劇場公開日 2017年3月25日

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「突き放されたような、魅入られたような」未来よ こんにちは くーさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5突き放されたような、魅入られたような

2023年5月15日
iPhoneアプリから投稿

イザベルユペールの服装すべて、とても素敵だった。
家のインテリアも。

観る前、孤独な女性の話かと思っていたが、
夫に去られ、教え子と距離があいてもなお、
私には彼女が孤独とは思えなかった。

子や孫がいるから、ではなく、
彼女には確固たる自分と人生があり、
キャリアといえるworkがあり、それゆえに頼ってくれる人(生徒)もいる。

大切な人or情熱を持てる仕事or愛情を注げるもの

どれかを持っていれば孤独ではないように思える

私自身が孤独にさいなまれ、ときに独りで涙する人生を送っているので、
孤独ってこんなもんじゃない、といじわるな視点で観ていたかも。
突き放された、というのはこんなんで孤独いうな、と感じたから。

とはいえ、猫アレルギーなのにパスカルを胸に抱いて声をころして泣くところはこちらも胸が締め付けられた。

孤独かどうかは他人がどうこういうことではない。
主観の問題だ。

母を施設に入れた後の夫との会話
「いつもの演技では?」「分かってる だからって餓死させるの?」

主人公にとって大切な人を大切にしてくれない夫との心の距離を感じ、切なかった。

大切といっても、主人公自身、母親に辟易してるところもあり、強めの言葉や態度で接するところはあったものの、「好きな場所だけどここを訪れるのは最後」な夫の実家と周りの景色を振り切って母のもとに駆けつけるのは「餓死させられない」からではなく「餓死させたくない」からだったろう

教室で彼女が読み上げた一節が沁みた
原典が知りたい。

「人は欲望があれば幸福でなくとも期待で生きられます /幸福がこなければ希望は伸び 幻想の魅力が情熱のかぎり続くのです/かくてその状態で充足し不安感が一種の歓びとなり現実を補い 現実以上の価値となります/何も望まぬ人は不幸です/所有する一切を失うと同じ 幸福を手に入れる前こそが幸福なのです」

言語化するのが不得手なので、魅せられたのはユペールのファッションだけではないのだけど、どう良かったか説明はできないのだが、私にとっては良い映画だった。

くー