マンチェスター・バイ・ザ・シーのレビュー・感想・評価
全306件中、41~60件目を表示
主演のケイシー・アフレックが素晴らしかった
普段はアパート4棟を担当する便利屋さんで、客の対応は良かったり悪かったり、ちょっとでも高圧的な言葉を聞こうものならすぐキレてしまうキャラ。そんなその日暮らし的な生活の中、突然の兄の訃報を受け取り、病院へ駆けつける。
兄ジョー(カイル・チャンドラー)は数年前に心臓病により余命5~10年という宣告を受けていたことから、驚きや悲しみよりも葬儀やら後処理の対応策に追われてしまう。ジョーの妻は離婚していて、遺族となったのは息子パトリック(ルーカス・ヘッジズ)だけ。そのパトリックを連れまわすかのように、死後処理を行うのだが、遺言にはパトリックの後見人にリーが指名されていた。
パトリックには自分と一緒にボストンまで来るよう説得するものの、パトリックは友人や恋人がいるため断られてしまう。それなら逆に故郷のマンチェスター・バイ・ザ・シーに引っ越してこいなどと言われるが、リーにはその場所での辛い過去があったのだ。それは自分が原因で引き起こした火災により幼き子3人を亡くしたこと。喪失感と罪悪感から警察署内で自殺を図ろうとする姿には胸が詰まりそうになるくらい重くなってきました。
サスペンスならば周りの人間が次々といなくなるのはよくありますが、こうした真面目な作品での喪失感は堪えがたい。孤独に打ちひしがれて他人にも当たり、何とか目的を持って生きていくために甥っ子と共に暮そうと努力する。痛いほど伝わってくるものの・・・
ジョーもリーも妻とは別れている点とか、経緯は想像はできるものの物足りなさを感じてしまいました。長い尺ということもあり、主人公リーの内的再生だけでエンディングまで引っ張るのは辛いものがある。もう一つ終盤に波乱か、意外な回想録とかを映し出してくれれば・・・
【2017年8月映画館にて】
人間として生きて行くには。
ボストン郊外で便利屋として生計を立てている主人公が、兄の死をきっかけに故郷のマンチェスター・バイ・ザ・シーへと戻り、16歳の甥の面倒を見ながら過去の悲劇と向き合っていく―。
ケイシーが、過去マンチェスターで起こった悲劇が少しずつ描かれていくのだけど、とても見て居られぬほど涙する。
彼は最後にルーカスに「マンチェスターは乗り越えられない、辛すぎる」の言葉がこの映画の全てであり、またケイシーの繊細な演技はパーフェクト。
16歳のルーカスも父が亡くなってから、唯一言い合える肉親のケイシーに我儘いったり、罵り合ったり、不安定になり甘えたりする場面も凄く脚本が計算されており、彼もまた繊細な演技がパーフェクト💯でただただ凄いとしか言えない映画。
脚本、監督キャスト全てがパーフェクトな映画。内容は暗いが絶対見て欲しい。
ケイシーとルーカスの今後の未来の話をして行く箇所が、未来に少し光が見える様でホッとする。
いい映画に出会えて感謝、今回3回目の鑑賞。
生きなきゃなんない
ケイシーアフレックに感じるのは覇気のなさである。そんな役柄が多いし、兄と比べているところもある。不真面目で、だらしなく、向日性に欠けている。眠そうな目をして、消え入りそうなハスキーヴォイスでボソボソ話す。特徴的なのは間違いないが、概して親しまなかった。
しかしこの映画を見てケイシーアフレックの身上と、人々がその演技をほめる訳が理解できた。完全なはまり役だったと思う。
まず、いつものケーシーアフレックが出てくる。覇気がなく、動作も重く、投げやり。仕事で顧客と言い争う。バーで飲むと喧嘩を売る。会話が虚ろで、つねに心ここにあらず。いつものケイシーアフレック──に輪をかけて、生気がない。
映画は、過去と現在が交錯する。
かつてのリー(ケイシーアフレック)は、とても快活だった。
中途で、リーが背負うことになった悲劇が描写される。それは恐ろしい過失で、彼の無気力と無軌道が、いっぺんに納得できる。
そこから映画は、弾幕のように悲愴が降ってくる。
罪の意識を背負って生きるリー。
I cant beat it.
そのどうしようもなさが、彼と観るわたしたちの処理能力を超え、ただひたすらどうしようもない。
不幸が重なって、兄ジョーを心臓発作で失う。
リーはジョーの息子=甥のパトリックの後見人となる。
兄の埋葬までの行程が映画の主筋。
遺品のボートが、パトリックとリーを仲介する。
パトリックは16歳。たくさんの友人に囲まれ、彼女が二人。アイスホッケーをやり、バンドもやる。青春を謳歌し、生気に満ちている。
失うものは何もないリーにとって、パトリックは相反する立場として存在する。しかし、二人には、どこかに通い合うものがある。
パトリックはリーに人生のつらさや喪失や呵責を見る。
リーはパトリックに、この世に繋ぎとめる何かを見る。それが何かわからないが、生きているなら、生きなければならない。なんとしても、やっていかなければならない。その哀感がケイシーアフレックの表情と背中にあふれる。
一般にマンチェスターといえばイギリスだが、アメリカにはマンチェスターなる地名が幾つもあるそうだ。ただしこの海辺の街は単にマンチェスターではなく、Manchester-by-the-Sea、一つづりで地名、とのことである。
きれいな海辺の街だが、Manchester-by-the-Seaから連想される叙情へは一ミリも落とさない。街も海も、何も癒してくれないし、誰も見守ってやしない。ただそこに泰然とある。お涙頂戴の極北をいくシビアなドラマだった。
たまには、墓参りいこう。
・「容疑者ホアキン・フェニックス」で業界干されたケイシー・アフレック...というふうに見ると感慨深い
・人との距離感が取れなくなっている感を描く上で、ケイシー・アフレックの根暗な感じがとても合っている
・生活の中で起きる悲劇は、だいたい大丈夫ではあるけども、大丈夫じゃない出来事は確実にある。
・それでも大丈夫なのではあるが、ただ漫然と過ごしているだけでは大丈夫にならない。
・じゃあなにをすべきか。
・そんなことしてる場合じゃないという、小さなことをひとつひとつやること
・会っていなかった身近な人たちに会うこと
・「親戚」という存在
・主人公は、死んだ兄に導かれるように、甥のどうでもいいことに付き合わされる
・そうこうするうちに、事故のときから止まっていた時計の針が、主人公の中で動き出す
・やがて、本当の話ができないでいた妻とも向き合う
・そのやりとりがリアル
・お互い言いたいことが溢れちゃってくっちゃくちゃになってまとまらなくなる感じがgood
・主人公と甥とで、守る側と守られる側が逆転していく
・主人公は実は甥にさえも守られていたのだと気付かされる
・失ったものはあるけれど、それはそれとして、自分はいま何を持っているのかにじわじわ気づいていく主人公。足るを知っていく。
(甥とボールを投げ合うシーンいいすね。。。)
・親戚とかつい疎遠になってしまう身近な人とは会っといたほうがいいなと思った映画
・たまには、墓参りいこう。
つらくとも、乗り越える
佳作だが地味
主人公リーの自暴自棄な態度の理由が徐々にわかっていくプロセスが上手だった。過去のエピソードが頻繁に挟まれるけど、きちんと過去の話だとわかる。これ、結構大事。
リーの過去の経験は想像したよりも重かった。罪を問われることもなく、その後の日々を過ごさなきゃいけない。そりゃ救われない。でも、甥のパトリックとのやり取りは妙に軽い。それが逆にリアルな気がした。
ラストもとても地味だ。何か驚きの展開が待ってるわけではない。パトリックが来たときのための部屋をリーが確保しようとするくらいのもの。でもそれが彼にとってものすごい変化ということか。
いや、いい映画だとは思うけど、地味すぎて大絶賛!とはならなかった。
男の苦しみ
レビュー
良い映画
とても良い映画でしたが、何が良いのかと聞かれると難しい映画でもあるように感じました。
普段はこのようなところに感想を書いたりしないのですが、整理のために書いてみようと思います。
私がこの映画の見どころだと思う点は、
主人公の時計は止まったままだが、周囲は否応なく変化していく点であると思っています。
兄の死をきっかけにして周囲の変化に気付いていく主人公。
特に過去の事件の当事者でもある元妻が再婚し、子供をもうけているということ。
主人公は自分を許せないまま時が過ぎていたのだろうと思わせる序盤の日常風景の描写。
残酷な現実かもしれませんが、素晴らしい構図でもあると思う。
他者と深く関わろうとしない主人公だが、これからの甥の人生を慮ることになるにつれ、過去と向き合いながら周囲と関係を築いていく。
こうなるのも兄の思惑なのかもしれないと思わせる中盤の兄との事件直後のやりとり。兄貴は弟思いの優しい人物だった。
こちらは希望を抱かせるような描写であるし、素晴らしい構図だとも思う。
印象深いシーンは確かにあったはずなのに、日常風景を切り取ったようなリアルな描写だから見終わった後の印象がぼやけやすいのかな。
長文失礼しました。
どちからかというと、女性より男性の方がこの映画が好きそう
憂鬱で何を求める訳でもなく、ただ淡々と日々をやり過ごす男性の過去が徐々に明らかになり、その出来事と直面せざるおえないタイミングが訪れて…というのが主なストーリー。
主演のケイシー・アフレックはこの映画でアカデミー主演男優賞を受賞していますが、自分的には演技にあまり特別な物が感じられなかった。ストーリーは考えさせられるものだけど、主人公の男性の様に感情を殺さざるおえない心境になってしまい、真実がわかってからはずっとこの気持ちのままで鑑賞を終えた。生きていく中で、原因は違ってもこういった気持ちを背負っていると思うので、共感性が高いテーマだと思う。
特にカタルシスはないので地味なんだけどずしーんと重くのしかかってくる。2度は観たくないというか、自分の持っている重たい物で十分だわ…と思ってしまった。
自分なら死んだがまし
主人公の無気力には理由があった。衝撃の事実が明らかになり、甥っ子は事件を何も知らないのか?この街に叔父が引っ越してこいとは良く言えるなと思った。便利屋ならここでも出来るとかね。でもそんな二人だけど主人公が主に折れる感じで労わりあう気持ちが出てくる。選曲、映像の撮り方がわざとらしく感じた。
心に残り続ける作品のひとつ
心に残り続ける作品のひとつ
全306件中、41~60件目を表示