「【一線の引き方】」孤狼の血 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【一線の引き方】
これは、ヤクザ映画というより、実は刑事ドラマではないかと思う。
戦後、暴力団は必要悪のように言われる時期もあった。
ずっと昔、亡くなった祖母が、「やくざって何?」と聞く僕に、困ったように、あれこれ説明した後、「普通の人には悪いことしないから大丈夫」と付け加えていたことを思い出す。
あれこれ説明されたことは忘れたけど、付け加えたところは覚えていて、後々「やくざは堅気には手を出さない」という意味だったんだと思い返した。
こうした線引きがあったからこそ、ヤクザ映画が人気を博した時代もあったのだと思う。
しかし、バブルの時代になると構成員が増大し、違法薬物への関与に加え、地上げ行為の中心的存在となったことで資金力がつき、島というのか地域を跨いだ抗争に発展することも多くなり、社会不安を煽るとして、1992年の暴対法の施行に繋がった。
この作品は、その暴対法前夜に、
大上という刑事が、
●暴力団同士の余計な抗争は避ける、更に、
●一般の人間、つまり、堅気には手を出させないという、
2点のみから、法的な解釈とは関係なく自らの行動に白黒の一線を引き、行動する姿が迫力満点で描かれている。
確かに、思い返すと、関西の暴力団組織が、東京にも進出か?とか、〇〇系暴力団が報復みたいなニュースが飛び交っていた時期だし、それだけ東京を中心にした大都市圏の地価の高騰は魅力的だったのだと思うし、都市部を中心に全国各地で暴力団の抗争が勃発していたことは想像に難くない。
そして、大上の自らの命を、自ら守る術が、警察官僚と暴力団の癒着の実態把握というのは、こうした事実を描いた映画が複数あることからも、リアリティが増す気がする。
また、「孤狼の血」が秀逸なのは、大上の一貫した行動様式の裏に潜む人間臭さが、物語の進行とともに観る側の想像を掻き立てるところと、日岡の僅かずつだが確実に変貌していく様がきめ細かく描かれているところだと思う。
役所さんと松坂さんの演技が光るところだ。
そんなことで、僕は、この作品は、刑事ドラマではないかと思うのだ。
とにかく、あれこれ考えるより、ストーリーに惹きつけられる映画だ。
他のキャストも抜群で、真木よう子さんは相変わらずだが、阿部純子さん演じる薬剤師の桃子がグッとくる映画だった。
結構、キーパーソンだと思う。
桃子が大上の墓参りで日岡にばったり出くわして、「ただで、わたしのおめこおがましてやったき、ええじゃろ」って明るく言い放つ姿には、何とも言えず、唖然として笑ってしまった。
これから、「孤狼の血 LEVEL2」完成披露特別上映会に臨みます。
> 実は刑事ドラマではないかと思う
なるほどですね〜。このレビュー読むと、そうかもなぁと思いますね。こうやって、人の感想を聞けると、映画って、倍、面白いっすよね!!