マンチェスター・バイ・ザ・シーのレビュー・感想・評価
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観なきゃいかん。
本作のCMを映画館で観た時に、直感で名作だと思った。ようやく観る事が出来たが、レイトショーで館内ガラガラ。人目を憚らず泣けたので良かった。他の席からも、鼻を啜る音が聞こえてきたので、皆泣いていたのだろう。
リーの心の傷みが、息苦しくなる程伝わってきた。突然やって来る悲しみは、人を脆くもし、強くもする。季節は平等に廻るけれど、其々に廻る時間は、平等ではない。
人生のある時点で、立ち止まってしまった、否、立ち止まりたくなってしまった、リーの背中を、故郷の思い出と、パトリックとの共有の悲しみが、そっと押していく。
二人が其々に失ったものを受け入れていく懸命な足掻きは、春の訪れと共に、蕾をつける。
再生の始まり
とてもリアルで誠実な物語だな、という印象です。
途中に明らかになったリーの重すぎる過失。自分のミスで2人の実子を殺したのだ。しかも若干ラリっていた状態で。
「そんな超ヘヴィな十字架を、しかも事故が起きた街で背負っていくのか!乗り越えられるの?無理では?」と思って観ていたら、リーの乗り越えは描かれず。むしろ安易な着地に持って行かないケネス・ロナーガン監督の誠実な姿勢に少しホッとしました。
とはいえ、リーの変化はバッチリ描かれていて、観応え充分。
特に印象に残るのは、本作のハイライトであろう「乗り越えられないんだ」という、リーの独白シーン。
それまでリーの時間は動かなかった。火事の後の警察署での自殺は未遂に終わったが、リーの心はあの時死んでいた。
しかし、リーはその言葉を語れたことで、乗り越えられないことを認めることができた。生ける屍だったリーが、少しだけ蘇った。今までは辛すぎる傷と向かい合えなかったが、この一言を語れたことで、ついに向かい合えて、一歩踏み出せた。
そして、それまで紡がれてきたリーや周囲の人たちの心理描写がとても丁寧だったからこそ、その一言が重くリアルに迫ってきて、心に沁み入る。
その後の船の上で見せる笑顔や、新しい住居にパトリックを呼べる部屋を設置したい、というラストのリーの発言は、前半とはまるで別人。こう考えると、この映画はリーの再生の始まりを描いた物語だった。
リーの心に光が射したこととマンチェスター・バイ・ザ・シーに春がやってきたタイミングを重ね合わせるラストはとても見事で、時がわずかに動き出したんだなぁとしみじみ思い、深く静かに感動しました。
ランディとリーとの邂逅も良かった。ランディも心に蓋してごまかして生きていた。なので、リーとの再会し、思わず気持ちをブチまけてしまったことは、彼女も自分と向かい合うきっかけになったようにも思えました。あの出会いがあってこそ、両者が乗り越えられていないことを意識化出来たのでは?それも含めてリーは街に戻ってきて本当に意味あったな、と感じました。
欠点としては、尺が長いこと。もう少し尺を短くまとめた方がよりグッと迫ってくるようにも思えます。深いけれどもシンプルな話なので、長くする必要はないような。散漫に思えて印象にも残りづらく、本当に惜しいなぁとしみじみ思います。
また、意外なほどにギャグのキレがあり、サンディ絡みの演出は悪意に満ちていて最高でしたね。バンドの痛さがハンパない。サンディ母のアホみたいな感じとかヒドすぎて爆笑。あの親子はきっとその場のノリで作られたキャラだろう。ストーリーとまったく関係ないし。監督は悪ふざけしているとしか思えず、ホント最高!
(尺を短くするならば、真っ先に切られるのはこの辺なんだけど)
ギャグとは言えないけど、パトリックの母親夫妻の気色悪さもいい感じで毒があってシリアスながらも少し笑ってしまった。
この映画はなんだかんだ優しいよ
あくまでも主役はこの町
2017-31
アメリカの話なのね。
左ハンドルでアメリカ英語なので、🤔と思っていましたが、このマンチェスターはイギリスではなくアメリカのほうでした。
こちらは行ったことがないのですが、海に囲まれたちょっとグレーな感じ、日本海側の街に似た雰囲気がありますね。
主人公の心を閉ざしている感じもあわせて、なんとなく『追憶』と重なりました。
ケイシーの静かな演技がいい。
役に溶け込んでいました。
お兄ちゃんの作品はよく見てて、ケイシーのは片手くらいしか見たことなかったけど、これからチェックしたいと思います。
パトリックが、冷凍庫から冷凍した魚とかがボロボロ落ちてくるのをうまく入れられなくて、「お父さんを凍らせないで」と、心が壊れていくシーンが心に響きました。
それぞれの生き方
●厚い氷が溶けるには時間がかかる。
想像を絶するとはその通りで、かける言葉もみつからない。心を固く閉ざした男。故郷を離れひっそり生きる。冬曇りの日本海みたいな灰色の景色に囲まれて。
伏線も仕掛けもない。その分、余計なことを考えずに作品に集中できる。過酷すぎて感情移入も難しいが、親友だったらどうするか考える。本人がいちばん辛いだろうけど、周囲もまた辛い。何ができるわけでなく、できないからまた辛くなる。
あれはやっぱり、そういうことを飲みこんだ兄のやさしさなのだと思う。そう思うとまた泣けてくる。唯一みせる船の上の笑顔がまたなんともいえない。
固くなった心が静かにゆっくりと溶けていく。あれは春の日差しだろう。
「生きる辛さ」を描いた映画
そこそこの話題作にも関わらず、上映館数が少なすぎる!
全国で32館とは、どーゆーことか?!
「美女と野獣」なんて375館で上映してるというのに、この違いはなんなんだ!
と、観る前は日本の映画業界に対して憤慨してました。
さて、本編は。。。
こんなにも「生きる辛さ」をありのままに描いた映画があっただろうか、と思うくらい鑑賞している間中、遣る瀬無さ、不甲斐なさ、さめざめとした感情に襲われたことはありませんでした。
それは、鑑賞中よりも、鑑賞後(つまり、これを書いている今)の方が、より一層胸につっかえて感情を揺すぶっています。
癒えることのない傷。
不感症になることで、避けていた傷。
人と交わないことを蘇生術とするしかない傷。
この映画は、そんな傷を、包み隠さず装飾せずに描いていきます。
そこには、「希望」や「許し」が存在することはなく、ただただそこに存在する登場人物たちの、埋まることのない心の傷を、誠実に容赦なく描いていきます。
観客は、そんな登場人物の姿を傍観することしかできません。
ただ、傍観するうちに、それは彼らであり自分たちだということに気付かされます。
存在すらしない彼らに、自分自身の人生を見つめ直すきっかけを与えられ、彼らとなにも変わらない「生きる辛さ」に気付かされます。
自分はマンチェスターという場所を知りません。
いままでマンチェスターユナイテッドというサッカーチームくらいでしか聞いたことがなく、
その華やかなビッグチームから、おそらく大都市なんだろうと思い込んでいました。
でも、この映画を見るだけで、そこはイギリスでもどん詰まりの田舎だ、と察することができます。
そのどん詰まりは、つまり今の自分のいるこの場所です。
どん詰まりは、どんなに逃れようとも、どん詰まりに行き着くしかありません。
本作には「ボート」のくだりがでてきます。
そのボートこそが、どん詰まりをより効果的に表現されていて、唸らされます。
世界は広く、どこまでも海は広がり、無限の可能性はありますが、結局はどん詰まりから離れることはできないんです。
多くの映画は、「希望」を描きます。
ただ本作は、映画という「希望を観るもの」という根底を覆す作品でした。
今世紀、観ないと後悔する映画のひとつです。
良作ですね
起伏だけが表現ではない
時間としては長い映画でありながら、セリフの量はそう多くはない。そんな作品でのケイシー・アフレックの演技は素晴らしいとしか…ただの演技なのではなく、間の取り方、表情などが圧巻。
悲劇的な過去と向き合うリー。2つの時間軸が交差的に絡むことでケイシーの演技のコントラストがはっきりとしていて面白かった。
彼に残る罪意識が残された人生に大きく影響しているわけで、それは普遍的であることを静かなテンポで描いたのは見事と言うほかない。
ケイシー・アフレック
しかし、女の人はみんな新しい生活を始める。
これが一般的な女性観なのかな。
新しい生活に踏み出して許しを乞う女。これはちょっとよく分からないけれど。
時の経過が女の人をそういう気持ちにさせるのか。
普段からリーが、危なっかしいことをして、家族を危険に晒しそうな人だったとしたら。それを何度も言っているのに改めてくれなかった結果のあの事故だったとしたら。
とても許せる気にはならないだろうな。
あの時死なせてやれとも思うけれど、甥っ子がいて良かった。
兄ジョーは、パトリックと生活することでリーが生きていけると思ったから、後見人にと託した。
リーにとってパトリックが最後の砦だ。
パトリックはリーにとって生きる意味になる。
絶望とか孤独とかと折り合いがつかなくても生きていかなければならなくなるから。
「お前が遊びに来るかもしれない」だから生きていける。
家族や血縁のありがたさ、家族を持つ意味を感じる。何をしてくれなくても、迷惑をかけられていたとしても、生きる縁となりうる。自分自身の問題として。
凍てついた心の雪解けを感じる
長々と、惹きつける
船出
誠実と共助を描いた作品。
心を映す画。
人生を表す音楽。
受け手に委ねる役者の間。
どれも一級品だった。
犯した罪に対する罰が与えられないどころか、慰めや優しさを持って迎えられてしまい、どうしようもなく壊れてしまうリーの痛ましさ。
振り返ると、奔放な生活ながらも娘達からは慕われ、夫婦仲も特別悪い訳ではない。
ただどこかにボタンの掛け違えがあった。
エンジンを新調し、心機一転再出発かと思いきや、逃れられない過去が訪れる。
ここで初めて互いが真心を持って向き合う。
この最も美しい瞬間が別れの時とは、なんと切ない物語だろうか。
結局のところ、リーは子を失った父親という十字架から逃れられなかった。
だが変わらずとも変われずとも、あらぬ方向へ跳んだボールは、ただ拾いに行けばいい。
彼は立派に父を失った子の港となった。
ひとえにそれは、ジョーの粋な計らいによるものである。
彼は愛する者達に、死者として出来ることの全てを遺書に込めて贈った。
リーとランディ、パトリックとエリーズ、そしてリーとパトリックがそれぞれ向き合い支え合う事。
冷凍保存されたマンチェスター・バイ・ザ・シーに降り積もる雪を掻き、地に足を付け、強く清く真っ直ぐに生きる様、願い導いたのだ。
行くあてもなく、二人はのんびりと釣りに興じる。
そんな彼等の前途洋々たる船出を賛美歌が包む。
理解出来ます
物静かな哀しく前に向かう話
最優秀主演男優賞は納得
考えたら苦しい。難しい。
乗り越えられなくてもいい。
喪失感は簡単には埋めることはできない。
一人で考え込まない。誰かをもっと頼る。
忘れることもできないから、物事を受け止められれば十分だと思います。
景色と音楽が素敵です。
甥とのキャッチボールに、優しさを感じます。
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