「全力で擁護させて下さい!」メアリと魔女の花 pippo9さんの映画レビュー(感想・評価)
全力で擁護させて下さい!
酷評が多めな気がするので、私がこの作品を嫌いになれない理由を書かせて頂きたいと思います。
表面的なストーリーとしてはかなり歪な作品ではありますが、裏のテーマを読み解いていくと米林監督の思いがしっかりと込められた作品でした。
裏のテーマを読み解く鍵は、庭師ゼベディです。彼の容姿はどことなく宮崎駿を彷彿とさせます。そして、彼の手伝いをして失敗し、呆れられているメアリは米林監督自身なのではないでしょうか。
つまり、米林監督自身のこれまでのジブリ人生をそのままストーリーに盛り込んだ映画だと言えます。
メアリが初めて箒に乗る場面では、箒に夜間飛行のネバネバを付ければ、空を飛べる様になるのですが、これは筆と絵の具を手にすることでアニメーターとしての才能が開花した米林監督のようでもあります。
この作品において、
「メアリ」を「米林監督」、
「魔法」を「ジブリ作品」、
「箒」を「筆」、
「夜間飛行」を「才能」、
と置き換えれば、
米林監督がジブリに入社して、長編2作を監督して、そしてジブリの制作部が解体される、という流れに合う様に感じます。
エンドア大学に囚われた動物たちを逃すシーンで、メアリは「私、今夜だけは魔女なんだ」と言いますが、これはジブリ退社後、自分たちでスタジオを立ち上げてもう一度アニメ映画を作ることができるという、米林監督の喜びの気持ちが込められているように感じます。
そして、映画のラストで「魔法なんていらない!」と宣言して魔法解除の呪文を発動させますが、これは米林監督のジブリとの完全な決別の宣言でしょう。
エンドロールで「感謝」という言葉と共に「宮崎駿 高畑勲 鈴木敏夫」の3名の名前が載っていますが、この映画全体でスタジオジブリに対する感謝の思いを伝えようとしているように感じました。
エンドロールの最後に庭師ゼベディの箒の隣にメアリの箒が置いてある絵が映りますが、これは米林監督から宮崎駿への感謝の気持ちをさりげなく表現した絵だと思います。
表面的なストーリーだけ観て簡単に評価を下すのはとても勿体無い作品だと思いました。今作を観て不満に感じた方も是非もう一度、裏のテーマを念頭に置いて今作を思い返してみてほしいです!
仮にその裏テーマがその通りだったとして、この作品が面白かったとなりますかね?
つまらないものはつまらないと言わないと。クリエイターにとってはお世辞こそ毒。
みなさん、コメントありがとうございます。
作品に個人的なメッセージ性を込めることに関してですが、映画制作の原動力がどこにあるのかが重要だと思います。
映画は何年もかけて制作されるものなので、作り手の意志にそぐわない原動力で映画を作ろうとしても良いものなんて作れません。
原動力は別に何でもありだと思います。子どもが楽しめるファンタジーを作ろうだとか、観客が一番怖がるホラーを作ろうだとか、あるいは、自分の過去の体験をそのまま映画にしたいでも良いですが、大事なのは作り手が今一番強い思いを持っているものをそのまま原動力にする、ということです。
恐らく、米林監督が今作を制作するときの原動力としていたのは「ジブリへの感謝」ということだろうと私は感じました。
自分と全く関係のないキャラクターの話を何年もかけて制作するなんて無理だと思いますし、出来上がったとしてもそれは味気ないものだろうとも思います。
宮崎駿は自分の中の原動力をファンタジーに落とし込むことに関しては天才的なんだと思います。ただ、後期にかけては原動力のみが飛んでいるような部分もありましたが…笑
その意味で今作は、原動力は十分にあったのにそれをファンタジーに落とし込むことには失敗しており、それゆえ歪な作品になってしまっていると思います。
原作ベースではなく完全オリジナルのファンタジーにした方が良かったのではないかな…
恐らく次回作は米林監督の作家性を活かした映画を作れるはずなので期待しましょう!
ここまでみなさんとお話しできるとは思っておりませんでした笑
これだけ議論が出来たってことで、1800円分の元は取れたと思います笑
チンプソンさん、参考になりました。ありがとうございます。とにかく、今後に期待ですかね。「ジブリの主義」が消えていってほしくないものです。
pippo9さん、多くのコメント失礼しましたm(_ _)m
しゆさん、わざわざ再度の返答ありがとうございます。
そしてpippo9さん、掲示板みたいここを使って申し訳ありません・・・。
作品の作り方に良い悪いは存在しません。ただ、いち思想に傾いて描いてしまうとプロパガンダとして悪にみなされる場合がありますが・・・。
基本的になに作ろうが、観る側のコチラには関係ありません。関係あるのは作り手と配給だけ。
作り手だってメアリを面白くないように作ってるわけではないですよそりゃあ。ちゃんと盛り上がるところはBGMつけて、キャラクターたちも演技させてるんですから。
でも面白いかどうかなんて作ってる時は作ってる人たちしか判断材料ないんですよ。不特定多数の我々一般人が面白いかどうか感じるのは公開前にわかるわけがない。
面白くなかったのは完全に手腕の話です。意図して面白くなく作っていたわけではありません。
メアリにはキャラクターの描き方に生々しさがなく、真実味がない。観ている側に不穏な先行きを暗示させてもない。盛り上る場面までの溜めが上手くいってない。
(ギブガエルはかわいくて好きですがね)
pippo9さん
仰る通り「ハウルの動く城」以降の作品を持ち出すと議論が変わります。ただ作品の面白さという点では、「千と千尋の神隠し」以前と以降では、おそらく宮崎監督の念頭にあったものが違うかと。
「千と千尋の神隠し」で世界のジブリとなり、「ハウルの動く城」からメッセージ性にこだわるようになったと想像します。しかしそれは「千と千尋の神隠し」までの成果によってある意味許されたもので、宮崎監督もそこは割り切って作品の面白さを削っていた可能性すら感じます。「風立ちぬ」なんて売ることすら考えてないですよね(笑
メアリについては私もそこまで酷評派ではありませんし、宮崎監督の晩年の作品との比較ではどっこいどっこいくらいかと(適当ですみません笑)
チンプソンさんへのコメントでも述べましたが、個人的なメッセージ性を込めるということだけは、コアな視聴者にしか理解されず、多くには通用しません。テーマが魔法、異世界への冒険、成長といった子供向けであるのにもかかわらずです。
詰まるところ私はジブリについては総括してコメントしています。一作一作と比較し議論してるとかなり長くなってしまいますからね(笑
スタジオポノックについては願わくは、まずはジブリでいうところの「ナウシカ」を作って欲しいものですね。今の時代は名作だらけのあとで、求めらるものが大きく大変でしょうが(笑
チンプソンさん
そこまで内情にお詳しいのでしたら、仰る通りでしょう。私は内情云々では議論できませんが、とにかく大事なのは作品そのものの面白さ、その点では駄作とまではいいませんが、チンプソンさんと共感できる評価になります。
メッセージ性についてだけはなんとも…そもそも長編アニメは莫大な費用と時間、人員が必要で、そこに個人的感情が入り込める余地は少ないんではないでしょうか?
例えばある監督ならば最大限にリアリティを演出したり、ある監督だったら映像美、ストーリーの意外性を突いたり。いかに視聴者をあっと言わせるかの勝負に、ある意味個人的感情でメッセージを盛り込むかということです。しかし、ジブリへの決別というか、ジブリへの最大の感謝を込めたというのはそれだけジブリが築いたものが大きく、そこにこだわり過ぎた結果が内容を薄くしてしまったのかもしれませんね。
しゆさん、返答どうもです。
主義と別れの矛盾というのは、米林監督のいきさつなどからです。
ジブリの製作部門解体は、鈴木さんいわく「つくりたいものがなくなった」。宮崎さんの作品サイクルの致命的な遅れが原因です。
それを補う候補をいままで育成できなかったジブリの落ち度。ジブリの活動停止は望まれたものではなかった。
それでもアニメ作りたい米林、西村両名が新天地を作ったわけです。
ジブリで得た作品作りの向かい方(個人的、政治的メタ的な部分)、しかし宮崎高畑鈴木の手から離れるという巣立ちを表したのが「魔法なんていらない」の台詞ということです。
他多くの方々が仰るとおり、
映画があって、メッセージがなければならない。映画の部分でダメなら意味がない。
メアリはそこが上手くいってない。それは「この作品で決別をしたのはいいけど、今後これだと不味いぞ」という不安材料でもあるわけです。宮崎作品は絵でそれを無理矢理解決していた感が強い。
ただ、巣立ちの意気込みだけは強く伝わったと。あんな露骨なオマージュなんて怖くて普通はやらないですよw
そこまでやってまで「感謝」して、別れを告げたことは理解してもらいたいし、別に理解しなくてもいい。
メアリは3点未満の作品であるのは確かだし、それが“評価”として正しいと思うし。
ようは自分も決めた高めの点数は“激励”の意味も込めてです。
Erikoさん、コメントありがとうございます。
おっしゃる通り根本が違うと思います。
Erikoさんの映画の見方は「表層批評」と言う映画の見方です。
私がレビューで書いた見方はそれとは違って、恐らく町山智浩さんに影響された見方だと思います。
表層批評的な視点で見れば駄作ではあるのは間違いないとは思います。
別に私は今作を評価している訳でもありません。
しかし、あまりにも一方的な視点でのレビューしか書かれていなかったように感じたので、今作の別の見方を提示したかっただけです。
根本が違います。
大多数の人が、数ある作品の中でこの映画をお金を払って米林監督の内面を観に行ってるのではない。
映画としての作品を鑑賞しているのです。
見終わった後に一緒に映画鑑賞をした人や自分自身の中で、あそこはこうゆう意味だね、あの時こうしたのは、こうゆう思いからこうしたのだと思うとか、作品に対して会話や自分の中で思考膨らますことが映画の作品としての価値であり、監督の想いはなんてものはその思考の最後に付随する程度のものでいい。
映画に対してそこを全面に持ってきて評価するのは作品や監督自身に対して失礼だと思う。
監督は映画を見てもらうのであって自分を見てもらうのではない。
単純にこの映画は、作品として監督の想いまで行き着く内容のものではない。
しゆさん、コメントありがとうございます。
質問を返すようになってしまうのですが、しゆさんは「ハウルの動く城」を面白いと思いますか?
「ハウルの動く城」も表面的なストーリーはかなり歪ですが、深読みしていくと宮崎駿の当時の心情を語っている映画で、今作とかなり構造的には似ていると感じました。
もしハウルを面白いと感じるのであれば、「深読みするのが面白いというのは面白いの中身が違う」という部分で矛盾し、
ハウルを面白くないと感じるのであれば、
「ジブリは絶対的に面白い長編アニメシリーズです」という部分で矛盾します。
どちらでも無いと言うのであれば、ハウルの表面的な部分で絶対的に面白い理由を挙げて頂ければと思います。
矛盾を指摘して頂いたコメントでしたが、しゆさんのスタンス自体が矛盾しているように感じました。
また、「ジブリと決別するメリットはありません」という部分ですが、米林監督は決別したくてした訳ではなく、経営難に陥ったジブリ側から制作部を解体されたため退社した訳で、言わばリストラと同じ状況だった、ということを理解した方が良いと思います。
ただ、宮崎駿が引退を撤回して新作を制作しているという現状は米林監督からしたら複雑な心境かもしれませんね…笑
私は別にこの作品は面白いとは思いませんが、表面的な見方で判断するのはとても勿体無い作品だ、ということを言いたかっただけです。
↑コメントにコメントを。「ジブリの主義は忘れない」と「ジブリさよなら」は矛盾してませんか?
ジブリの技術を踏襲し、再スタートさせてください。そういう意味での新しい名前であり、それを許し応援してくれて感謝します。という事ではありませんか?オマージュととらえてる人たちもそういう意味では間違ってますよね。
ジブリとは多くの人々に受け入れられ、絶対的に面白い長編アニメシリーズです。そのジブリと決別するメリットはありません。
そしてジブリは映像美だけでなく、あらゆる要素で完成度が高いので、まだまだ追い付け追い越せというところでしょうか。
そして本レビューの監督の人生を盛り込んだ…ふむふむ、うん。そうかもしれませんね〜
ただ
その要素で面白くなってれば良いのです。仰るとおりその実ストーリーは表面的でいびつとなってしまっています
重要なのは面白いかどうかですよね?
深読みすることで面白いというのは面白いの中身が違うように感じました。
最悪その解釈が監督の自己満足のようにとらえられてしまえば逆効果です。
ジブリは原発反対してましたし、その原発を彷彿とさせる映像もありましたね。
それを抑え込もうとするメアリが「魔法なんていらない!」って言う構図は、
「ジブリさようなら!」と言ってると同時に「でもジブリで得た主義は忘れないよ!」と言ってるかのよう。
自分はその後、メアリが気絶から覚めるときの今までの草木ではない超リアルな草木のアップのシーンが、スタジオポノックという新境地での新たな製作を暗示させてるようにも見えました。
この作品を見てオマージュだらけだってのは誰が見ても明らかなぐらい露骨なので、製作陣もわかってやってるなと。
そこで「パクリだらけ」で終わってしまう感想はちょっと悲しいですよね。
でも本当の本当な傑作は、そういう短絡的な感想で終わってしまう人が見ても面白いと感じるものが傑作と言えるものでもあるんで、
自分は「まぁ仕方ないかなぁ」という気持ちです・・・(悲しい・・・)