「身につまされる家族の物語。」ミッドナイト・バス 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
身につまされる家族の物語。
高速バスとはうまく思いついたものだ。新幹線とは味わいが違う。まるでかつて上野から出ていた夜行列車のような、どことない寂しさがある。
人と比べて不幸とまでは言えないが、だからと言って後悔してないと言い切れないこれまでの人生ばかり。まるで"高速バスに乗り合わせる"ように"家族として関わる"。切っても切れない親子の縁、嫌いで別れたわけではない元夫婦、踏み切れない結婚、、、思いを伝えるのが下手な優しい人たち。物語を彩るキャストが皆良かった。特に、本人は自覚がなさそうだが息子の怜司は、すべての人間関係の鎹となる存在であった。
初日舞台挨拶あり。
劇中、とても穏やかで物静かで誠実な役を好演した原田泰造はやはり、言葉が少なくてもやけに可笑しい素の一面がにじみ出てて、見ているだけで可愛い。あれは劇中だけに限らずモテるわ。
長塚京三があるワンシーンについて「家族で撮った記念写真は、赦しの儀式」と解説していた。それがとても腑に落ちた。だから皆笑顔なのだ。そして、この先もそれぞれの抱えた悩みや苦労を自分で乗り越えながら生きていくのだ。「マンチェスター・バイ・ザ・シー」や「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」のような、"ハッピーアー"エンドが現実的であろうし、共感を生むのだろうな。
今回、原作を半分くらい読んだところで鑑賞。読んだところから先の話の流れは予想がつくものの、しかしまあ、あんなラストになるとは思わなかった。川井郁子の曲に合わせて演者のテロップが流れ出すと、早く早く!と気が急いてしまった。そして、ラストで涙が流れてしまった。うれし涙か哀しい涙かは書かないが、小説では、どんな終わり方にしているのか、いま気になって仕方がない。