「光るものに集まる」コレット suiさんの映画レビュー(感想・評価)
光るものに集まる
コレット、火のように光り輝く女性。
ウィリーはその火の傍でちらちら踊る影だったのだろう。ウィリーの才能も認めるべきではある、彼の審美眼・慧眼の鋭さを誰も否定し得ないはずだ。それを忘れさせるほどの才能がコレットにあった。不勉強につき未読だが、彼女の作品を読んでみたいものだ。
確かに、彼は彼女を見い出し、彼女を育てた。基本的には彼女に味方していたし、彼女を愛していた。しかし、彼女が成熟すると、彼は不要になってしまった。二人の間に横たわる過ぎし日々、重ねてきた時間だけが彼らを繋いでいたのに、彼はそれを金に変えてしまった。
普通世に出れば、社会に交われば、人は疲れ擦り切れてしまうものだ。コレットには驚くべきことにそれがない。彼女が世間や他人に迎合することは決してない。尊ぶべき彼女の美徳はそこにあるように思う。いつまでも透明でいられる心。
バイセクシュアルである(レズビアン寄り?)、というのは彼女を修飾する言葉としてもはや小さすぎる。性に対して肯定的で真摯な女性だった、とでも言うべきだろう。彼女が異性だけを相手にしたとして、彼女の印象が変わるだろうか。そして彼女が同性だけを相手にしたとして。自分の欲求や感情に対して真摯であること、そういった態度が彼女を形作っている。
「私は生けるクロディール」の台詞が三度、それぞれ別人から出ること。コレットの小説の一節が読み上げられるシーンが幾つかあるが、少ないそのシーン同士の繋がりで、彼女の文章の癖や、成長が読み取れること(私の思い過ごしだろうか…少なくとも若い日の彼女は、「sweet」という形容詞が好きなようだ)。
ディテールも良かった。丁寧な映画だった。キーラ・ナイトレイは美しかった。