「何てもんを作ってくれるんだ…」三度目の殺人 サブレさんの映画レビュー(感想・評価)
何てもんを作ってくれるんだ…
ワンシーンワンシーンの尺が長くて長くて、あまりに退屈で、「これでオチに驚けなかったらクソ映画認定してこきおろしてやる…」とまで思っていたのに、なんじゃこのオチは!というか、オチはあったのか!?
この映画に一体どんな評価を下せばいいのか。見てる途中はずっと退屈だった。本当につらかった。尺が長いのはもちろん、いちいち登場人物の掛け合いが芝居っぽく、会話がたるんでいる。そして何よりそのせいで、主役である福山雅治、役所広司、広瀬すずの心情がほとんど見えず、没頭することもできなかった。
事件の真相も早々に見えたかと思いきや、次々と新情報だかかく乱だか余分な情報だかわからないものが出てきてしまって、もう何が何だか。意味深だけど雰囲気だけのようにも見えるカットも多いし。映画好きほどだまされるって、この映画につけてあげればいいと思うよ。
そう、だまされてるんじゃないかと思う。上に挙げた「つまらない」と思わせる要素もすべて計算づくで配置された重要な要素なんじゃないのか?
たとえば、オチですべてが明らかにならない。たぶん下に書くようなことが真相なのだと思うのだけど、自信を持ってこれが答えだということはできない。答えを明示せずに観た人に色々想像させるのが是枝監督の狙いなのだとしたら、主役3人の感情は極力出さない方がいいのだ。だからひとつひとつゆっくり丁寧に会話させるし、意味深なカットも入れる。彼らが本当のことを話しているのかさえわからないようにけむに巻く。そうでもなければ退屈なシーンの連続に納得できない。
相棒シリーズや宮部みゆきの小説のような複雑に入り組んだ事件ではないのだ、きっと。しかし、抑えつつも少しずつ登場人間の感情を観客に読み取らせることで、単純であろう事件の後ろに巨大な影を想像させる…そんな印象を受けた。というか、こうであってほしい。途中までは本当につまらなかったので。
で、多分真相は「ダメですよ、私みたいな人殺しに期待しちゃ」というセリフから考えて、三隅は二度目の殺人をやっていた。動機は咲江のため。裁く対象は父と母。父は咲江と一緒になって殺し(そういうシーンがあったはず。重盛の想像かもしれないが)、母には法廷で「汚い金を作っていた」罪を告白させるのが目的で陥れる。
で、肝心のなぜ無実だと証言を翻したのかだけど…咲江に証言させないためってのはきついんじゃないか?そこまで頭が回る人間には見えないし…でも咲江の証言がトリガーになっていたのは間違いないし。ここだけがわからない。
そしてタイトルにもなっている「三度目の殺人」とは三隅自身を殺したことなんじゃないかな。多分、三隅は「産まれるべきでなかった人間」のみを殺してきて、自分のこともそう思っているのだと思う。だからこそ、人の役に立てて死ねるならうれしいと本音で語れたのではないだろうか。ラストのあのやりとりが本音だったと思いたい。