「疑問の残る映画構成」検察側の罪人 石炉さんの映画レビュー(感想・評価)
疑問の残る映画構成
検察側の罪人のひとつのテーマにもある「ストーリー」という言葉にもう少し深みと重みを持たせてほしいと思いました。それぞれ出てくるキーワード的エピソードや背景に観客側が理解を深めきれないうちに終わってしまったように感じます…監督にとってこだわりのある部分だということだけしか伝わりません。
それとこちら側を置いてけぼりにしていく構成スタイル。それ自体は別にいいと思います、スルメ映画なんてものもありますから。しかしコレはそういうものではありません。重厚さを装っておきながらたまに入る笑った方がいいのかも分からないシーンが本当にいらない。観客を突き放すほど重苦しいことがやりたいなら休憩タイムなんていらないでしょう、息吐く暇もなく、観終わった後は疲労困憊で動けないぐらい突き抜けてほしい。
他の方も触れていましたがBGMはあれ本当になんだったんですかね。最後せっかく演者さんの慟哭で〆だったのに突然ポカポカ言い出してズッコケそうになりました。安っぽく感動モノ曲で終わらせたくない気持ちは分かりますけどじゃあソレは安っぽくないのかと問いたい。いっそエンドロール無音で「さぁ帰れ」みたいな、そういう潔さもないですし。
濡れ場ひとつ取っても意味が分からない映画は初めてです。あの二宮和也と吉高由里子に安っぽい濡れ場やらせないでほしい。絵面が気を削いで吉高さんの語りが全然入って来ず彼女の背景がイマイチぼんやりしてしまった印象です。もう暗転したまま声だけ録ればよかったのに。
全体的に演者さんがいいお芝居をしていたと思えるだけに今回は構成にばかり目が行ってしまい残念な気持ちです。検察側も悪人も本当に魅力的なキャラクターばかりで目を引いていたのに…、と歯痒さが残りました。木村さんの演技に少し注目して観ていましたけど、確かに「あぁ、いつもの木村拓哉だな」という感想ももちろんありつつ。けれど歳を重ねただけ今までのカッコつけた主人公気質ではない、正義でも悪心でもないどっちつかずのカッコ悪さを見せてくれていると感じられる素晴らしいものがあったと思えました。ほんの少し作り手が違う方向を向いてくれていればきっと良作になれたのではないかな、というのが総評です。
感想とは別に。某映画雑誌にて吉高さんが仰っていた「キスシーンのあと縺れ込んでカットアウトした際、二宮さんとその辺の壁とか椅子とか叩いたり蹴飛ばしたりしてそれっぽい音出してた」エピソードを観終わったあとで読みまして。なんかエラい盛り上がってんなとは思いましたがあれ演者がやってたのかよと笑いました。結構ドカバキ言ってて今思うとほっこりします。