怪物はささやく

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劇場公開日:

怪物はささやく

解説

イギリスの作家パトリック・ネスによる世界的ベストセラーを、「永遠のこどもたち」のJ・A・バヨナ監督が実写映画化。孤独な少年と怪物による魂の駆け引きを幻想的な映像で描いたダークファンタジーで、スペインのアカデミー賞と言われるゴヤ賞で9部門を受賞した。裏窓から教会の墓地が見える家で難病の母と暮らしている少年コナー。ある晩、彼の前に怪物が現われ、これから3つの「真実の物語」を語ること、そして4つ目の物語をコナー自身が語るよう告げる。しかもその内容は、コナーが隠している「真実」でなければならないという。嫌がるコナーをよそに、怪物は夜ごと現われては物語を語りはじめる。「PAN ネバーランド、夢のはじまり」のルイス・マクドゥーガルがコナー役で主演を務め、母親役を「ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー」のフェリシティ・ジョーンズ、祖母役を「エイリアン」シリーズのシガニー・ウィーバーが演じる。リーアム・ニーソンが怪物の声を担当し、モーションキャプチャーにも挑戦。

2016年製作/109分/G/アメリカ・スペイン合作
原題または英題:A Monster Calls
配給:ギャガ
劇場公開日:2017年6月9日

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(C)2016 APACHES ENTERTAINMENT, SL; TELECINCO CINEMA, SLU; A MONSTER CALLS, AIE; PELICULAS LA TRINI, SLU.All rights reserved.

映画レビュー

4.0あまりに切ない題材をファンタジーの力を借りて掘り下げるバヨナの力量

2017年6月27日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

悲しい

スペイン出身のバヨナ監督は子供の表情を捉えるのがうまい。それも上辺だけの演技ではなく、深層心理が自ずと剥き出しにされる瞬間を的確に映しとって見せる。何よりも冒頭で、主人公が悪夢にうなされ子供とは思えない形相で飛び起きる場面から、彼が今、両手では抱えきれぬほどの様々な思いを抱え込んでいる只事ではない状況が伝わってくるのだ。思えば『永遠のこどもたち』は屋敷にて深層心理の階段をゆっくりと下るようにして幼子を探し求め、『インポッシブル』では大惨事の巻き起こる中で、親子が互いを探し求める物語だった。そう考えると、病を患った母と、その事実を受け止めきれない息子の物語にも何かしら通底する音色を感じ取ることができる。怪物の存在、そして「真実の物語」を通じて、儀式的に少年の心を覆ったベールを一枚ずつ取り除き、その深部にある自分の気持ちと真向かわせているかのよう。本作もまたバヨナの才能を裏付ける秀作として語り継がれていくことは間違いない。

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牛津厚信

4.0同じジャンルの傑作「パンズ・ラビリンス」とは違う後味が。

2017年5月31日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

悲しい

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清藤秀人

3.0病気の母が

2024年9月8日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
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Giovanni

5.0現代人に向けたおとぎ話

2024年7月26日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

知的

状況は変えられない。
「辛い真実には嘘が必要だ」
でも「大切なのはそんな考え方ではなく、行動だ」
行動とは「真実を話すことだ」
この作品が最も伝えたい唯一のこと。
確かに人は、自分の都合のいいように出来事を解釈する。
それはそれで仕方ないが、自分に嘘をついてはならない。
そして、
一つ目の物語のように、誰かが悪く誰かが良いのではないということ。
さて、
母親の死に向き合うということは、コナー少年にとってどれほど苦しいことなのか。
孤独
毎晩見るナイトメア
その中にコナーの真実が隠されている。
「もう終わらせたかった。死ぬと分かっているのが辛かった。だから手を離した。ボクがママを死なせた。ボクは治らないと最初から知っていた。もっと頑張れるのに手を離した」
それは、決して口にできないこと
誰もそうしているし、そう思っている。
「そう考えるのは悪いことだ」
いじめ
本当は殴ってやりたいけど、怖くてできない。
リビングの破壊
「何も触らないで」
どこにも居場所はない
誰もボクの孤独をわかってない。
心の怒りをぶつけたい。
心を、開放したい。
何もかも思い通りにならないイライラ
感情
感情というコントラスト 喜怒哀楽
それを押し殺すことで起きるイライラ
「本当はどうしたい?」
「お前の真実を話せ」 お前の意見を言え
心の真実は真の願い
人間とは本当に面白いもので、社会性という枠の中で押し殺してしまっている自分自身の感情にさえ気づかないことがある。
ここに諸悪の根源があると作者は考えたのだろう。
状況を変えることはできない。
「自分自身も、変わる必要などない」
ただ、「自分は本当はどう思ったのかを明確にすることが必要」なのだろう。
「あとはお前が心から素直に真実を話すことだけだ」
人に合わせる
自分の意見を言わない
その他大勢に紛れてしまって「私」が「存在しない」ようになっている。
つい人が陥ってしまっていること
それに気づけとこの作品は言う。
それをコナー少年と怪物に託した物語
さて、
最後に祖母がコナーの部屋を用意してくれる。
机の上に置いてある母のデッサン帳
そこに描いてあった絵と怪物の話した3つの物語
そして最後に小さな少女の絵
それは少女時代の母 または彼女の魂
そしてあの怪物
おそらく4つ目の物語、つまり母の真実とはいつか怪物の背に乗り、コナーに「心の真実を語る」大切さを教えたいと強く願ったのではないだろうか?
そしてその「タイミング」がやってきたのだ。
母が最後にコナーに伝えたかったこと
「心の真実を話すこと」
当たり前のことが、当たり前にできなくなった人間たちへ向けられたメッセージ
素晴らしかった。

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