ラビング 愛という名前のふたりのレビュー・感想・評価
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静かなる社会派映画が示す現・アメリカ
ただ愛故に結ばれたかった2人なのに、異人種間婚姻を認めないかつての法律によって行く手を阻まれる。しかし、その理不尽に対して、流れに身を任せるようにあるべき岸辺へと運ばれて行く夫婦の、なんと寡黙にして自然体であることか!?途中で手を差し伸べる人権団体や後押しするメディアの喧噪すら遠くの出来事のようだ。この静かなる社会派映画の有り様は、「ムーンライト」にも共通する新たな潮流かも知れないと、愛し合う夫婦の見つめ合う眼差しに引き込まれながら漠然と感じていた。もはや、あからさまな暴力や絶叫に近い抵抗の声を描く作品は、分断されたアメリカでは有効ではないのかも知れない。映画の新境地を感じさせる1作だ。
無名でいたかった人たち
史実のラビング夫妻は知らない。一連の出来事もこの映画で知った。ハッキリしているのは、本作のラビング夫妻は、一緒に暮らすことを許されていれば満足だったはずで、人種差別に反対する気持ちも積極的には持ち合わせていなかった。
異人種間の婚姻の権利を求める裁判も、ラビング夫妻にすれば巻き込まれたようなもの。矢面に立つことも世間の注目を集めることも望まない2人が、次第にそれでは済まない問題なのだと自覚するようになっていく。
かといってジェフ・ニコルズ監督は、社会に立ち向かったヒーローの映画にはしなかった。夫は最後まで無名でいることを望み(そんなことは不可能だが)妻は夫に従って最高裁にも姿を現わさない。
夫婦ですから、と言う妻の真意はわからないが、決して進歩的とはいえない夫婦像を持つふたりが価値観を変えないまま歴史を変える。それでいて、二人には自分たちの功績がわかっていると伝わるラストが実にいい。
こう言った法律がジム・クロウ法(形の上で)が廃止になったあと(19...
こう言った法律がジム・クロウ法(形の上で)が廃止になったあと(1964年)もあったのは知らなかった。しかし、まだ、あるはずだよ。何しろ、アメリカ合州国だからね。
カナダには壁がないのに、メキシコにはある。
どうなんですかね。
50州もあるから、絶対にこう言う法律はあるよ。
まぁ、内政干渉になるから関係ないけど。
この映画と性的なマイノリティーの権利と関連付けようとする方がいらっしゃるが、基本的に全く違うと僕は思う。つまり、邦題が間違いを増長させているが、異人種間であっても、この2人の場合は子供が出来るのだ。つまり、二人だけの愛の行方の問題だけでは済まないのだ。その点を考慮すべきと思うが。映画の中でも少しふれられる。このバージニア州は混血児が増える事を問題視しているのだからね。
だから、ジム・クロウ法が廃止されたあとも、こう言った理不尽な法律が残ったと思われる。愛は『どんな形であっても認める事(例外はある幼◯性愛、近親◯配)』は当たり前だが、男と女の愛なんて言うものは、少なくとも太古のお猿さんより前の時代から当たり前の愛なんですからね。
それを認めないなんて考える事は、『猿にも劣る』考えと僕は思うが。
つまり、ナチズム以外なにものでもない。
追記
製作者がオーストラリアと分かり追記する。
オーストラリアの白豪主義が正式に廃止されたのは1977年である。
愛する人と一緒にいたいだけ
ラブの現在形がタイトルなのかと思っていたら、ラビングさんについての話だった。まあでも、愛について語る話でもある。アメリカにはこの夫婦の名前をとった、ラビングデーという記念日があるそうだ。
白人であるリチャードは、黒人のミルドレッドと相思相愛。肌の色は関係なく、ただお互いを好きなだけ。ちゃんと結婚して一緒に暮らしたい。そんな自然なことが、法律で禁止される(ばかりか、罰を受ける!)。彼らに協力する人も現れるが、私、この人は悪い奴だと疑ってかかっていた。だって、小ズルそうな顔してたし、事務所を時間借りしてたし。リチャードも信用してなかったよね。○○団体とか○○協会って、あやしい場合あるでしょ。だけど、結局まともなところで、志を持った人だった。ミルドレッドだまされてる!と心配してしまったが、杞憂だった。
リチャードが寡黙で淡々とした人物だったが、見張りをしたり、自分で家建てたり、本気で家族を守る姿に感動した。この2人がお互いに思い合うところを、子役とか使って子供時代から描いてくれたら、もっとピュアさが感じられるんじゃないかなぁ。代わりにLIFEのカメラマンがいい仕事してたけど。
アメリカの黒歴史である人種差別により、白人と黒人が結婚できなかった時代。バージニア州の判決文には笑える。黒人をアメリカ大陸に拉致してきたのは、どう言い訳するんじゃ。もといた場所に戻してみろ。まあ、リベリアではやったけど、これもまた争いの種になってしまった。一度動かしたものは、元の位置には戻らないのだ。いまだに差別はなくなっていないかもしれないが、少しでも改善されていると思うので、希望は持ちたい。
BS松竹東急の放送を鑑賞。吹替版。
異人種間結婚の罪
1958年、ジョエルエドガートン扮するリチャードは、妊娠をきっかけにルースネッド扮する恋人の黒人女性ミルドレッドとワシントンD.C.で結婚したが、住んでいるバージニア州法では異人種間結婚は違法でありふたりは逮捕された。後にリチャードだけ釈放されたが、ミルドレッドは収監されていた。自由の国アメリカでも当時は人種差別が激しく結婚が罪に問われていた訳だ。愛するふたりには耐えがたい事だ。これが歴史と言うものだ。
ただ一緒に暮らしたいだけなのに
静かなドキュメンタリーのような映画。
おおきな起伏もなくただ進んでいく。
こういう映画を見るたび、人種差別の根深さを知る。
教科書では文字だけでしか分かっていなかったことを
現実として知ることができる。
学校の授業をすべて映画で教えてくれたらいいのに。。。
その方が歴史をちゃんと学べそうだ。
タイトルなし
異人種間で結婚が認められないバージニア州での実話。思いの外良作。寡黙ながら嫁を守るジョエル・エドガートン、夫を健気に支えながら、粘り強く裁判での勝ちを信じるレネ・ルッガ、長い台詞などなくとも伝わってきた
愛し合うことの美しさを感じられる
異人種間の結婚が悪だとされていた1960年代のバージニア州で、黒人の妻と白人の夫による愛の戦いの実話。
連邦裁判まで戦い抜き愛の勝訴をするまでを描いたLoving夫妻の実話であり、当時の価値観を学べると同時に愛の普遍さ、美しさを見に染みて感じることができる美しい映画です。
愛は配慮であり、向き合い方であり、これは尊重も同時に持ち合わせてないといけないもので、尊い行いである分とても難しい状態である二人から学べます。
エンドロールでは、妻のその後の生き方に言葉を失いました。
ふたりの愛ある営みを見つめる
久しぶりの観賞はDVDで。
静かな静かな愛溢れる物語は
じんわり胸の奥まで染み込んでいく。
ふたりの望む先が
どれほど大それたことなのか
彼らはどこか他人事のように
日々の営みを坦々と過ごしていく。
うねりの中に飲み込まれることなく
欲を決して掻くこともなく
互いを信じ家族を愛していく。
南部のあの広々とした
どこまでも続く緑ののびやかさ
そこに息づく因習の根深さ
人間を区別することを
代々受け継いできたこの風土は
人権に大いに反するものであること
それを改めて心に刻み込む。
いつまでも続く余韻の波
不自由な愛が未だに存在する
そんな想いがふと胸を過る。
愛の物語。胸に来ました。
「そういえばアカデミー賞で作品の名前聞いたことがあるなあ。愛という名のふたりって、べたべた恋愛もの?」。
危うく見逃すところでした。
正しいサブタイトルは「愛という”名前”のふたり」。
”ラビング裁判”と呼ばれた、「異人種間結婚禁止法」を巡る話。
最初は夫役も妻役も、いまいちぱっとしない脇役顔に見えたんです。
なのでどうかなあ・・・と思ったのですが。
愛し合って子を授かり、結婚する。
当たり前なはずなのに、50~60年代は当たり前じゃなかった。
ましてや逮捕され、州外追放。戻ったら懲役って!!。
身重の女性にそんな仕打ちする?。
よくある人種差別を乗り越える話だと、デモだったりいろんな運動が起きるのですが。
この夫婦は、認めてもらえないなら仕方がない。大切な家族が傍にいるのが一番。って淡々としてます。
もしかしたらそこが、意志の強さだったりするのかも。
裁判物ってほどでもないんですね。途中から出てくる弁護士も、なんか胡散臭いし。
妻は割と裁判に乗り気だけど、夫はそれを静かに見守るだけ。
この辺から夫の存在感・家長としての責任感が出てきて。最初とは見間違うほど力強く、たくましく見えてきました。
終盤の最高裁判決の日。夫婦が取った行動。いやー、ここでジーンときました。
「家庭を持ち、子を育て、みんなで生きていく」。
いい終わり方でした。
無知なだけですが・・・
この出来事があってからまだ100年経過していないんですねぇ。
差別が酷かった、というのなんとなく知っていますが結婚なんてもってな他!!で、しかも意味不明理由で法律化までされていたとは。
こんなひどい逆境にめげず、これほどまで伴侶を愛せる方がいることにも心を打たました。
愛で溢れるモード全開夫を演じたジョエル・エジャートンさん、素晴らしかったです。
当時の状況がわかりやすく伝わってくる。必要以上にドラマチックに仕上...
当時の状況がわかりやすく伝わってくる。必要以上にドラマチックに仕上げていないところがよかった。
少しづつ淡々と
アメリカの多くの州で異人種結婚が禁じられていた時代に圧力に立ち向かう夫婦の物語。戦うとはいえ派手に、声高に、ではなく少しづつ淡々と積み上げていく感じ。決して多くないけど印象に残る、響く台詞が多く良い映画でした
本格社会派映画
穏便な日常における夫婦の愛情を描き、社会派映画において政治めいたシーンを極力抑えることにより、より一般的な観客に浸透させることが出来た作品だと感じた。人種を超えた夫婦の愛情が本人たちの意図なしに社会を変えていく力の大きさは素晴らしい。
名字だったのね。最後の写真が泣ける
さすがにルースネッガほど美人じゃないしジョエルエドガートンほどゴツくもなかったけど、それでも劇中マイケルシャノンが意味深に撮っていた写真が実際のものだと分かると涙。
寡黙な働き者のリチャードがいい。
静かすぎて盛り上がりにかけるけど、最高裁判事に「俺は妻を愛している」と伝えてくれと言った後ずっと喋らないの最高。
エンディングの歌詞が出る歌がぴったりで、どこの有名なブルースシンガーかと思ったら監督のお兄さんでした。Ben Nichols - Loving
https://youtu.be/HOZt1i5_5DM
異人種結婚禁止なんて
1958年のバージニア州では異人種の結婚は禁止されていたが、愛し合う白人の男と黒人の女が隣の州で結婚、戻ってきて生活を始める。
二人は逮捕され、25年間、バージニア州退去を命じられる。
実話だが、主人公二人の静かさがとても印象的。
ジェフ
ニコルズ、エルガートン、シャノンのトリオが実は今のアメリカで一番あつい、いや、言い方を間違えた。熟れている。
エルガートンのシャツとか、奥さんの着こなしとか、バージニアな感じがたまらない。景色もライティングもなんか凄いハイクオリティ。
夜中押しかけてくるパトカーとか、グッとくる。
にしても、南部の警官の怖さったらない。ハロウィンのコスプレで是非試したい。
静かなる愛に染み入る。
異人種間結婚が法律違反と知りながら、
周りの反対を押し切って州の裏をかいてD.Cで結婚!という積極的な行いではなく、ただ2人一緒にいたいだけ…ひっそりと家族になりたいだけ という静かなる愛による行い。
ヴァージニアに戻った2人はすぐに逮捕され引き離されるが、妻ミルドレッドの手紙による訴えをきっかけに5年後に上訴の動きを取り始める。けど夫は何だか全然乗り気じゃないし、妻も夫に従うスタイルを貫き通して最高裁にも現れない。
この2人は歴史を、法を変える史実に巻き込まれた立場であり決して自らと周囲を救う為に立ち上がったヒーローではなかった事が感じ取れた。
描かれる2人の、事の流れに身を任せながらも不安を感じ、常に警戒心を抱いている素ぶりがとても切ない。ジョエル・エドガートン演じる夫が心身疲弊して妻の前で泣いちゃうシーン、こちらまで貰い泣きしそうになる。敏腕弁護士から判事に伝えたい事を尋ねられ、妻を愛していると答えたシーン。愛を口に出さなかった硬派な彼だからこそ、めちゃくちゃ重みがあった。ラストも記者に囲まれる中、殆ど言葉も出ずにひたすら妻を抱きしめる姿。そばにいたいという密やかな願いがようやく世界に受け入れられたのだという事がよく分かるエンディング。
ジョエル・エドガートンの硬派で物静かな夫像の自然体さに感動。また、ヴァージニア州の田舎の静かに流れる自然の景色による映像美が素晴らしい映画だった。
普遍的な夫婦の愛の営み
今年のアカデミー賞は『ムーンライト』『ドリーム』『フェンス』など人種問題を扱った作品が例年以上にノミネートされたが、それらと同等の高評価だったのにも関わらず、冷遇されたのが、本作。
結局主演女優賞ノミネートだけで、それも昨年のホワイトオスカーの余波を受けてのギリギリノミネートだったらしいが、(『ドリーム』はまだ見てないけど)それらの中ではベスト作!
1958年。恋人同士の白人男性リチャードと黒人女性ミルドレッドは、妊娠を機に結婚を決意。が、二人が住むヴァージニア州では異人種間の結婚は法律で認められておらず、それが許されてるワシントンで密かに結婚。ヴァージニアに戻り新婚生活をスタートさせるが、その事がバレ、二人は逮捕され…。
ハイ、もうこういう人種差別に立ち向かうドラマチックな作品は大好物。あらすじを読んだだけで感動的。
しかも、実話。しかも、この夫婦が法律を変えた。
非常に地味な作品ではあるが、名作!
それにしても、何と理不尽で酷い話。
人種差別への偏見が酷いシーンが序盤で。
夫婦は逮捕され、翌日保釈となるが、保釈されたのは、白人の夫だけ。黒人の妻は留置所の中のまま。
すぐ父親が保釈金を払って解放されるが、二人は会う事を許されない。
夫婦の結婚は罪となり、裁判。
判決は、有罪。懲役1年。執行猶予25年。
しかもその間、二人が同じ州に居る事は固く禁じられる。
二人で居たいのなら、州を出るしかない。つまり、州外追放。
本当に、酷い話、酷い時代、酷い法律。
こういうのも何だが、二人が苦境に立たされれば立たされるほど、夫婦の愛が一層固く結ばれ、映画的に面白くなる。
公民権運動の気運が高まり、団体や弁護士の支援で、夫婦は行動を起こす。故郷に戻る。
故郷を捨てて、新天地で暮らせば平穏な筈なのに。
故郷は捨てられないのだ。故郷には家族も居る。
何より、故郷で自分たちの結婚を認めて欲しい。逃げたら、負けだ。
法律は法律だ。この時代、この地では、それが法律だったのだろう。
でも、これが人種間の問題じゃなく、人間同士の問題だったら?
黒人とか白人とかじゃなく、同じ人間として、結婚を許されない。
人の尊厳や自由を奪う法律なんて、もはや法律じゃない。
法律が変わった…いや、夫婦が変えた今、異人種間の結婚に反対していた奴らの顔が見てみたい。
劇中、夫婦が法廷で自分たちの正当性を声高らかに訴える所か、裁判シーンもほとんど描かれない。
夫婦はただただ堪え忍ぶ。
変わらぬ営みを続ける。
だって、何も悪くないからだ。
それが尚更夫婦の正当性を何より訴える。
無骨ながら愛情深いジョエル・エドガートン。
芯が強く、美しいルース・ネッガ。
共に名演。
『テイク・シェルター』『MUD マッド』と小品だが優れた作品続くジェフ・ニコルズの演出もこれまた素晴らしい。
“ラビング”とは、夫婦の性。
その名の通り、普遍的な夫婦の“愛”の物語。
ラストのラスト、夫婦のその後が文字で紹介され、妻の夫への変わらぬ愛に胸打たれた。
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