劇場公開日 2019年5月17日

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コレット : 映画評論・批評

2019年5月14日更新

2019年5月17日よりTOHOシネマズシャンテ、新宿武蔵野館ほかにてロードショー

“絶対に結婚してはいけないダメ男”を魅力的に演じたドミニク・ウェストに注目!

ウォッシュ・ウエストモアランド監督と故リチャード・グラツァーが脚本を書き始めたのは2001年。当初のタイトルが「コレットとウィリー」だったという逸話は、映画を見た人すべてが納得するだろう。

ベル・エポックど真ん中のパリを舞台にしたドラマは、セレブ・カップルとして知られたコレットと最初の夫ウィリーとの、一筋縄ではいかない関係に焦点を当てている。結婚当初、都会の香りをふりまく14歳年上の人気作家ウィリーと、ブルゴーニュ地方の田舎で育ったコレットは、先生と生徒のような間柄だった。それが劇的に変化するのは7年目、コレットがウィリーのゴーストライターをつとめた小説がベストセラーになった時だ。「売れる小説にするにはどうすればいいか」を嗅覚鋭くアドバイスするウィリーと、彼に命じられて缶詰状態で書かされるコレットの間には、悪徳芸能事務所の凄腕社長とタレントみたいな関係が出来上がる。その状況下でコレットがウィリーに求めたのは愛でも感謝でもなく、彼女が心血注いだ作品への敬意だった。が、ウィリーにはそれがわからない。彼の鈍感さにキレるコレットの姿には、「天才作家の妻 40年目の真実」のゴーストライター妻が重なる。

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ウィリーに寄せる尊敬と愛に憎しみが混ざり、失望へといたる。17年間の夫婦生活の中で変化していくコレットの心境と、その間の成長を演じきったキーラ・ナイトレイ。彼女の熱演はこの映画の大きなチャームポイントだが、それ以上の好プレーが光るのはウィリー役のドミニク・ウェストだ。プロデュース能力は天才的だが文才も商才もなく、道楽と快楽に溺れて身上をつぶす。絶対に結婚してはいけないダメ男を、そのダメな部分が妙に魅力的に見える人物として演じ、ナイトレイに負けない存在感を放っている。実際、ウィリーはコレットにとっての「必要悪」だった。彼がいなければ作家コレットは誕生しなかっただろうし、ウィリーの束縛から解かれた後の奔放な恋愛遍歴や、それを題材にした小説が生まれることもなかっただろう。ウィリーのダメさがコレットを強くし、覚醒させた。良くも悪くも、彼はコレットを創った。そこに興味をかきたてられる映画だ。

矢崎由紀子

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