「戦時期の映画製作をめぐる笑いと涙と、その向こう側にある矜持を見た」人生はシネマティック! ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
戦時期の映画製作をめぐる笑いと涙と、その向こう側にある矜持を見た
このところ「ダンケルクの戦い」を扱った映画が相次いで公開されているが、本作は英国史を決定づけるこの転機を「映画製作」という特殊な視座から描いた異色作だ。第二次大戦下という押しつぶされそうな限定状況下で、一人の女性が脚本家としての才能を思い切り開花させていく様子は、逆に観ていて気持ちがいい。
このまま各々が持ち味を最大限に発揮する展開が待っているのかと思いきや、事態は少しずつ異なった方向へ。うまくいっている人生の流れを一瞬にして粉々に吹き飛ばす運命の残酷さや皮肉といったものを強調し、観客の心を戦時中に生きる人々の押しつぶされそうな胸中へと深く寄り添わせていくのだ。「まさか!」と思うような展開も、明日何が起こるか見当もつかない当時の人々にとってみれば、これこそがリアル。それでもなお心を奮い立たせて前を見つめるヒロインの姿に、彼女が身を投じた「もう一つの戦争」の切実さと覚悟を見た思いがする。
コメントする