「ヒューマンドラマ、味付けビター」ムーンライト いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
ヒューマンドラマ、味付けビター
ダブルミーニングだと勘ぐるのはやめてね(苦笑)
この映画も町山推薦枠だが、やはり有名になったのはアカデミー賞授与式でのドタバタ劇。まぁあれだけ世間に騒がれたら関心は持たれるだろうなぁと、これもステルスなんちゃら?ってゲスの勘ぐり?w
と、穿った見方を抱きながらの鑑賞だが、ストーリーの組み立て方、構成は流石ハリウッドと頷ける見本みたいな流れである。時間も過不足無く、もたつきも感じられず、丁度良い所に落とし込む技術は映画国の白眉と言ったところか。
では、ストーリー内容なのだが、こればかりは好き嫌いがはっきりしてしまうのではないだろうか。ゲイ作品となると、どうしても抵抗感が拭えないのは、未鑑賞だが、『ブロークバックマウンテン』等、その描写の生々しさにフィルターをかけてしまいがちになる。だが、そこまでの絡みのシーンがレベルダウンしているので(代わりのヘルプ行為は中々センセーショナルだが・・・)、逆にそこに行くのかもと内心ドキドキ感を持ったままのラストカットへの流れは、正直安堵したというのが正直な気持ちだ。ホラー映画のそれとは違って、良い展開で不安が消されるという経験は、この手の内容ならではだろう。それ位、このストーリーの3分割中の“シャロン”と“ブラック”の別人じゃないかと驚いた位の主人公の、日本人がおよそ想像する怖いアフリカ系アメリカ人の容貌が男の肩に甘えるシーンはジョークを通り越して、驚愕すら感じる。あんなスタイルでも、頑張って自分を変化させても、やはりアンデンティティは変えることが出来ないというメッセージが静かに訴える作品だ。
映像だが、相当『ライトアップ』について、VFXを使って作り込んでいるとのこと。確かに、光りの多用さは確認できる。例えば、車の中を撮している時の、外の太陽光の鮮やかさと車内の暗さのコントラスト等に美しさを感じ取ることが出来た。月明かりでの彼らの黒い肌がまるでカナブンのような青い玉虫色に光る様は、人間美としての完成型を感じた程だ。
『黒』ではなく『青』、そこに自我を肯定する想いをしたためた監督の自伝的映画なのだということをしみじみと感じた作品である。