マンチェスター・バイ・ザ・シーのレビュー・感想・評価
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さすがに乗り越えられない
パトリックが3人の写真をじっと見るのが印象に残った
冬にもう一回見直したいような見直したくないような。
リーに何が起こったのか分からないまま過去現在の映像が混在して進んでいく。妙なクラシック音楽といい気持ち悪いフラッシュバックのような演出はリーの心情を表しているのか。
ネタバレすると面白くない映画、でも面白いという感情は湧かない。悲しい、辛い。身内に不幸があったばかりの人はみない方がいい。若い人も見なくていいかもしれない。
死んだ魚の眼のような演技は一級品
少しずつ、ゆっくりと癒されていく魂
一生癒されない悲劇を経験してしまった人間が、その後の人生にどうやって立ち向かうことができるのだろう?そんな人間に魂の救済はあるのだろうか?そういうテーマに取り組んだ映画だと思いました。
その答は、あるいは時間の経過そのものにあるのかも知れないし、新しい生命の誕生や縁のある若者の成長に関わっていくことで、完全にではないにしても、非常にゆっくりと、癒されていって、人はもう一度、前向きに生きることができる、という事なのかも知れません。
田舎の港町の風景が、こうしたテーマにとてもマッチして美しく、孤独な魂が少しずつ癒されていくプロセスが丁寧に描かれていきます。若い甥っ子のなかなかのプレイボーイ振りが、暗くなりがちなテーマに微苦笑を与えてくれます。
秀作と思いました。
引き受けるということ
人生には悔やんでも悔やみきれないことがある。人は自分を責め、心を閉ざして未来に背を向ける。もはや人生に喜びはなく、希望の明日もない。自分自身を見捨ててしまったのだ。そしてもう死んでしまいたいと誰もが願う。本当に死んでしまう人もいれば、生きつづける人もいる。
かくも悲しい世の中を、人はどうして生きつづけていられるのか。仕事終わりに飲む一杯のビールのためか。ネットで買った靴が週末に届くのを受け取るためか。
町や部屋を出て行くというのは、映画でも小説でも歌謡曲でも数多く取り上げられているテーマだ。家族や友人、恋人との別れがあり、歳月が流れて故郷を振り返る。たとえそこに耐え難い想い出があったとしても、故郷には自分の消しがたいアイデンティティがある。流れ流れてこんな生活になっちまったという人も、いつかは故郷と向き合って、決着をつけなければならない。
たとえ故郷に親戚も友人もいなくなっていても、昔ながらの山があり川があり海がある。室生犀星の「小景異情」に歌われている故郷に対する感情は、世界共通の感情であるように思える。人はそれを懐かしさと表現するが、懐かしさは愉快な記憶だけではない。苦しい想い出やほろにがさもある。
人によっては忘れてしまいたい凄絶な記憶もあるだろう。出来れば逃げていたい記憶だが、故郷の記憶を捨て去ることはアイデンティティの喪失を意味する。根無し草になってしまうのだ。
この映画の主人公は兄の遺言から逃げようとせずに、自分本意で幼稚な甥の面倒を見ながら必死で過去の自分と今の故郷の両方と折り合いをつけようともがく。
主人公を受け入れたくない周囲に対し、それでもすべてを引き受けて生きて行こうとする主人公。しかし過去の記憶はどうしても自分自身を許そうとしない。その葛藤がこの映画の主眼であり、観客の誰もが主人公に自分を重ねる。いい作品である。
静かに胸を打つ
観なきゃいかん。
この映画はなんだかんだ優しいよ
あくまでも主役はこの町
それぞれの生き方
「生きる辛さ」を描いた映画
そこそこの話題作にも関わらず、上映館数が少なすぎる!
全国で32館とは、どーゆーことか?!
「美女と野獣」なんて375館で上映してるというのに、この違いはなんなんだ!
と、観る前は日本の映画業界に対して憤慨してました。
さて、本編は。。。
こんなにも「生きる辛さ」をありのままに描いた映画があっただろうか、と思うくらい鑑賞している間中、遣る瀬無さ、不甲斐なさ、さめざめとした感情に襲われたことはありませんでした。
それは、鑑賞中よりも、鑑賞後(つまり、これを書いている今)の方が、より一層胸につっかえて感情を揺すぶっています。
癒えることのない傷。
不感症になることで、避けていた傷。
人と交わないことを蘇生術とするしかない傷。
この映画は、そんな傷を、包み隠さず装飾せずに描いていきます。
そこには、「希望」や「許し」が存在することはなく、ただただそこに存在する登場人物たちの、埋まることのない心の傷を、誠実に容赦なく描いていきます。
観客は、そんな登場人物の姿を傍観することしかできません。
ただ、傍観するうちに、それは彼らであり自分たちだということに気付かされます。
存在すらしない彼らに、自分自身の人生を見つめ直すきっかけを与えられ、彼らとなにも変わらない「生きる辛さ」に気付かされます。
自分はマンチェスターという場所を知りません。
いままでマンチェスターユナイテッドというサッカーチームくらいでしか聞いたことがなく、
その華やかなビッグチームから、おそらく大都市なんだろうと思い込んでいました。
でも、この映画を見るだけで、そこはイギリスでもどん詰まりの田舎だ、と察することができます。
そのどん詰まりは、つまり今の自分のいるこの場所です。
どん詰まりは、どんなに逃れようとも、どん詰まりに行き着くしかありません。
本作には「ボート」のくだりがでてきます。
そのボートこそが、どん詰まりをより効果的に表現されていて、唸らされます。
世界は広く、どこまでも海は広がり、無限の可能性はありますが、結局はどん詰まりから離れることはできないんです。
多くの映画は、「希望」を描きます。
ただ本作は、映画という「希望を観るもの」という根底を覆す作品でした。
今世紀、観ないと後悔する映画のひとつです。
良作ですね
凍てついた心の雪解けを感じる
船出
誠実と共助を描いた作品。
心を映す画。
人生を表す音楽。
受け手に委ねる役者の間。
どれも一級品だった。
犯した罪に対する罰が与えられないどころか、慰めや優しさを持って迎えられてしまい、どうしようもなく壊れてしまうリーの痛ましさ。
振り返ると、奔放な生活ながらも娘達からは慕われ、夫婦仲も特別悪い訳ではない。
ただどこかにボタンの掛け違えがあった。
エンジンを新調し、心機一転再出発かと思いきや、逃れられない過去が訪れる。
ここで初めて互いが真心を持って向き合う。
この最も美しい瞬間が別れの時とは、なんと切ない物語だろうか。
結局のところ、リーは子を失った父親という十字架から逃れられなかった。
だが変わらずとも変われずとも、あらぬ方向へ跳んだボールは、ただ拾いに行けばいい。
彼は立派に父を失った子の港となった。
ひとえにそれは、ジョーの粋な計らいによるものである。
彼は愛する者達に、死者として出来ることの全てを遺書に込めて贈った。
リーとランディ、パトリックとエリーズ、そしてリーとパトリックがそれぞれ向き合い支え合う事。
冷凍保存されたマンチェスター・バイ・ザ・シーに降り積もる雪を掻き、地に足を付け、強く清く真っ直ぐに生きる様、願い導いたのだ。
行くあてもなく、二人はのんびりと釣りに興じる。
そんな彼等の前途洋々たる船出を賛美歌が包む。
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