劇場公開日 2018年3月30日

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「これは、パニック映画の最高傑作。金字塔だ!」トレイン・ミッション お水汲み当番さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0これは、パニック映画の最高傑作。金字塔だ!

2020年7月19日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、映画館

「トレイン・ミッション」という邦題を見た瞬間、だいたいの筋が想像できるでしょ。
……実はまったく違うのですが。

見た瞬間、「暇人以外は観る必要がない三流の模倣作だ」と感じるはずです。
……その予想を、良い意味で見事に裏切る作品なのですが。

邦題が凡庸なら、あらすじも投げやりに書き飛ばされているこの作品。
しかし、いやいやいや。
ほんとうに驚嘆しました。

突然失業した初老の主人公が家路に向かう寂しさ辛さ。この抑えられた名演技から映画が始まり、一瞬の隙もなく、観客はグイグイとストーリーに引き込まれます。

列車の中で巻き起こる、ジワジワと異常さが鮮明になりゆくサスペンスの恐怖は、ヒッチコックも軽く凌駕する怖さです。

そしてついに事件はパニックへ。これも往年のパニック映画「カサンドラクロス」を軽々と超えるレベルです。

だれか一人が死なねばならない時に人々が見せた、人間としての誇りと勇気と尊厳も。

最後まで予想もつかない見事なミステリー作品としての驚きも。

そしてエンドロールのオシャレなところまで。
手抜きひとつ、ありません。

もしも映画の評価点として★6個を選択できたなら、6個でも7個でも付けたいほどの作品でしたが、この凄さを、凡庸な邦題はまったく伝えられていません。

日本の映画宣伝屋の仕事がいかに手抜きで愚劣かを証明するひとつの例だと思います。

この凄い作品に対して、いったい誰がこんな馬鹿げた邦題を付けたのか。

もしも良い案を思いつかなかったのなら、原題をそのまま使うべきなのです。
なぜなら映画の制作者たちが、日本の宣伝屋の何十倍もの時間と愛情とを込めて考え抜いたタイトルなのですから。

宣伝屋は、この映画の原題を見た瞬間、だっせー、と思ったのでしょう。
しかし、その、一見、平凡すぎるタイトルをひねり出すまでに、どれだけ頭を絞ったか。
そして実際に原題がどれほど優れているか。
わかんないのかねぇ。
ほんと情けないです。

お水汲み当番