「大作になり損ねた、もったい無い作品」検察側の罪人 beshさんの映画レビュー(感想・評価)
大作になり損ねた、もったい無い作品
鑑賞後の最初の印象は、非常にもったいないなということ。多重の正義がぶつかる作品を、ジャニーズ事務所の2大俳優が演じるという、これ以上ない企画。トップアイドル、タレントとして、それぞれの正義と戦い続けてきたであろう彼らが犯罪究明の正義を演じる本作は、彼らの実人生が重なる深みをもった名作になるのではないかと期待していた。特に、SMAP解散の騒動の最中、歪にも感じる正義を貫き通した木村拓哉は、本作の最上役にハマり役だったはず。確かに好演はしていたし、そうしたメタな楽しみ方ができる雰囲気は感じられる。が、幅広い層の観客動員を意識してコンパクトな上映時間にせざるを得なかったのか、小説のストーリーを詰め込むのにいっぱいで、 人物描写が足りておらず、感情移入や背景を味わう余白がなくなってしまった印象。原作にかなりの変更を加えた脚本らしいが、台詞の言い回しもいかにもな社会派小説のそれで、いくら役者がいい演技をしても違和感を感じてしまうのではないか。あるいは、様式を徹底追求した寓話にするのか、いずれにしてもはっきりしたビジョンが必要であっただろう。恋愛要素や、議員汚職の話しはタイトにして、木村拓哉、二宮和也の二人にフォーカスして描いてもよかったのでは。ジャニーズの2大スターに加えて、巨匠感漂う原田監督、雫井原作と、重厚な座組みなだけに柔軟な軌道修正が難しかったのか。
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