「公判中の共犯者について」三度目の殺人 aruさんの映画レビュー(感想・評価)
公判中の共犯者について
弁護士重森の父親、裁判長だった重盛彰久が共犯者だったのではないかと思う。
三隅が咲江を守るために殺人を犯したとして、殺人まではともかく、公判中に本当の殺害動機に目が向かないように進める知識が三隅にあっただろうか。
特に三隅が犯行を否定した箇所は、一歩間違えば他の犯人を捜すため、咲江の父親に対し恨みを持つ人間、強いては咲江の父親の人間性に目が向く。そうなってしまえば咲江との関係性に注目される可能性はゼロじゃない。咲江を守るという意図とは大きく外れる行動だ。しかし実際のところ、三隅の過去の犯罪歴や今までの裁判での発言、なにより現在の司法の在り方で、三隅の死刑が決まり、本当の動機は隠される。
三隅の行動はここまで考え抜いた上でないと成立しない。しかし果たして彼にそこまでの知識があっただろうか。誰か司法に詳しい人間の助力があったと考えさせる。
現在の司法について理解がある人物は、登場人物の中では、弁護士、検察、そして裁判長であった重森の父だ。三隅と重森の父は葉書のやり取りがあり、また、三隅は重森の父を尊敬している節がある。なにより、映画で語られることはなかったが、三隅が重森の娘の存在を知っていたのは、重森の父に聞いたのではないだろうか。重森はいずれ、公判の進め方について助力している人間の存在を考える。そして自分に娘がいることを三隅が知った理由と結びつける。これは重森の父が重森に向けて発信したメッセージだと思う。これ以上真実について深追いするのであれば、お前も、お前の娘も第3者ではいられない、と。
重森が娘を大事に思っている描写や、親子の関係であっても理解できない、という重森の父の言動はここに結びついている気がする。