劇場公開日 2019年11月15日

「仁義を亡くして視認できない“苦行”を背負った一人の男」アイリッシュマン 平田 一さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0仁義を亡くして視認できない“苦行”を背負った一人の男

2019年12月3日
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鑑賞方法:VOD

怖い

興奮

知的

圧倒的名作だった。
傑作では到達不能の本気の名作映画だった。

アメリカの闇の歴史に関わっていた一人の男、フランク・シーラン、またの名を“アイリッシュマン”のドラマ。正直衝撃的な場面がいくつもいくつもやってきて、でもド派手に見せはせず、即物的に見せていく。強烈に刻むために、淡々と紡ぐ手腕。多分マーティン・スコセッシにしかできない表現だと思う。

一番はホッファの末路。精神的苦悩と迷いが溢れそうになっているのに、表情では決して見せないシーランの因果な才能。よりにもよって尊敬し、唯一の友を殺したのに、感情と身体と思考が切り離せない過酷な状態。あんなに見えない視認できない苦行ってのは初めて見た。デ・ニーロが凄いってのは勿論だけど、だけじゃない。スコセッシと負けず劣らず素晴らしかったパチーノ、ペシ!あの人たちが素晴らしいから、デ・ニーロも素晴らしかった。相乗という言葉が、これほど似合うの久々だった!

アメリカ史に疎い身なのにこれほど没頭させられるのは、とても嬉しい驚きだったし、何よりスッゴく幸せだった。Netflixの株を上げて、パラマウントは逆に下がった。少なくともボクはそういう認識だった。勿体ない!

本年度ベストなんかじゃ『アイリッシュマン』には足りない。それ以上の称号でないと、この映画は語れない!!!映画ファン、絶対見ろ!!!

平田 一