「純文学のような世界観。本が今と昔を繋ぐ、不思議なミステリー。」ビブリア古書堂の事件手帖 映画コーディネーター・門倉カドさんの映画レビュー(感想・評価)
純文学のような世界観。本が今と昔を繋ぐ、不思議なミステリー。
【賛否両論チェック】
賛:ストーリーが現在と過去とを行き来しながら、本にまつわる秘密を紡いでいく様が、不思議であり文学的。本から謎を解いてしまう栞子の推理も面白い。
否:展開はかなり早い段階で読めてしまうので、ミステリーとしての意外性は皆無。登場人物達の言動も、やや浮世離れしているか。
ミステリーなんですが、どこか浮世離れしているといいますか、文学的といいますか、なんとも不思議な世界観のお話です。祖母にまつわる事件がきっかけで、本が読めなくなってしまった大輔。そんな彼の祖母の秘密を、たった1冊の本から解き明かしてしまう栞子の推理は、やはり圧巻です。
そして物語が現代と50年前とを行ったり来たりしながら、夏目漱石の「それから」と太宰治の「晩年」、2冊の本に深く関わる因縁が今昔双方の観点から描かれていくのも、また味わい深いものがあります。
ただ物語全体のストーリーは極めて単純で、かなり早い段階から
「もしかして、こういう展開かな・・・?」
と思ってしまった通りに話が進んでいくので、その辺りの痛快さは全く無いのが難点です。また、「『本』というものへの執着」という点から観ても、どうしても一般大衆的な視点からは、
「えっ・・・そこまでする・・・?」
なんて感じてしまう部分もあると思います。
世界観への好き嫌いは勿論、原作ファンから観る好き嫌いも非常に分かれそうな作品ではありますが、まるで純文学のような世界を、是非堪能してみて下さい。
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