「"敵を欺くにはまず味方から"。どんでん返しが好きなら、たまらない。」女神の見えざる手 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
"敵を欺くにはまず味方から"。どんでん返しが好きなら、たまらない。
ホント、最後の最後まで目を引き付けて離さない社会サスペンス映画。本作は、米国における銃規制法案の政治的駆け引きを、"ロビイスト"という職種をテーマに描いている。
ロビー活動は、特定の主張を有する個人または団体が、政府の政策に影響を及ぼすことを目的として行う私的な政治活動のこと(引用:Wikipedia)。日本ではあまり表立った活動は見られないが、米国ではロビー活動を専業とする会社同士がしのぎを削っている。
タイムリーと言ったら、あんまりいい表現ではないが、米ラスベガスでのホテル上層階からの銃乱射事件が起きたばかり。この映画で、米国での銃規制の推進派と、抵抗保守派の言い分がよくわかる。
"自動車という、命を預かる乗り物の使用には登録免許制度があるのに、なぜ殺傷能力のある道具の購入・使用の規制ができないのか"、という言い分はなかなか面白い。一方で、"包丁は殺傷能力があっても、誰でも買えるじゃないか。要は、(銃を)使う人を信じてあげるかどうかだけの話"という反論になるから、厄介だ。
主人公の女性ロビイスト、エリザベス・スローンの天才的な戦略っぷりが凄い。"ヒト"・"モノ"・"カネ"、"騙し"と"裏切り"、"説得"や"誘導"、"盗聴"や"意図的なアクシデント"・・・それって、ほぼ犯罪だろう、と思えるくらいの仕掛けを駆使する。"へぇー"の連続である。
ハメられているのか、わざとなのか。"敵を欺くにはまず味方から"。どんでん返し的な展開が好きな人には、たまらない作品である。
原題は、主人公の名前"Miss Sloane"。演じるのは、ジェシカ・チャスティン。オサマ・ビンラディンの捕縛・暗殺作戦を描いた「ゼロ・ダーク・サーティ」(2013)で主演し、アカデミー賞主演女優賞にノミネートされた実力女優の迫真の演技だ。
監督は、「恋におちたシェイクスピア」(1999)のジョン・マッデン。最近作で「マリーゴールド・ホテル」の2作品(2013/2016)があるが、キャリア25年でわずか10作品という寡作な人なので、そういう意味で観ておいても損はない。
(2017/10/20 /TOHOシネマズ日本橋/シネスコ/字幕:松崎広幸)