MEG ザ・モンスター : 映画評論・批評
2018年9月4日更新
2018年9月7日より丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほかにてロードショー
ステイサムVS古代ザメ、その顔合わせが全てのものに勝るパニック巨編!!
絶滅したはずの超巨大ザメが現代に出現し、人類に猛威をふるう海洋冒険小説(スティーブ・オルテン著)の映画化。1996年の原作発表前に映画化権が取得され、プロジェクトは難航した末に、ようやくジェイソン・ステイサム主演で22年越しの完成を果たした。その間、ハッタリの利いた映画を好む中国によって、このテのジャンルの市場がケタ違いに拡大。加えて「シャークネード」シリーズ(13~)のホットなブレイクが、荒唐無稽なサメ映画に対する免疫を世にもたらした。なので発表の機は充分に熟している。
ステイサムが演じる主人公ジョナス・テイラーは、過去の海難救助で同僚を犠牲にしてしまった救助ダイバー。彼はそのときのアクシデントを未確認生物によるものと主張するも、確証を得られないまま一線を退いている。映画はそんなテイラーが、帰還不能となった調査チームの救出依頼を受け、再び深海へと身を投じていく。そこで、かつて自分たちを襲った宿命の巨大生物“MEG”ことメガロドンと遭遇するのだ。
世界トップレベルのアクションスターとしてさまざまな強者と戦い、もはや霊長類ヒト科に敵なしのステイサム。今回も持ち前の絶倫格闘パワーで、サメだろうと容赦なくフルボッコ! と誰もが思うだろう。ところが彼を待っていたのは、全長20メートルを超す先史時代のモンスター。ステイサム個人の奮闘や努力といったもので、どうにかなる相手じゃないのだ。
とはいえ、ステイサムでなければ事態が解決できない、そんな程々の危機感をうまく全編に配合させながら、本作は「ステイサム型アクション」と「動物パニック」をアクロバティックに並走させていく。海の猛者と因縁の怪物との戦いは、さながらメルヴィルが足で書いたサメ版「白鯨」といった趣。だが全編を通じて繰り広げられるのは、そんな文学的高尚さとは無縁のブレインデッドな展開だ。MEGが海底研究施設に飽き足らず、何万人もが戯れるリゾートビーチを襲撃する大なだれ式なソレは、物理的にもあまりに唐突でムリな理屈を通しまくり、観る者の脳細胞を容赦なく殺していく。そして誰もが帰宅後、そのひとときの思い出を静かに「ジオストーム」(17)や「ランペイジ 巨獣大乱闘」(18)と同じフォルダに収めるだろう。
個人的には原作にあった、MEGがティラノサウルスを食い殺す前振りが見たかった。まぁ、それに相当するような見せ場はだいたいステイサムが代わりに披露してくれるので、特に憂慮すべき問題ではない。
(尾﨑一男)