劇場公開日 2019年11月15日

「アメリカンマフィア映画の最終章」アイリッシュマン moviebuffさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5アメリカンマフィア映画の最終章

2019年11月20日
PCから投稿

ゴッドファーザー、ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ、グッドフェローズ、そういった一時代を作ったアメリカンギャング映画の歴史の最終章を見ているような気がした。過去のアメリカ映画史に思い入れがある人の方が、この映画の評価はより高くなると思う。キャストの年齢を考えても、彼らにとって、これが本当に最後の大作になるだろう。そしてその物悲しさが、この作品の後半の展開とも重なり合ってくる。

デニーロの演技は過去の焼き直し感が若干ある点と、CGメイキャップを使っても体型と動きが70代のままなのが気になるが、中盤、後半の実年齢と重なるあたりからは、彼の演技が主人公の悲劇性を見事に体現している。ジョーぺシは過去のまくしたてるような早口の彼ではないが、饒舌ではない、その静けさが逆に不気味。そして、驚くべきはパチーノの現役感。一番高齢なのにあのバリバリの枯れなさはどうだろうか?本当に素晴らしい。

グッドフェローズと比較すれば、即興性や編集的な驚きは少ないかもしれない。ただ、そのゆっくりとしたテンポとギミックのない編集は、作品のテーマ性とマッチしており、この映画の世界にじっくりとひたり、味わう事ができる。これが彼らにとって最後の競演になるだろうという事実をかみしめながら。

いい筋があって、いい役者がいて、それをじっくりとカメラが追う。それだけで、見ごたえがあるということ。本来の映画の醍醐味を味わえた3時間半だった。

moviebuff