「新しい問題提起による新シリーズ」ジュラシック・ワールド 炎の王国 SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
新しい問題提起による新シリーズ
前作で「遺伝子操作による新種」が登場したとき、なんだか1作目のシリアスなSF要素が薄まって、浅い娯楽方面に大きく舵を切った気がして残念に思ったものだが、それが大きな勘違いだったことを今作を見て気がついた。
ジェラシックワールドは、ジェラシックパークとは根本的にテーマを変えた、新シリーズとみなすのが正しいようだ。
面白い映画というのは、必ず何か現実の世界に対する問題提起が含まれている。
ジェラシックワールドにおいては、遺伝子工学という化け物のような技術を、人間は使いこなすことができるか、ということなのだろう。
今作で、そのテーマ性がより明確になった。
ひと昔前はヒトに対する遺伝子操作はフィクションの世界の話だったが、ゲノム編集の登場によって、ヒト受精卵に対する実験が重ねられている。
これまで隔離されていた恐竜たちは、実験室の中で隔離されていた技術や遺伝子組換え生物を象徴し、今作で世に放たれた恐竜たちは、『不可逆』な形で『世界』に放たれた技術や遺伝子組換え生物を表しているのだろう。
遺伝病の治療を目的としたゲノム編集ベイビーが誕生するのは、そう遠い話ではないはずだ。
遺伝子工学技術、生殖補助技術の発展というのは不可逆であり、いくら規制しようともそれを利用しようとする人間の欲には歯止めが効かない。
だから、世界に放たれた恐竜たちに対して、「それがあるべき自然の姿ではない」と否定することは無意味であり、彼らを受け入れ、共生する、という選択肢しかない。
しかし、人為的に生み出されたこと生命でも、尊い生命には違いない。
次作も、遺伝子工学を中心にうずまく人の欲と思惑に翻弄される主人公たち、生命を軽視する者たちと、生命の尊厳を守ろうとする者たちの戦いが描かれるのだろう。