アイリッシュマンのレビュー・感想・評価
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4時間近い長さを実感しない濃密な作品。
やたらと長い上演時間に驚きましたが、内容は「チームスター」という愛称で知られる全米トラック運転組合を実名で描いた、「カテゴリーとしてはマフィア物」の映画です。
全米のほとんどすべての貨物はトラック運転手が配達しているわけで、その100万人のドライバーが団結すれば強力な交渉力を得られるぞ、という、もちろんそれ自体は正しい認識ですが、そうやって暴力的に得た交渉力と、莫大な年金資産とを、ラスベガスのカジノ建設をはじめとする裏社会にどんどん融資してきた組合ボスとその凋落。
……ってな背景知識を得られたのが私としては最大のメリットでした。
映画エネミー・オブ・アメリカで何の説明もなく「労組に対する暴力・恐喝行為」が冒頭近くで出てくるのですが、ああ、こういうことだったんだなとスッと腑に落ちた次第です。
アメリカ人には常識中の常識なのでしょうけど、私はまったく知らなかった世界が、世の中にはまたまだたくさんあることを知りました。
日本国内でも、労組なんだか暴力団なんだか区別のつかない組織の悪行が、たまに報道されますけど、全部実名を使い、そういうものの危険性をエンタメとして真正面から告発するような作品が、はたしてどれぐらいあることやらと考えさせられた次第です。
ぐいぐい見せる絵巻
国内の映画レビューサイトは5点満点をつかっている。
個人的に気になるのだが、ほとんどの映画が3.5の近似値になる傾向がある──ような気がしている。
一般庶民なので、世間が映画に付ける点数は参考にするが、じぶんの採点には自任はない。
よくIMDBの点を見る。あっちは10点満点なので、わたしはこっちで付けられた点を2倍してみたり、あっちに付いている点を2分の1してみたりする。日本の点が甘いこともあれば、辛いこともあるが、たいていは甘い。
わたし自身、べらぼうに羽振りのいい採点者である。
映画レビューサイトにおいてもっとも信頼のおける勘所は採点者の数だと思う。IMDBはその分母が大きいゆえ、ほぼ世評であると判断できる。
映画を観る前や観た後で、いちばん知りたいのは、偏向のない世評である。
ただしIMDBとはいえアメリカ母体なので、採点者のすくない映画もけっこうある。だがメジャー映画はかなり参考になる。7が佳作のK点だ。
ところが国内レビューサイトでは、ほとんどが3.5の近似値になっているゆえ、有り体に言うなら、良いのか悪いのか、よく解らない。IMDBにおける7のようなK点が、読めないし、個体差もけっこう薄い──と思う。
とても小市民な観点だが、わたしは小市民なので、気になる。
アイリッシュマンを観るまえ、IMDBを見たら、8.6を付けていて──瞠目した。ぶっとびの高得点である。ジョーカーやボヘミアンの初期値を超え、既に採点分母も大きいゆえ、存在のない子供たちも超えている。
期待が膨らんだ。
映画の点数には、そういう解りやすさがほしい──という話。
フランクの長い来歴を扱っているが、さいきんの映画には老若をも往来できるテクニックがあり、現況実年齢のデニーロやペシがどんななのか、皆目わからない。50年もの月日が流れているが、その経年はほとんどシームレス、壮年から老境まで違和がなかった。
フランクとかれがたずさわった権力闘争の興亡を描いている。フランクは一個大隊ほどもの人を殺しているが、迷いはない。登場人物達は皆、いついつ撃たれて死ぬと添え書きされる。愁嘆がばっさりとはしょられ、時代が変遷する。実話らしいが特に知識はない。
いったい彼を駆り立てたものは何だろう──と考える。家族を養うため。生活を豊かにするため。ラッセルとの兄弟の契りのため。恐怖心ゆえ。じぶんを守るため。いろいろあるだろうが、根幹には自尊心──出自に対する矜持があると思う。
建国を支えたアイルランド人、アメリカの有名人には驚くほどアイルランド移民/その子孫が多い。国を捨ててアメリカに渡ってきた移民にとって、簡単に言えば──なめられてたまるかという気概があったのは──想像に難くない。そんなタイトルどおりのThe Irishmanを、イタリア移民のスコセッシが、半世紀も一緒にやってきた強面の仲間たちと楽しげに活写している。
島国のわたしがその真髄を理解したとは言えないかもしれない──とは思う。
ただし落とし所は老境にある。手下たちをくるくると円転させていたラッセルが半身不随で無力な老人になって刑務所にいて、やがて死ぬ。フランクは両杖で娘から見放されている。闘争に暮れたとはいえ、かれには、なにひとつ残っていない。そしてほかに誰も生きていない。
Everybody's dead,Mr. Sheeran. It's Over. They're All gone.
悪党たちの末路にマフィア社会と隣合だったスコセッシ自身のオリジンをかいま見ることが出来る。
豪華
おじいちゃん達の本気の遊び
やっと待ちに待ったアイリッシュマンを観れた。
コロナの影響で子どもたちの学校がなくなり、
夜遅くまで起きてるからゆっくり観る事が出来なかった。
やっとゆっくり観れたのだけど…
長い。好きな人はあっと言う間と言うけれど、
はっきり言ってクソ長かった。
僕が感じたのは、Netflixが生きてる映画史の伝説達に
好きな事を好きな時間でやってくれ!と提供した遊び場で
おじいちゃん達が本気で遊んだ。そんな印象でした。
スコセッシの中では「カジノ」が一番好きなのだけど、
テンポもあの子気味良さはなかったし、
一番引っかかったのは、80歳近いおじいちゃん達に
30代40代は無理があるって事。
ちょっとコントみたいだった。
若い時の言葉や行動が伏線になってて、
その因果が返って来たり
若い時とやってる事が変わらなかったり、
ホッファが主人公を信じてドアを開けてホテルに泊まる
シーンがラストに重なってくるのはグッと来るけど、
可愛げを感じてしまった。
おじいちゃん頑張れ!と。
あのイケイケだったジョーペシが一番大人。
時代の流れを感じました。
アカデミー賞の基準は知らないけど、
助演男優賞はジョーペシでは?
大作
歴史的な知識がないと映画の内容が理解出来ないという作品は多い。
事前にアメリカの歴史を知っておくとさらに理解が深まると思う。
逆にここから歴史を勉強するのもあり、か。恥ずかしながら。
長い作品だったが、まだまだ語り尽くせなのがアメリカの裏社会の歴史なんだろうと思う。
なぜデニーロがあそこまで信頼され、忠誠を誓ったのかよくわからないが。
娘と生涯決別したというのも人間くさくていい。
最近のCGテクノロジーは凄い
やっと観れた映画「アイリッシュマン」
昨晩、3時間半の長尺をNetFlixで堪能しました。 思えばスコセッシ監督「TAXY DRIVER」に15歳でトラウマ的な衝撃的邂逅。それ以来、デ・ニーロとスコセッシ監督 を追い続けて今に至る私。スコセッシ組の名優大集合でも肩肘張らず楽しんでヤバい話を粋に撮り上げたのが実にクール!ブラボー👏おそらく原作が主人公フランク・シーラン(=アイリッシュマン:裏の顔はマフィアのヒットマン)の晩年に残した自白的回想録なことと当時のマフィア関係者も多くは他界し屏の中の犯罪関係者も減った。真相究明が進む中、語ることがタブーだったケネディ兄弟暗殺についても同様に存分に描くことの危険度が下がってきたからこそ実現した作品だと思いました。しかしタメ息が出るほど素晴らしいのは、演出も演技も脱力こそが達人の領域だということを見せつけたスコセッシ監督の手腕です。昨年度アカデミー賞作品賞最有力候補。(結果はダークホース「パラサイト」が受賞)
ギャング殺し屋秘録
Netflixで鑑賞(吹替)。
ギャングの大物、ラッセル・バファリーノの右腕として活躍した伝説の殺し屋「ジ・アイリッシュマン」ことフランク・シーランの実話を元にしたギャング映画大作にして、第二次大戦後の現代アメリカ裏面史を描く骨太作品でした。
マーティン・スコセッシ監督の作品は「ウルフ・オブ・ウォールストリート」しか観たことありませんでしたが、それまでのフィルモグラフィーの知識があったので、本作が監督の集大成的作品であると云うことは容易に想像がつきました。
それはキャストからも明らか。ロバート・デ・ニーロ、ジョー・ペシというスコセッシ作品の常連に加え、アル・パチーノも出演しているという豪華さ。レジェンド俳優ばかりのオールスターぶり…。あえてア〇ンジャーズとは書かないよ(笑)。
淡々として、ブラックなユーモアを交えながらも、どこか哀愁の漂う作風だと思いました。ギャングたちの駆け引き、入り乱れる思惑、野心渦巻く裏社会の人間模様は複雑怪奇にして、最後に彼らが得たものを考えると、虚しさを抱かざるを得ませんでした。栄枯盛衰、諸行無常の理…
マフィア映画の極み
冗長だった
面白かったのだが
面白かったのだが、長い、とも感じてしまうけれど、やはり見応えのある作品だったと思う。
ほんとにそんなに沢山殺してたら、バレるだろ、と内心思いつつも、なんだか観ていて面白い。
心に残る映画。
3時間半は一瞬
デニーロもアルパチーノも最高。
例のCGメイクも自分は全然気になりませんでした。
物語の肝になるのが、ラッセルとジミーの間で板挟みになるフランク。
パーティで二人の交渉決裂を遠目で見ることしかできない自分。最期ジミーの説得を試みるも上手くいかず、自分で引き金を引くことになるフランク。この展開は心を抉られます。
この映画が特異な点は逮捕後の没落劇。
獄中でのラッセルの老い、棺を値引きして買うシーン、最期まで分かり会えなかった娘、周りが死に自分だけ生き残ってしまった孤独と絶望をこれでもかと長尺で映している。
普通この手のシーンはラスト一瞬で済ませてしまいそうだが、スコセッシはこここそ描きたかったのだろうか。
長いと言う人もいるが、自分の体感は最期まで一瞬でした。
ギリギリ劇場で観られて良かった。
【所属する”組織”に対する忠誠、自らの存在意義の示し方・・。”デ・ニーロ スマイル”を大画面で見れる僥倖感にひたすら浸る豊饒な時間を堪能した作品。】
”全米トラック運転手組合”に所属する一人のアイリッシュ系ドライバーが、知恵と、胆力と、人間観察の鋭さで、労働組合の”表と裏”の活動に深く関わる姿を、1970年代アメリカの政治、事件と絡ませて描き出す。
1960年から70年代のシーンはスコセッシ節炸裂である。
彼の体内に流れる、”イタリア移民の血”が画面のあちこちに描かれているのだ。
ジミー・ホッファ(アル・パチーノ)を始め、ほぼ実在の人物を次々に登場させながら、物語は1950年後半から1980年初頭までのフランク・シーラン(ロバート・デ・ニーロ)の生き様を重厚に描く。
観客に分かり易いように、ワンシーンのみ出演人物の末期がテロップで
流れるところも斬新である。
ご存知のように、”全米トラック運転手組合”はジミー・ホッファが委員長に就任後、マフィアとの関係性を深め政治にも圧力をかける程の存在になっていく。
(今作では、ラッセル・ブファリーノ(ジョー・ペシ:有難うございます。出演してくれて・・。)が代表的存在として、重要な役を担って登場。)
冒頭の老人ホームで語るフランク・シーランの姿から、一気に1950年代にシーンは飛び、ラストは再び老いたフランクシーラン(しっかりと、、”全米トラック運転手組合 チーム・スターズの帽子を被っている・・。”)にFBIが問いかける姿及び彼が愛娘に会いに行くも・・のシーン、告解するかと神父に優しく言われても微笑むシーンで幕を閉じていく・・。
この両シーンがあることで、今までのスコセッシ作品とは趣が違う作品と思ったのは私だけではないだろう。
(それにしても、30年間の人間の姿の変容を表したCGには、驚く)
フランク・シーランは何故に、ジミーに対して”ペンキ屋”の仕事をしたのか?
様々な意見はあるだろうが、私は
”自らが命を掛けて守り、育ててきた愛着ある組織”
を守るため。そして、それが盟友ジミーに対する敬意だとフランクは考えたのでは、と思った。
が、結果的にジミーと親しかったペギーとは絶縁状態になるし(娘は嗅覚が鋭いのだ・・)、組織自体も時代の流れに逆らえず、穏当な組織になっていく。(映画では描かれていない、が老いたフランク・シーランの姿を見れば分かる)
<アメリカ近代史と巧みにリンクさせながら、実在の人物をメインキャストに据えつつ、アメリカの暗黒部分の時代の流れに巻き込まれた人々の生き様、死に様を冷徹に描いた作品。
名優たちの姿を、大スクリーンで観る僥倖を味わえた実に豊饒な時間を堪能した>
ー 今作は、有る方の素晴らしいレビューを拝読して以来、ずっと観たかったのだが、時間的、物理的、地域的な制約のため、鑑賞時期が随分遅くなってしまった。が、それが良かったのかもしれない・・。ー
老齢の役者陣の演技合戦
スコセッシの集大成とも言うべきアメリカ黒社会を描いた3時間半の大作。
主人公が回想する現在と、デトロイトへのドライブ、それに至る経緯という3つの時制がからまり、たくさんの登場人物がいることから、人間関係を理解しながら筋を追うのにちょっと苦労する。
淡々とした描写で、カーチェイスや銃撃戦といった派手なシーンはなく、マフィアの実録物といった雰囲気。
デ・ニーロの顔の演技、ジョー・ペシの貫禄と凄み、そして何よりアル・パチーノのカリスマさといった、老齢の役者陣の演技合戦が凄い。50年の歴史を同じ役者が演じるために、CG処理で若返らせたとか。
事件後の主人公の姿と悔恨を時間をかけて描いたことに、スコセッシのメッセージを感じる。もう一度見返したら、この映画の良さや面白さがもっとわかるだろう。
大俳優の名演技
「人は歳を取らないと、時間の早さに気が付かないものさ」
最新のCG技術で往年の大名優たちを若返らせ、とんでもないギャング映画を作ってしまったんだなぁ。
3時間20分の映画は、せっかくのNetflixなので3回に分けてみたのだけど、
主要キャストが濃いので、迷子にならなくて済む。
そしてこの原作自体が事実を基に作られたとはいえ、
実在の人たちはもう全員亡くなっているので、
最後のひとりになったフランクの回想で物語が進む。
最初にデニーロがこの話をスコセッシに持ち込んで、
実現までずいぶん掛かったようだし、
そこから制作途中でスポンサーが消えたりと、いろいろとトラブルが続いたようだけれど、
完成されて本当によかった。
これだけの潤沢な予算で作れてよかった。
いずれ、ロバート・デニーロも、アル・パチーノも、ジョー・ペシも逝く。
彼らが体を振り絞るように長い年月のキャラクターを演じる。
顔はCGで化粧できても、振る舞いや動きはそうはいかない。
すごいな、やっぱり大名優たちは本当に格が何段もちがう。
またゆっくりいずれこれを観よう…。
ただただ、お見事でした。と言いたい。
後からズシリとくる重量感
デニーロ、アルパチーノ 、ジョーペシが出演するスコセッシ作品とあれば観ないわけにはいけないけど、なかなかタイミングが合わず、2月半ばにようやく鑑賞
作品は約3時間半、これぞスコセッシというクラシカルなマフィア映画の王道だが、事件物ではなく、しがない殺し屋の半生を綴ったもので途中はやや退屈してしまった。
鑑賞後に振り返ると、現代社会の会社人に通じる点も多く、後からズシリと内容の重さを感じ始める。長年の友人に銃を向ける前の葛藤とその後の後悔を演じるデニーロは名職人の料理から滲み出るダシの旨味のような名演。ジョーペシも存在感ある演技で渋く脇を固める名作だと思う。
ただ、これまでのスコセッシ作品やデニーロの作品を鑑賞したことがなければあまり理解できない作品かもしれない。
驚異的。鮮度が保たれてる。
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