「貧困とそれに対する社会の無策への怒りを猫で包んだ作品」ボブという名の猫 幸せのハイタッチ ShunActUさんの映画レビュー(感想・評価)
貧困とそれに対する社会の無策への怒りを猫で包んだ作品
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イギリスには今年続編が公開された名作トレインスポッティングを始め、労働者階級の貧困を扱うジャンルがあるようで、本作もその一作です。とは言え 根は善良だけど金と食事と住処と両親の愛がないという観客の同情心を誘う主人公のため、主人公を徹底的にクズと描く前述のトレインスポッティング程には鑑賞にストレスがかかりませんし、より単純には猫がカワイイし、物語はハッピーエンドで口当たりは大変良いです。この作品が気に入ったら同類系の他の作品も見てみるのもイイと思います。
主人公の善意によってジャンキーの親友はヘロインの過剰摂取で命を失い、一方で拾った病気持ちの猫は共に貧困から抜け出すパートナーとなっていく対比は、人間より猫に価値を置く社会の酷薄さへの批判を含んでいるのでしょうし、またチラホラと登場する他の路上生活者がずっと貧困から抜け出せず、一方で主人公は善良な隣人とカウンセラーと自分を慕ってくれる猫という幸運によって貧困から抜け出していくというのも、単純に幸福になれて良かったね、以上に観客に訴えてくるものが有ります。或いは最後に自分を捨てたと思っていた父親が、実は主人公のことをずっと愛していた旨が明かされますが、一方で愛していた上であの仕打ちかよという思いも募り、これも単純に喜べない作りになっていますね。
この類型にはよく有ることでしょうが作品全体に通底するのは貧困とそれに対する社会の無策への怒りでしょうね。それを幸運にも猫と周囲の助力で抜け出す事が出来たエピソードで語ることで、重いテーマを軽く観客に味合わせる作品となっており、大変よろしい出来だと思います。
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