マンチェスター・バイ・ザ・シーのレビュー・感想・評価
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隠し包丁がその味を染み込ませる
料理に例えるなら、薄味の精進料理か?いや、じっくり噛みしめてみると、山椒がピリリと効いていたり、隠し包丁が施されているなど細部に趣向が凝らされた手の込んだ懐石料理であることに気づかされる。
心の傷とその再生を描く映画は数あれど、この作品はその傷を抉る訳でもなければ、あからさまな慰めを与える訳でもない。私たちは日常を過ごす。消したい過去や、やるせない傷があっても、日常生活の中では平静を装い生きていくしかない。しかし、本当に深い心の傷は癒えないし、隠しきれない。だから、ほんの些細なことでそのバランスはいとも簡単に崩れてしまう。人間とは何と不器用な生き物なのかとつくづく考えさせられる。
それでも日常は平然と過ぎていく。その中には人との関わりがあり、会話があり、生活がある。とりわけ、甥っ子とのコンビネーションが生み出す絶妙なユーモアは物語に可笑しみを与え、じわじわと見えない心の傷に染み込み、ほんの少しだけその痛みを忘れさせてくれる。
けれども、その過去と向き合わなければならないときがくる。前妻と再会する後半は本作屈指のクライマックス。心の傷は消えることはない。時間が経っても癒えることはない。それでも、私たちは生きていく。その時に必要なものは多分、劇的なことでも、大きな変化でもない。その傷があることを認めつつ、一歩前に進むことなのだ。
タイトルなし
静かにどこにでもいるような…リアルな生身の人間がいた
でもリーは償うことも出来ない重たい十字架を背負って生きている
静かで辛い
ランディとの再会には涙がとまらなくなる
二人とも辛すぎるよぉ
苦しみから解放され立ち直る日がいつか来るだろう
そう終わってほしいと願いながら観ていた
言葉にしたことで、リーはきっと扉を開け歩き始めたはず
ケイシーアフレック。素敵でした。
それでも生きていかねばならない
いかにも重そうな映画だったので、正直観るのを怖気づいていたけど、意を決して観たら、確かに重いけど、それ以上に得るものの大きな映画だった。
設定やストーリーだけ見れば、いくらでも分かりやすく感動させられそうな内容だけど、あえてそれをしないでリアルな感情の表現にこだわった作品だと思うし、だからこそ、観終わったあとに染み入るような深い感動に包まれる。オススメ。
破滅と再生の物語
過去と現在を交互に映しながら、一人の男の破滅と再生がほのかなユーモアを交えながら描かれる。こういう構成は大好物。
抑制の効いたアフレックの演技も素晴らしかった。これが「死んだ魚のような目」か。ミッシェル・ウィリアムズはただ可愛いだけじゃなく、不安定な奥さんを好演していて、あのシーンの2人は本当に素晴らしかった。ルーカス・ヘッジズも今後が楽しみな役者。
どんなに深い哀しみでも、生きていればいつかは癒えるときがくる…のかな。
2017年鑑賞作品の個人的ベスト。
許されるまでの時間
あるワンシーンがとても素晴らしく、そこだけで見る価値あり。
この映画の主人公リーの辛さは計り知れないですよね。
自分を責め続けこの世から去りたいという感情になる気持ちも解る気もします。
あなたの印象に残った部分はここでしょうか?
別れた妻と彼の亡くなったお兄さんの葬儀の前に再会し、奥さんは涙ながらに許しを請うた。
心閉ざしていたリーにとってあの言葉は戸惑いやら少しの喜び、
複雑な思いでなにも言う事が出来なかったのでしょう。
奥さんは何故許す言葉をだせたのでしょうか。それは今の彼女が幸せだからだと思います。
あの時は自分を責めるというより、子供を失った辛さと怒りで夫を傷つけて傷つけて自分も苦しむ、
それしかこの状況から逃れられなかったのではないかしら。
時が過ぎそして考える、彼の幸を、新たに授かった赤子をより一層大切に育てよう、希望を見出せたからね。
その後の彼にも変化がありましたね。喧嘩をしてジョ―ジの奥さんにキズの手当てをしてもらい思わず彼女の優しさに触れ、涙した、
本来の彼を取り戻した感ありでしたよ。(父を失った甥のパトリックの肩に手を置いたり、両手で抱いたり)
許すと許される言う行為はその後の人生を豊かにしていくのですねー。
最後の場面子供を失った伯父と父を失くした甥が無言で海で釣りをするシーンよかった。
ジョーはこうなる事を願ってリーに後見人を依頼したのでは?愛情豊かなジョー 請う有りたいです。
挿入の音楽もいい!良い映画でした。
乗り越えれる壁ばかりでは無いのだ。 なんとか自分の範囲で折り合いを...
乗り越えれる壁ばかりでは無いのだ。
なんとか自分の範囲で折り合いをつけていかなければならない。それが生き続ける事とのトレードだとしとても。
自分だったら、乗り越えることができるだろうか?
観終わった時、まずそのことが頭に浮かんできた。とても無理だと思う。私だったら、マンチェスターに来ることすらできなかったかもしれない。そう考えると、リーは強い人だなぁと思った。だって、時に暴力的になることがあっても、精神的におかしくなったりしないで、ひっそりと生きているじゃないか。すごいよ! 映画を観る前、あらすじを読んで想像していた話と少し違った。リーが、マンチェスターに住んでいない理由は想像通りだったが、よりもっと悲惨な出来事が起こっていた。私は、甥っ子パトリックとの仲がうまくいかなくて、悩む話かと思っていたが、そうではなかった。リー自身の話なのだ。彼が過去の悲惨な出来事といかに向き合っていくのかという物語なのだ。いろいろうまくやっているパトリックを支えながら、過去と苦闘しているリーを私は心から応援していた。マンチェスターに残るのか、ボストンへ帰るのか、最後までドキドキしながら観ていた。リーが出した結論を私は暖かく見守りたいと思う。
壊れた心は
修復する事はない。
忘れる事など出来ないし、心が晴れる事もない。
捨てられるハズもなければ、立ち直る事などない。
抱えて生きていくのだ。抱きかかえて。
少しだけでも、1秒だけでも、心軽やかな時間が増やせればいい。問題ない。
そうやって、どうにかこうにか、なんとかして、生きながらえよう。
人生は不可逆で心に根付いた罪悪感は拭う事などできない。
それでもどうにか。パッと晴れなくていい。曇りでいいから。
マンチェスターの空のように。
悲劇を時折絡め取るユーモアが秀逸
兄の訃報を知り故郷のマンチェスターに戻ってきたリー。
素晴らしい父を若くして亡くしたパトリック。
リーが背負う過去の悲劇と、現在でパトリックが味わう悲劇。2つの哀しみがまるで螺旋のように絡み合うような構成に惹き込まれる。
乗り越えるだけが正ではない。周囲は彼らに寄り添う優しさを見せるがそれも時折押し付けがましく。誰に理解を求めるでもなく、様々な思いを自己消化しようとするケイシー・アフレックの繊細な演技が素晴らしかった。
ミシェル・ウィリアムズがなー ずるかったなーw
じわっ、とさせられる1本。
若い時に見て、大人になったらもう一度観たらまた違った角度から2人の心の動きを捉えられそう。
圧倒的な説得力
構成、演出、役者、ストーリー、すべて素晴らしい。
主人公が元妻と街角でばったり出くわすシーン。
ある意味ここがクライマックスで、
その後に画面に映るすべてがなぜか琴線に触れてくる。
観終わったあと、ちょっとだけ優しくなれる、素晴らしい作品だと思う。
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