「深い葛藤と苦悩と愛の物語」ムーンライト Ryo Hiraoさんの映画レビュー(感想・評価)
深い葛藤と苦悩と愛の物語
主人公の心の変遷と柔らかな表現、美しい映像が醸す透明な空気感。素晴らしい。
物語に奥行きがあって、見る人の解釈も許容しつつ許しと愛に向かって行くストーリーは立場主義趣向の違いに関係ない普遍性に満ちていた。
ゲイという大きなテーマを描いた本作は、LGBTという重い、アイデンティティの確立と尊厳に関わる問題を真摯に描けていると思う。
多勢の人の趣味趣向好き嫌いとは別に、守られるべき少数派の趣味趣向はまだまだ白眼視され軽視されるのが現状だ。
本作ではそこにさらに様々な社会的問題がのしかかる。
それらの誰しもが関わりうる現実の冷酷な一面が見る人自らの行いを振り返らせ、
数は少なくとも周りに現れる、苦悩に理解を示してくれる人々の優しさと愛は、自らもこうありたいと思わせるだろう。
大きなテーマは重くなりがちだが、叙情的で詩的な映像美や様々な映像の仕掛けが、全体に流れ・緩やかなリズムを生み出し、飽きずに疲れず見切ることが出来た。
ガスヴァンサントに例えてた人がいたけど、近いものがある。
ただやはり重く少数派のテーマな分、感情移入はしづらい。
考えさせられる部分、理解しきれなかった部分も多い。
この詩的な表現が受け入れられるか、どんな人でも関係のない苦悩そのものに感情移入できるかが評価の分かれ目かと。
初見は星4つで!
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