「曇天のオスロに漂う禍々しい空気感」テルマ よねさんの映画レビュー(感想・評価)
曇天のオスロに漂う禍々しい空気感
クリックして本文を読む
厳格なキリスト教徒の両親に育てられたテルマはオスロの大学に進学、両親の元を離れて一人暮らしを始める。ある日テルマは図書館で突然発作を起こして昏倒するが、それをきっかけにアンニャと知り合う。すぐに意気投合した二人だったがどんどんアンニャに惹かれていくことに抗えなくなっていくことに罪の意識を感じるテルマはたびたび発作に苛まれるようになる。テルマは意を決して病院で検査を受けるが、そこで自分の知らなかった事実を知らされる。
冒頭から立ち込める不穏な雰囲気、自身の感情と信仰心に引き裂かれそうになるテルマの葛藤に時折挟み込まれる喪われた過去のフラッシュバックが不協和音を奏でる様は非常に不快で、オスロを覆う曇天の空が鉛のように重苦しい。『キャリー』ほどの阿鼻叫喚はありませんが通底する禍々しさは悠然と横たわっていて、年頃の娘を持つお父様方の目には地獄の業火に焼かれる自身の姿を連想するかも。纏わりつくような意味深なカットがあちこちに雑然と散りばめられているのが気に入らない人も多いかも。個人的には冷徹な空気感は気持ちよかったですが、物足りないと思う人の方が多いと思います。
コメントする