「アンディ・ラウはレスりー・チャンではない。」おじいちゃんはデブゴン よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
アンディ・ラウはレスりー・チャンではない。
大家の女性が、朝鮮族であることを名乗った時点でようやく劇中の言語が広東語だったことに気づいた。
それまでもなんとなく、中ロ国境の街にしては「北国」の雰囲気がないことが気にかかっていた。
やはり、言葉というものは話される土地の風土を反映する。国内だって、漁師町や都市近郊の住宅地では全く異なるのだから、広い国の地方によって言葉の雰囲気が違ってくるのは当然だし、映画の中では重要な要素である。
アクション映画なのだから、舞台を香港にすることは何の問題もないと思うのだが。
もうひとつの違和感は、アンディ・ラウが、全くダメ男を演じていないことだ。いや、正確に言うと、彼が登場する最初のカットは、アンディとは判らないほどのゲスぶりだ。しかし、その後はいつもの「いい人」なアンディ・ラウしか出てこない。
これはまるで、近年の吉永小百合がどの作品でも同じ人間を演じている(演じさせられている?)のと同じである。
「インファナル・アフェア」で悪に成りきれない悪を演じた彼は、今度はクズに成りきれないクズを演じている。
敬愛するアンディ兄貴のクズでワルなダメ男ぶりは、残念ながら今後も見られそうにない。きっと根が真面目な彼にそれを求めることは無理なのだ。
彼は、レスりー・チャンではないのだから。
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