「予告・宣伝のミスリード?」エジソンズ・ゲーム とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
予告・宣伝のミスリード?
だまされた感で、評価が低くなる。…勘違いした、無知な私が悪いのだろう…。
原題『電流戦争』。
電気を各地域・各家庭・各事業所に送る方法・受注のシェアの戦い。
後半の入札風景を見ると、エジソン側とウェスティングハウス側以外にも、入札業者がいるようだが、映画ではこの二社の覇権争いに絞っている。
直流形式がいいのか、交流形式がいいのか?コストの問題…。安全性の問題…。
形式の利点・欠点にも触ってはいるが、性能の議論は置いておいて、足の引っ張り合いが描かれる。
否、足の引っ張り合いではなく、映画では一方的にエジソン氏がけしかけるように見える。だから『エジソン(がしかけた)のゲーム』なのか?
直流・交流と聞いて、小学校での、豆電球を、縦に乾電池を繋げた実験、並べて横に繋げた実験が頭に浮かびながらの鑑賞(合っているのか?)。その程度の知識で観たので、なんで直流式は安全で、交流式では死ぬのかすら理解できない。電流が心臓等を通ってしまえば、落雷でだって死ぬじゃないか…。
それでも、発明したものが勝手に使われる悔しさとか、
失敗に失敗を重ねて、やっと完成したものを見られる瞬間(才能)への憧憬とか、
共感できる部分もある。
けれど、ん?
エジソン氏だって、他の人が発明した白熱電球を改良しているじゃないか。だのに、何、あのこだわり…。
ウェスティングハウス氏だって、空気ブレーキを発明しているじゃないか。その時の気分はどうだったんだろう?エジソン氏と”発明”にかける想いを語り合いたかったのかな?
高潔な信念を持っていたエジソン氏が、ウェスティングハウス氏に追い詰められて、次第になりふり・信念構わずと落ちていく様が描かれていたのか?
後で筋を思い返してみるとそんな風にも思えるが、鑑賞中はそんな風にも思えず。
奇人変人伝説も、エピソードとしては取り入れられていたし、カンバーバッチ氏も表現していらしたが、傲慢さだけが印象に残るだけで、人情味あふれるエピソードとかもあるけれど、人物像がネット記事の寄せ集めのようだった。
ウェスティングハウス氏も、途中、破産の危機に見舞われて、手を打つ。
その攻防が、煽っているような描写なのだが、今一つ伝わってこない。
隠し玉であるはずの、テスラ氏やインサル氏が活きてこない。特に、インサル氏はいなくてもいいくらい。
妻に支えられたウェスティングハウス氏と、妻を亡くしたエジソン氏。
相棒を亡くしたウェスティングハウス氏と、後半唐突にエジソン氏の相棒に格上げされるインサル氏。
その関係性がうまく織り込まれていない。
さらに、映画の印象を混迷させてくれるのが、ポスター・予告。
ポスターの「天才発明家VSカリスマ実業家」そうか?
テスラ氏。エジソン氏をしのぐ天才と言われつつ、映画の中では常にお金に困窮している。なぜ?実績を汚い実業家たちに吸い取られているの?
エジソン氏。発明王ではあるが、映画では発明家としての姿より、実業家としての算段が描かれる。
ウェスティングハウス氏。実業家としての側面を強調して描かれるが、上述のように、発明もしている。
事業家としての格の違いという点では、この三者の対比が興味深く描かれている。
予告にある「未来を照らすのは誰だ?」に、明るい未来だけを期待した私が悪いのだろう。
クライマックスの画面分割からすると、決して、明るい未来だけを描きたかったのではないのだろう。
史実の列挙とはいえ、この見せ方に、気分が悪くなる。
そして、とってつけたような、気分直しのデザートとも言いたくなるような映像、栄誉への哲学と後日譚が流れ、監督は、この映画の製作者たちは何を撮りたかったのかと唖然としたまま、映画は幕を閉じる。
しんみり、温かな気持ちで締めたいのに、上述の画面三分割の意図が棘のように突き刺さって、ざわつく。もやもや。
それでも、映像が凝っていて目が釘付け。
俯瞰した映像の多様。
コマドリしたフィルムの映像。-キネトグラフを発明したエジソン氏へのオマージュ?
暗闇から、ろうそくの薄明るさから、電気の光が煌々と輝く場面の見せ方。
それになりより、当時の風俗。
うっとりするような煌びやかな衣装に、調度類。
ああ、蝋燭の灯の元だから、ビーズとか光沢のある生地が流行ったんだと納得。
質素なれど、温かみのある衣装に、調度類。
列車のコンパートメント。
なにより、子役たちが天使。いたずらでさえ許せてしまうほどかわいい。
物語のエグさは頭から飛んで行ってしまい((笑))、遊園地にいるような錯覚に陥る。
役者も、シーン・シーンは見事な演技。(特に、親子・夫婦のエピソード)
けれど、なんだろう。スッキリしない。消化不良。
特に、『イミテーション・ゲーム』を意識した宣伝が、先入観となって邪魔をする。勿体ない。
唯一、ウェスティングハウス氏の安定感が印象に残る。
東京国際映画祭2020 野外ステージにて鑑賞。
映像と音がズレていて、そこも映画に入り込めない一因だった。
無料鑑賞で文句を言ってごめんなさい。