盆休みが退屈すぎてカニバル映画ばかり観ているうちの、2本目。
ベジタリアンが初めて肉を食べる
↓
目覚める
↓
姉も!?
↓
妹、セックスでなんとか自我を保つ(食人行為との置換)
↓
姉、ついに生きている人間を食べてしまいエンド
↓
母も!!?(セックスでなんとかry)
思いのほか衝撃的な展開で、グロいというより痛々しい場面が多くて、しょっちゅう画面から目を背けてしまった……
ベジタリアンという生き方、獣医という職業を選んでいるのは、せめて人間以外の動物の命だけは尊びたいという食人一族のエゴなのか???
犬を安楽死させるくだりで父親が言う「人の肉の味を覚えたから危険だ」と言うセリフが後々効いてくる。
ちなみに私もセミベジタリアンなのだが、たまに久しぶりに肉を食べると、肉の味の生々しさにギョッとすることがある。その動物が生きていた頃に使っていた筋肉などの食感(触感)がそのまま歯や舌に伝わる、というか。
その感覚を映画にしたような感じ。視覚的に共食いの感覚も重なって、かなり気持ち悪い。
余談だが、狼に恋した女性が生肉を食べたり奔放にセックスしたりした果てに野生に帰っていくドイツ映画「ワイルド わたしの中の獣」を思い出した。感覚的に似ている。
過去鑑賞作品
時間が無いもので、割りとご飯を食べながら映画を観る事が多いのですが…これは食事をしながら観る作品ではありませんでしたね(笑)
音楽をはじめ、映像や演出が凝っていますよね。
精神的にじわじわとくる感じがなんとも言えず、不快でありながら惹きつけられるものがある作品でした。
『サスペリア』や『ネオンデーモン』に通ずるものがありますね。
ラストを含め、ストーリーも悪くないのですが、それより何より主人公であるジュスティーヌ役のギャランス・マリリアーの演技が秀逸でしたね。
正直言ってイメージとしては決してプラスにならない役だと思いますし、それを受けただけでなく見事に演じ切っていたのには感服でした。
特別綺麗な方ではないですが、注目したい女優さんですね。
肉はおいしい
おもしろかった。
ただし血のりの雨が降る勢い重視のB級ジャンルものではなく、わりとマジメな青春ドラマ+お肉。
そこをなぜお肉にしたし…とは思うものの、案外カニバリズムって度を越した誠実さと結びつきがちなのかも。生きることそのものに直結するテーマだから?
とにかく初めて親元を離れて暮らすキャンパスライフに人喰い癖のある学生が混じったら…という着想がおもしろい。
ところで「君の名前で僕を呼んで」観た時に妙な既視感があって、よくよく考えたらこれのラストシーンだった。
ポップなランティモス
何年も映画を見ていると、どんなに突拍子もないアイデアにも、そう驚かなくなる。発想の出発点から、映画に仕上がるまでの内的プロセスに、ある種の納得を得られるのが普通。それができなかった。
新入生が上級生から受ける手荒い洗礼はわかる。カニバリズムもわかる。屍体愛好もわかる。生食の嗜好もわかる。SMもわかる。ただし、結局、なんでこんな話ができあがるんだろう、という点がわからない。ランティモス的だがランティモスよりポップだった。
たとえば、こんなシークエンス。
姉がジュスティーヌの陰毛処理をしようとして、鋏を持ち出すが、抵抗され誤って自分の中指を切り落とし、ショックで気絶する。目を覚ますと、そこにいたのは、自分の中指をむしゃむしゃと食べているジュスティーヌ。
ふつうならそこでギャーとなる。が、わたしたちが見るのは、治療してもらった姉と妹の口げんか。姉はケロっとしていて、突然、当たり屋をやって事故死体の血肉をあさる。
比較する必要も脈略も関係性もないのだが、わかりやすく言うためにあえて引き合いにすると、日本映画の残酷クリエイターが、斬/撲/絞/轢か何かの殺傷方法を、どうだすごい残酷だろと、どや顔でひけらかすのが、とても恥ずかしい。
この映画は、想定を越えた過激を扱っているとはいえ、その世界を際立たせているのは、ジュスティーヌらの生き生きした学園生活だ。
ベジタリアン少女の獣医学校入学初年度を描いた骨格に、ホラーの血肉がそなわっている。残酷もホラーも、それを表現するために、副産物にしているところがスマートであり、それが凡百の和製との決定的な違いでもあった。
加えて撮影が異様にアーティスティックだった。
新入生の通過儀礼は過剰だが、それがどこまで有り得るか、わからない。全体として架空と現実の境界があやふやだが、その虚構性もまたアーティスティックだった。
白眉は、エイドリアンの裸の上半身を狼の視線で追いながら、鼻血するジュスティーヌ。うまく言えないが、性の壊乱もSMも退廃も同性姦も血なまぐさい子宮感覚も、とうの昔に卒業してしまった先にあるヨーロッパの大人度をかいま見た気がした。が、残酷がすこしも沈殿しない。むしろ妙に笑える空気感が漂っていた。
この映画に男性がもぞもぞするのは、宦官にされてしまうのを想像するからだろう。食べようとしたら、いったいなんと食べやすい部位であることだろうか。後半はほとんどその描写がないことを祈りながら見ていた。
【異形の愛の表現の仕方に戦慄した作品】
フランス人女性監督ジュリア・デュクルノーの長編デビュー作品。
カニバリズムを主題にした映画で、このレベルを創出できたのは制作陣の気概と、この主人公を演じた少女ジャスティーヌ役の俳優ギャランス・マリリエの魅力であろう。
ジャスティーヌが入学した獣医学校の新入生を迎える不可思議なイニシエーション。それにより、目覚めたジャスティーヌの本性。
ジャスティーヌの両親、姉の姿も目に焼き付いている異形の愛を描いたフランス・ベルギー合作品。
<2018年2月5日 劇場にて鑑賞>
本能としてのカニバリズム
時折「カニバリズム」を性的な物と同様に扱いますが、これは本能として描かれています。
捕食する対象が人間であった
という少女とその家族の葛藤と受け入れが見事でした。
あのラストは秀逸。あれですべての伏線を回収し終えましたね。
初めて人を食べ、貪り喰ったあの演技は素晴らしい。
芸術的表現が秀逸
一人の少女がカニバリズムに目覚めるという物語だが、ドン引きするほどの描写は無く、そこら辺は安心。
本作は、一般人からすると共感できない内容だが、実際に本作が描こうとしているのはカニバリズムに対する否定や肯定ではなく、また、胸糞悪い描写の数々を描いたスプラッタームービーでもなく、一人の少女の性への目覚めを描いているドラマである。彼女の場合は天才的な頭脳で16歳にして獣医の大学に通うという表向きの面がありつつ、その大学での伝統であった「生のウサギの腎臓を食べる」という行為が後に「人肉を食べる」という癖に繋がっていったというものだ。誰もが通る、青春の真っ只中の失敗が、彼女の場合はカニバリズムだったわけだ。
それを、芸術的ともいえる描写の数々で美しく描いた作品が本作なのである。カニバリズムをテーマにした作品は中々えげつない描写の数々で圧倒される作品が多いが、本作は初めてそれを美しく描いた作品ではないだろうか。個人的に一つ一つのシーンが写真のような感覚に思えたが、感じ方は人それぞれなので、ぜひともそれは体感してほしく思う。
作品としては満足なのだが、主人公の通う大学にやや違和感を感じたのは私だけだろうか。狂気とも言える生活ではあるまいか。あれは。本当にあちらの国の大学がああいった感じならば絶対に通いたくない。本編の怖さよりもそちらの方が怖かった。
君の指を食べたい!
ベジタリアンの加計いに育った少女ジュスティーヌ(ギャランス・マリリエ)がカニバリズムに目覚めていく物語。どのシーンも衝撃的であり、印象に残る部分が多かったように思う。冒頭の車を意図的に事故らせるシーン、獣医学部に入学した新入生たちが集合写真を撮影する際に先輩たちが屋上から動物の血をぶっ加計るところが序盤のショッキングシーンだった。ホラーシーンではないものの、ちょっとクレイジーな姉アレクシア(エラ・ルンプフ)が立小便して、ジュスティーヌが真似をしてオシッコを足に引っ加計てしまうところも印象に残る。
とにかくクレイジーな全寮制であると思われる獣医学校の学生たち。新入生歓迎の意味で、テロリスト集団のような先輩たちが若い彼らのベッドのマットレスを外に投げ飛ばし、パーティに参加させるのだ。新入生の通過儀礼で最後の関門だったのがウサギの生の腎臓を食べさせられること。ベジタリアンのジュスティーヌも無理やり食べさせられ、アレルギー症状を起こして全身発疹だらけとなるのだった。しかし、その治った直後から彼女の肉への欲求が表面化してくる・・・これがきっ加計だったのだ。
中盤、姉が妹のシークレットゾーンを無理やり脱毛しようとしていたとき、ハサミで中指を切り落としてしまう。救急車を呼ぶものの、妹ジュスティーヌは姉が切り落とした指を食べてしまうのだ・・・あぁ、おぞましい。切り落とした指を犬に食べられてしまうホラー映画は見たことあるのですが、この作品では、姉の指を犬が食べたことにしておいて、哀れ飼い犬は安楽死させられてしまう。姉にとっても、妹が自分の指を食うなんてショックだったハズだが、不思議なことにそこからも姉妹の接し方は変わらない。姉もまたカニバリズムの獣だったのだ!
ホラーということで、これは観ずにはいられない!と臨んだ鑑賞でしたが、どちらかというと血の多いサイコ・サスペンスといった感じでした。“raw”という意味は“生肉”。しかし、『SAW』をリスペクトして付けられたタイトルのような気がしてならない。ホラー映画の特徴であるおバカな笑えるシーンも多かったように思う。ジュスティーヌの同室となったアドリアン(ラバ・ナイト・ウーフェラ)も、ゲイであるものの男だといった点や、彼がまたいい思いをしたり、最後には悲惨な目に遭ったりで個性的なキャラクターだ。そのアドリアンを殺して肉を喰らい、刑務所に入れられたアレクシアだったが、妹に中指を突き立てると同時に欠落した中指を見せるといったのも笑えるところだ。
ただ、ストーリー的に残念だったのは、両親も同大学を卒業して獣医をやっていて、大学での儀式も知ってると思われるのに、娘2人を同じ獣医学部に入れるという点が矛盾している。父親はカニバリズムじゃないと思われるけど、解決法を見つけてほしいとジュスティーヌに傷跡を見せるラストシーンはシュールだった。
不意打ちホラー
大学というものに対するイメージは、どの国でも似たようなものなのですね。勉強なんて二の次で、とにかく、あらゆるものを目覚めさせる場所のようです。
今作では、それがあまりに局地的な題材であり、受け付けがたい人も多くいるでしょう。前情報なしに観るのは危険な作品です。
とはいえ、自由の中で、いかに自分を律することが重要かを問う、すばらしい作品だったと思います。
主人公の「ジュスティーヌ」という名前から、サディストの名称の由来である、マルキ・ド・サド著の「美徳の不幸」を想起させられました。おそらく関連があるのでしょう。
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