「忘れてはならないモノづくりの原点」空飛ぶタイヤ みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
忘れてはならないモノづくりの原点
ここまで本格的な社会派作品だとは思っていなかった。池井戸潤原作だったので、派手で熱い展開の作品を予想したが、トラック脱輪死亡事故の真相に迫った見応え十分の硬派作だった。
本作の主人公は、運送会社社長・赤松徳郎(長瀬智也)。横浜で彼の会社のホープ社製トラックが脱輪死亡事故を起こす。赤松の会社は、整備不良を疑われて社会的信用を失い、会社経営は窮地に陥る。赤松はホープ社製トラックの脱輪事故が散発していることを突き止め、その構造的欠陥を立証するために独自調査を開始する。そして、会社や家族を守るため、自らの正義を貫くため、ホープ社に立ち向かっていく・・・。
池井戸作品ということであり、結末は予測できる。しかし、実際に起きた事故を題材にしているので、淡々とはしているが、リアル過ぎる展開の連続であり、緊迫感が途切れることが無い。画面から目が離せない。
事故を巡って、主人公側、ホープ社側、の双方の対比が鮮明になっている。ホープ社側は、社会正義を意識しながらも、会社にしがみつかざるを得ない企業人の苦悩と葛藤が、ディーン・フジオカ、ムロツヨシ等の生々しい演技で見事に表現されている。主人公側は、会社経営の危機にありながらも、社会正義を貫こうとする主人公と仲間たちの絆に胸が熱くなる。長瀬智也の自然体ではあるが迫力ある大人の演技が光る。
私は自動車産業に身を置く立場なので、本作はドキュメントを観ている感覚がした。本作を観終わって、主人公の姿勢は、モノづくりの原点であり、どんな事が起きても、真摯であること、逃げないこと、諦めないことだと、改めて痛感した。
本作は、トラック脱輪死亡事故を通して、社会正義をテーマに、多士済々の登場人物が織り成す人間模様を描いた群像劇である。エンタメ作品ではないが、モノづくりの原点とは何かを示唆している良作である。日本の安全神話が崩れ去ってしまった今だからこそ観るべき作品であろう。
おはようございます。
同業なのですね。
”主人公の姿勢は、モノづくりの原点であり、どんな事が起きても、真摯であること、逃げないこと、諦めないこと”
この言葉、私も時折現場で使いますよ。(特に品質系)では、又。