ラビング 愛という名前のふたりのレビュー・感想・評価
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静かなる社会派映画が示す現・アメリカ
ただ愛故に結ばれたかった2人なのに、異人種間婚姻を認めないかつての法律によって行く手を阻まれる。しかし、その理不尽に対して、流れに身を任せるようにあるべき岸辺へと運ばれて行く夫婦の、なんと寡黙にして自然体であることか!?途中で手を差し伸べる人権団体や後押しするメディアの喧噪すら遠くの出来事のようだ。この静かなる社会派映画の有り様は、「ムーンライト」にも共通する新たな潮流かも知れないと、愛し合う夫婦の見つめ合う眼差しに引き込まれながら漠然と感じていた。もはや、あからさまな暴力や絶叫に近い抵抗の声を描く作品は、分断されたアメリカでは有効ではないのかも知れない。映画の新境地を感じさせる1作だ。
無名でいたかった人たち
史実のラビング夫妻は知らない。一連の出来事もこの映画で知った。ハッキリしているのは、本作のラビング夫妻は、一緒に暮らすことを許されていれば満足だったはずで、人種差別に反対する気持ちも積極的には持ち合わせていなかった。
異人種間の婚姻の権利を求める裁判も、ラビング夫妻にすれば巻き込まれたようなもの。矢面に立つことも世間の注目を集めることも望まない2人が、次第にそれでは済まない問題なのだと自覚するようになっていく。
かといってジェフ・ニコルズ監督は、社会に立ち向かったヒーローの映画にはしなかった。夫は最後まで無名でいることを望み(そんなことは不可能だが)妻は夫に従って最高裁にも姿を現わさない。
夫婦ですから、と言う妻の真意はわからないが、決して進歩的とはいえない夫婦像を持つふたりが価値観を変えないまま歴史を変える。それでいて、二人には自分たちの功績がわかっていると伝わるラストが実にいい。
【”結婚は生得権である。”1950年代、異人種結婚を違法としていたバージニア州で恋に落ちた異人種の男女の愛が最高裁を動かした物語。】
ー 恥ずかしながら、"ラビング対バージニア州裁判"も、"ACLA(アメリカ自由人権協会)"も、この映画で描かれた事実も知らなかった。
映画とは、もちろん娯楽であるが、色々と学びを得る事が出来るモノでもある事を再認識した作品である。
そして、淡々としたトーンの中、レンガ職人の寡黙な男ラビングを演じたジョエル・エドガートンと、強い意志を持っていた恋人のミルドレッドを演じたルース・ネッガに魅入られた作品である。ー
■1950年代。バージニア州。
レンガ職人のラビングは、恋人のミルドレッドから妊娠したと告げられ、大喜びで結婚を申し込む。だが、バージニア州では異人種間の結婚が法律で禁止されていた。
そこでふたりはワシントンDCで結婚し、地元に新居を構えて暮らし始めるが、ある夜保安官に住居に踏み込まれ、逮捕されてしまう。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・今作品では、まさに歴史的な判決”異人種間結婚を禁じる法律を無効にするラビング対バージニア州裁判”が描かれているが、裁判風景は一切描かれていない。
個人的には、ここを描いて欲しかったのであるが、この作品ではそんなドロドロした画を見せたくはなかったのだろうな、と思い直す。
■逮捕され、懲役一年、執行猶予25年。但しバージニア州を出る事が条件というバージニア州判決に従い、ラビング夫婦は姉のいるワシントンDCで暮らし始める。
そこで、二人は三人の子を作るが、ある日一人の子が車に轢かれてしまう。軽傷であったが、ミルドレッドはケネディ司法長官に手紙を書くのである。
彼女にとっては、劇中でも口にしているように"ワシントンDCと言う都会では、子供を育てられない"という思いだったのだろう。
・驚くのは、即座にACLA所属の弁護士バーナード・コーエンが来て、二人をバージニア州で過ごさせるために策を練る姿である。
・ラスト、故郷のバージニア州で、結婚前にラビングが買ってあった土地に家を作るシーン。ラビングが、静にレンガを積んで行くショットがとても良いのである。
<今作を観ると、その背景にはケネディ司法長官の存在が大きくあることが示唆されている。だが、人種間の和解を唱えていた彼は兄と同じく暗殺されてしまっている。
それでも、私はこの抑制したトーンで作られた作品の意義は、現代アメリカを見ていると、大きいと思うのである。>
タイトルなし(ネタバレ)
こう言った法律がジム・クロウ法(形の上で)が廃止になったあと(1964年)もあったのは知らなかった。しかし、まだ、あるはずだよ。何しろ、アメリカ合州国だからね。
カナダには壁がないのに、メキシコにはある。
どうなんですかね。
50州もあるから、絶対にこう言う法律はあるよ。
まぁ、内政干渉になるから関係ないけど。
この映画と性的なマイノリティーの権利と関連付けようとする方がいらっしゃるが、基本的に全く違うと僕は思う。つまり、邦題が間違いを増長させているが、異人種間であっても、この2人の場合は子供が出来るのだ。つまり、二人だけの愛の行方の問題だけでは済まないのだ。その点を考慮すべきと思うが。映画の中でも少しふれられる。このバージニア州は混血児が増える事を問題視しているのだからね。
だから、ジム・クロウ法が廃止されたあとも、こう言った理不尽な法律が残ったと思われる。愛は『どんな形であっても認める事(例外はある幼◯性愛、近親◯配)』は当たり前だが、男と女の愛なんて言うものは、少なくとも太古のお猿さんより前の時代から当たり前の愛なんですからね。
それを認めないなんて考える事は、『猿にも劣る』考えと僕は思うが。
つまり、ナチズム以外なにものでもない。
追記
製作者がオーストラリアと分かり追記する。
オーストラリアの白豪主義が正式に廃止されたのは1977年である。
愛する人と一緒にいたいだけ
ラブの現在形がタイトルなのかと思っていたら、ラビングさんについての話だった。まあでも、愛について語る話でもある。アメリカにはこの夫婦の名前をとった、ラビングデーという記念日があるそうだ。
白人であるリチャードは、黒人のミルドレッドと相思相愛。肌の色は関係なく、ただお互いを好きなだけ。ちゃんと結婚して一緒に暮らしたい。そんな自然なことが、法律で禁止される(ばかりか、罰を受ける!)。彼らに協力する人も現れるが、私、この人は悪い奴だと疑ってかかっていた。だって、小ズルそうな顔してたし、事務所を時間借りしてたし。リチャードも信用してなかったよね。○○団体とか○○協会って、あやしい場合あるでしょ。だけど、結局まともなところで、志を持った人だった。ミルドレッドだまされてる!と心配してしまったが、杞憂だった。
リチャードが寡黙で淡々とした人物だったが、見張りをしたり、自分で家建てたり、本気で家族を守る姿に感動した。この2人がお互いに思い合うところを、子役とか使って子供時代から描いてくれたら、もっとピュアさが感じられるんじゃないかなぁ。代わりにLIFEのカメラマンがいい仕事してたけど。
アメリカの黒歴史である人種差別により、白人と黒人が結婚できなかった時代。バージニア州の判決文には笑える。黒人をアメリカ大陸に拉致してきたのは、どう言い訳するんじゃ。もといた場所に戻してみろ。まあ、リベリアではやったけど、これもまた争いの種になってしまった。一度動かしたものは、元の位置には戻らないのだ。いまだに差別はなくなっていないかもしれないが、少しでも改善されていると思うので、希望は持ちたい。
BS松竹東急の放送を鑑賞。吹替版。
異人種間結婚の罪
ただ一緒に暮らしたいだけなのに
タイトルなし
愛し合うことの美しさを感じられる
ふたりの愛ある営みを見つめる
愛の物語。胸に来ました。
「そういえばアカデミー賞で作品の名前聞いたことがあるなあ。愛という名のふたりって、べたべた恋愛もの?」。
危うく見逃すところでした。
正しいサブタイトルは「愛という”名前”のふたり」。
”ラビング裁判”と呼ばれた、「異人種間結婚禁止法」を巡る話。
最初は夫役も妻役も、いまいちぱっとしない脇役顔に見えたんです。
なのでどうかなあ・・・と思ったのですが。
愛し合って子を授かり、結婚する。
当たり前なはずなのに、50~60年代は当たり前じゃなかった。
ましてや逮捕され、州外追放。戻ったら懲役って!!。
身重の女性にそんな仕打ちする?。
よくある人種差別を乗り越える話だと、デモだったりいろんな運動が起きるのですが。
この夫婦は、認めてもらえないなら仕方がない。大切な家族が傍にいるのが一番。って淡々としてます。
もしかしたらそこが、意志の強さだったりするのかも。
裁判物ってほどでもないんですね。途中から出てくる弁護士も、なんか胡散臭いし。
妻は割と裁判に乗り気だけど、夫はそれを静かに見守るだけ。
この辺から夫の存在感・家長としての責任感が出てきて。最初とは見間違うほど力強く、たくましく見えてきました。
終盤の最高裁判決の日。夫婦が取った行動。いやー、ここでジーンときました。
「家庭を持ち、子を育て、みんなで生きていく」。
いい終わり方でした。
無知なだけですが・・・
少しづつ淡々と
本格社会派映画
名字だったのね。最後の写真が泣ける
さすがにルースネッガほど美人じゃないしジョエルエドガートンほどゴツくもなかったけど、それでも劇中マイケルシャノンが意味深に撮っていた写真が実際のものだと分かると涙。
寡黙な働き者のリチャードがいい。
静かすぎて盛り上がりにかけるけど、最高裁判事に「俺は妻を愛している」と伝えてくれと言った後ずっと喋らないの最高。
エンディングの歌詞が出る歌がぴったりで、どこの有名なブルースシンガーかと思ったら監督のお兄さんでした。Ben Nichols - Loving
https://youtu.be/HOZt1i5_5DM
異人種結婚禁止なんて
1958年のバージニア州では異人種の結婚は禁止されていたが、愛し合う白人の男と黒人の女が隣の州で結婚、戻ってきて生活を始める。
二人は逮捕され、25年間、バージニア州退去を命じられる。
実話だが、主人公二人の静かさがとても印象的。
ジェフ
静かなる愛に染み入る。
異人種間結婚が法律違反と知りながら、
周りの反対を押し切って州の裏をかいてD.Cで結婚!という積極的な行いではなく、ただ2人一緒にいたいだけ…ひっそりと家族になりたいだけ という静かなる愛による行い。
ヴァージニアに戻った2人はすぐに逮捕され引き離されるが、妻ミルドレッドの手紙による訴えをきっかけに5年後に上訴の動きを取り始める。けど夫は何だか全然乗り気じゃないし、妻も夫に従うスタイルを貫き通して最高裁にも現れない。
この2人は歴史を、法を変える史実に巻き込まれた立場であり決して自らと周囲を救う為に立ち上がったヒーローではなかった事が感じ取れた。
描かれる2人の、事の流れに身を任せながらも不安を感じ、常に警戒心を抱いている素ぶりがとても切ない。ジョエル・エドガートン演じる夫が心身疲弊して妻の前で泣いちゃうシーン、こちらまで貰い泣きしそうになる。敏腕弁護士から判事に伝えたい事を尋ねられ、妻を愛していると答えたシーン。愛を口に出さなかった硬派な彼だからこそ、めちゃくちゃ重みがあった。ラストも記者に囲まれる中、殆ど言葉も出ずにひたすら妻を抱きしめる姿。そばにいたいという密やかな願いがようやく世界に受け入れられたのだという事がよく分かるエンディング。
ジョエル・エドガートンの硬派で物静かな夫像の自然体さに感動。また、ヴァージニア州の田舎の静かに流れる自然の景色による映像美が素晴らしい映画だった。
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