「考えさせられる」三度目の殺人 淳之介さんの映画レビュー(感想・評価)
考えさせられる
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今作における三隅と重盛の関係は、そのまま作品そのものと観客の関係にあてはめることができるのではないでしょうか。
三隅の供述の同様、二転三転する物語の中で明確な答えは存在せず、あるのはヒントであることを匂わせるシーンの断片のみ。
冒頭のシークエンスで描かれる三隅の犯行でさえ、虚実入り混じる映像の中で確信性が失われていく。
劇中で三隅が放つ言葉のように「真実が何なのか」それ自体が重要ではなく、「信じるかどうか」が重要である。
観客は重盛同様、自分の中の倫理観や経験、「こうあってほしい」という願いの下に、ヒントをつなぎ合わせて自分の中で真実を創り出していく。
真実の持つ虚構性と、その集合である社会の歪な正しさ?みたいなものを文字通り「考えさせられる」作品でした。
(法廷ってのは個人の真実を擦り合わせて、丁度イイ社会の真実に加工する場所なんだな~とか思ってしまった。)
だからこそ、ラストシーンで重盛が導き出した「事件の真実」に少し安心してしまいました。
僕はあれが真実だとは思いませんが、そうあっては欲しい思うし、やっぱりその方が幸せだと思う。
そして、その答えに対する三隅の返答もまた、監督自身が「そうであればいいな」という観客=社会に対する思いそのものなんじゃないかなと。
久しぶりに何度も観直したい。そして色んな人と話をしたい映画でした。
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