「娯楽映画として良(後半ネタバレ)」検察側の罪人 Alsvidrさんの映画レビュー(感想・評価)
娯楽映画として良(後半ネタバレ)
率直な感想として「面白かった」と「勿体ない映画だった」の2点。
なお、わたしは原作を読んでいない。
ジャニーズとは言え、役者として実力ある2人で、双方わたし好みではあったが、どちらの良さも出つつも消化不良。魅力高い2人とシナリオのせいも相まって、どちらにも感情移入し難い。俯瞰で観ることになり埋没感がなかった。
この作品は冤罪と言う重いテーマで臨んでいる割に、メッセージ性は全く感じなかった。
映画通は「伝わらなかった」とか、よくメッセージ性を求めるが、「映画」はなにも文学や社会・倫理等の世界だけに開いている訳ではないので、娯楽性があれば高評価して良いと思う。
ストーリーは犯人を追い詰める単純な「刑事(事件)モノ」ではなく、とある事件(事象)に対して、キャラクター達がどう想い、どう対処していくか見せる作品。刺激的なセリフもあり、ストーリーは良かった。
見せ場になるシーンはそこそこあったのだが、イマイチ盛り上げる気がないようで、割とフラットに淡々と進行していくので、物足りなく感じる人も多いかと思う。
ただオチだけがどうしても許せなく、人によっては全部台無しと思う人もいるかもしれない。
総評としては「39」なんかが好きな方は楽しめる作品で、この手のジャンルが好きならそれなりに評価できると思う。
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以降、ネタバレ感想
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原作があるので言っても詮無いことだが、沖野が辞職してから、同じ土俵に上がれないため、直接対決できなくなり、以降見せ方に工夫もなく、そのまま話しがサラッと流れる。
クライマックスは展開だけで進み、主役を2枚重ねておいて、その盛り上がりも見せ場もなくなる。
なので観てる側の感情の置き所がなく、極端な言い方をすると「へぇ、そうなんだ」と人の話を聞いてる感覚。ストーリー自体は良かっただけに残念と言うか、勿体ないと思った。
ディレクションが好みと合わなかったとか、色々思うところはあるのだが、木村拓哉と二宮和也を同時にキャスティングした以上は妥当とも思えるし、やはりキャスティング自体が作品を潰してるんだと感じる。原作のあるこの映画では無理だが、この2人を生かすなら、真正面からバチバチ熱く戦わせる単純な映画なら良かっただろう。
オチは酷かった。松倉を殺す経緯どころか、ヒントすらが描かれていないので、「なんでよ」とツッコミしかできなかった。全く持って理解不能、途中寝てて飛ばしたかと思うほどだった。
よく「視聴者の想像に」なんて話もあるが、それには乱暴すぎる。もう行間を読むってレベルじゃなく、一小節書けるボリュームだ。
わたしが納得できない理由は以下。
パターン①最上が依頼した
⇒これだと最上の「人殺しは依頼しない」発言に矛盾しており、簡単に手のひらを返せる
人物ではないので、気が変わったのなら相当のシーンがあって然るべき。
ちなみに最上は「奴は人じゃない」なんて詭弁を弄すなんて思っていない。
パターン②諏訪部の独断
⇒これもあってはならないと思っている。諏訪部は己が同情で他人を救うことはなく、
あくまで最上の手腕と人間性に惚れ、彼の顛末を見たがっていたはず。
諏訪部が最上に感情移入してしまったのなら、少なくともそれを垣間見せるべき。
パターン③その他
⇒諏訪部の部下(雇った?)が動いたのか、もう意味不明で視聴者置いてきぼり。
これこそあってはならない。
オチが非常に不満だったため、悪いところばかり書いてしまったし、ケチを付けられる場面は他にも多々あるのが、全体的には良かったといえる。
・ジャンルが好みであったこと。
・キャスト陣の魅力・演技が素晴らしかった。
特に沖野の「キレ」シーンは最高に良かった。沖野自体も松倉も橘も。
整合性だとか、テーマだとか、いわば芸術点みたいなことを望むと微妙だが、娯楽映画としては十分満足できた。
Alsvidrさん
コメントありがとうございます。
原田監督は、歴史物や社会的大事件、長編小説を好んで映画化してますが、どれも「なんか残念」なんですよね。
きっと自信家で、自分が必要だと思ったら冷静に捨てる判断ができないんじゃないでしょうか。
次回作は『燃えよ剣』という史実に基づいた大作小説。
また、やらかしそうです。
予告編がいいんですよ、っぱり(笑)